● レンズ設計タイプが大きく関係
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M9+スーパーアンギュロン21mmF4。
絞りF8・AE、ISOオート |
限られた試料だが、赤偏色は「スーパーアンギュロン21mmF4」、「ヘクトール28mmF6.3」、「スパーワイドヘリアー15mmF4.5」で発生した。当初は焦点距離によるものかと考えたが、そうではない。そして6bitコードとの関係でもない。では単純に構造的にお尻が出っ張っているからとも考えられるが、スーパーアンギュロン21mmF4のように出っ張っていて、撮像面からレンズ最後面がわずかな距離のレンズで発生するのは想像に難しくないが、ヘクトール28mmF6.3はマウント基準面というか、距離計のカムより内側に最後部のガラス面が位置するので、単に後ろに出っ張っているからということではかたづかない。むしろトリエルマー16-18-21mmF4やズミクロン28mmF2 ASPH.、ビオゴン21mmF2.8ZMのほうがヘクトール28mmF6.3より出っ張っている。
レンズ構成を見ると、赤偏色の発生するレンズは対称型レンズかそれに近似したタイプである。最近のレンジファインダーカメラの広角系レンズの構成は、一眼レフの交換レンズと同様にレトロフォーカスタイプになって久しく、周辺光量の低減を防ぐためといわれてきたが、バックフォーカスを稼げることからデジタルの時代になって光束が撮像素子に対して直進的に入るテレセントリック性の向上にも関係してきているようだ。
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お尻の出っ張り具合比較。左から、ヘクトール28mmF6.3、スーパーアンギュロン21mmF4、ズミクロン28mmF2 ASPH.(M型ライカのフランジバックは27.8mm。スーパーアンギュロン21mmF4のお尻の出っ張りはマウント基準面より20.5mm、ボディのマウント基準面よりシャッターのガード枠まで約23弌撮像板の前には、UV/IRカットフィルターとシャッター羽根が存在するが、計算上ではレンズ最後部から7.3mmぐらいの間隔で撮像板24×36mm全体に像を結ばなくてはならないことになる) |
●距離計連動デジタルライカはライカ判で始まる
結局、僕のお気に入り「スーパーアンギュロン21mmF4」の赤偏色は現状では避けがたいものとして存在することになる。ここはライカカメラ社のアナウンスを信じて、じっとがまんということだろうか。
ところが、仮に赤偏色がとれたとしても、実は大きな問題がもうひとつある。フィルム時代と違って、周辺光量の落ち込みがデジタルではかなり目立つのだ。冒頭に「周辺光量落ちの具合がなんともいえないのが魅力だ」と書いたが、落ち込みの具合が違うのでは、まったく別のレンズとなってしまう。このあたりは、絞り込むことによってある程度周辺光量の低下率を低減させることもできるが、さまざまな場面でもっと使い込んでみなくてはなんともいえない。
そして、極端に誇張された周辺光量が落ち込んだ写真は、写りすぎるデジタルの時代にあっては、逆に面白い画面作りができるかも知れない。もちろん最新の21mmレンズを使えばいいのだけど、“お気に入り”に対する思い入れとはそんな簡単なものではない。しばらくスーパーアンギュロン21mmF4はカラーフィルムで、そしてM9では色情報を抜いてモノクロ用として使ってみよう。これが最も簡単な対処法である。もともとライカにはモノクロがよく似合う。
フィルムカメラとデジタルカメラを同じ感覚で使うためにはフルサイズは重要。そもそもフルサイズはライカ判といわれてきた。24×36mm=ライカ判、この画面サイズに対する画角はカメラのスタンダードなのだ。ここに登場したヘクトール28mmF6.3の発売は1935年だから、すでに75年近く経っている。そんな昔のレンズが最新のM9で距離計連動、AEで使えるのだから素晴らしい。古くからのライカ純正、そしてライカでないメーカーのレンズを使い楽しめるのもライカならではのものだ。APS-HサイズのM8では、実焦点距離に対し1.33倍の画角変化係数をかけなくてはならなかったが、ライカ判のM9ではそのままの画角で使える。距離計連動ライカのデジタルはライカ判M9の登場でこれからが本番だと思う。