【写真4】α7R Mark IIにマウントアダプターを介してフォクトレンダースーパーワイドヘリアー15mmF4.5を装着。(画像をクリックすると大きくして見ることができます)
【作例7:フォクトレンダースーパーワイドヘリアー15mmF4.5】 絞り優先AE(F5.6・1/800秒)、ISO100、AWB、Jpeg.ExtraFine(5424×3616)、MF、三脚撮影。これはすごいです。α7Rで使用のときは、周辺光量の落ち込みが大きく、あずき色に画面周辺が色カブリしていましたが、α7R Mark IIまったくないのです。画素等倍に拡大すると、わずかに画面周辺の樹木で倍率の色収差らしきものが発生していますが、実用上は無視できる範囲です。(画像をクリックすると画素等倍で見ることができます)
■ライカもびっくりライカマウント広角レンズの適応性向上
実は、α7R Mark IIで最もビックリして評価できるのはこの部分です。ソニーα7の魅力のひとつにマウントアダプターを使えば、各社の交換レンズが使えることはおわかりだろう思うのですが、このなかでもフィルム時代のライカマウント広角レンズは、35mmより焦点距離が短いと、フルサイズで使うと周辺光量の極端な落ち込み、マゼンタ色のカブリなどがなどの現象が避けがたいものとして存在していましたが、少なくともソニーα7R、ライカMで発生していた上記問題点が、α7R Mark IIを使うと、一部レンズではまったくといってよいほどに発生しないのです。
たとえば、コシナのフォクトレンダースーパーワイドヘリアー15mmF4.5の旧タイプレンズ【写真4】はまさにその通りであって、コシナはそのために新型のフォクトレンダースーパーワイドヘリアー15mmF4.5 III(
第二十九回「フォクトレンダー・スーパーワイドへリアー15mmF4.5 III」)をだしたわけですが、新型α7R Mark IIの前にあっては新型レンズも解像力を除けば、従来品で十分となってしまうわけです【作例7】。これには、ライカマウントレンズユーザーだけでなくコシナもびっくりだろうと思うのです。でも本当にビックリしてほしいのは、ライカカメラ社の技術陣です。過去に、M8、M9、M(Typ240)と発売してきたわけですが、このレンズ以外の純正レンズでも上記のような問題があったのです。ところが、フルサイズのライカ判で高画素のα7R Mark IIが解決してしまったのですから、ここはぜひ見習って欲しいと考えるのは私だけでしょうか?
それにしても、これは大変なことです。もともとライカはC型以後の交換レンズがすべて使え、世界のライカマウントレンズも使えるところが最大の特徴だと僕は思っていたのですが、デジタルライカになって古い広角レンズに使用に制約がでてきたことは残念なことです。この件はライカカメラ社の技術陣にライカM(Typ240)がでてきたときに質問したら、新しいレンズを使ってくださいというのが答えでしたが、新しいカメラ技術がでてきたときにそれまでの技術的な常識がくつがえるというのもまさにデジタル時代であり、このような時代にあって“ライカはいつまでライカでいられるのか”と思うわけです。これってすっごく重要なことだと思うのです。
裏面照射タイプの開口が大きいのはわかりますが、同じα7シリーズでも画素数が1,200万画素と少ないα7Sも開口数が大きいので、ひょっとしたらと考え、改めて全ソニーα7シリーズに旧タイプのフォクトレンダー・スーパーワイドへリアー15mmF4.5はどのような描写をするのか、ソニーのショールームに行って確認しました。その結果わかったことは、すでにわかっていたα7R Mark IIに加え、α7Sも同じように画面周辺の色付き、周辺光量落ちはないのです。そして一番色付き、周辺光量落ちが大きいのはα7Rで、次いでα7Mark IIとなり、α7Sとα7R Mark IIはどちらも特に問題ないということになりました。
【図1】ソニーα7シリーズとライカMの関係。一般的にインクジェットプリンターでは、プリント解像度100ppiを切るとジャギーが目立つようになります。ただし、それぞれの出力解像度を見分けるのはかなり困難です。(画像をクリックすると大きくして見ることができます)
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【図1】には各機種の画素数と画素ピッチ、さらには家庭でプリントできる最大サイズであろうと考えられるA2判へプリントした時のプリント解像度(ppi)の関係などを示しました。一般的にインクジェットプリンターでは、プリント解像度が最低約100ppiあれば、かなりつながりのある写真画像となります。またプリント鑑賞距離にもよりますが、良好な視力をもった人はプリント解像度700ppiぐらいまでは判別が可能とされていますが、A2判の一般的な観察距離からはその判別はかなり難しい作業となります。これらによって、自分に向いたカメラはどれかなど考えてもらえれば幸いです。なお、A2判は420×594mmですので、実プリントは4辺に余白を10mmずつとった400×574mmとして算出しました。
■サイレントシャッター
α7R Mark IIのシャッターには、機械式先幕シャッター、電子式先幕シャッター、サイレントシャッターと3種類のモードがあります。これをどのように使い分けるかということになりますが、少なくとも表向きはシャッター音が選択の基準となるのでしょう。そこでα7R Mark IIになって新たに入った機能がサイレントシャッターなのです。このサイレントシャッターですが、すでにα7Sにも搭載されていました。まず基本的な機械式シャッターに比べていくつかの違いがあることです。まず、1)作動音が静か、2)機械式シャッターが動作しないのでバックフォーカスを長くとれる、3)動体を撮影すると歪みが発生することがある、などです。このうち、サイレントシャッターモードは演奏会や舞台撮影のような音の発生が嫌われる場面では重宝されます。また、バックフォーカスが長くとれることに関しては、一部いままで使えなかったレンズが使える可能性があるということ、さらに動体の撮影では逆に歪みを利用して、20世紀初頭のフランス人写真家アンリ・ラルティーグのような歪んだ走行する車の写真が撮れるのもおもしろいです。
【作例8:サイレントシャッターモードでの動体撮影】 プログラムAE(F14・1/2000秒)、ISO6400、AWB、Jpeg.ExtraFine(5424×3616)、AF、手持ち撮影、Vario-Tessar T*FE16-35mm F4:焦点距離19mm。何気なく見ると見過ごしてしまうほどの歪みです。被写体の走行速度、運動方向、撮影距離などによっても異なります。経験的には歪みは少ないほうだと思います。(画像をクリックすると画素等倍で見ることができます)
【作例9:5軸手ブレ補正の効果】 プログラムAE(F5.6・1/5秒)、ISO6400、AWB、Jpeg.ExtraFine(5424×3616)、手持ち撮影、Vario-Tessar T*FE16-35mm F4:焦点距離16mm。(画像をクリックすると画素等倍で見ることができます)
このうちバックフォーカスが長くとれることに関しては、僕の友人のHさんは、α7RのときにライカMマウントに改造した京セラ・コンタックスのGホロゴン16mmF8を取り付けて、撮像素子と機械式シャッターが干渉しないでいいやということで、シャッターを切ったとたんに見えていなかったシャッターが作動し、レンズ最後部とシャッター幕がぶつかり、シャッターが動作不良となり、修理にだして1.5万円超えの重修理となりました。このようなことはサイレントモードではなくなるはずですが、もちろんこの使用をお進めできるわけでなく、Hさんのように自己責任で行うということはいうまでもありません。そして、撮影画像の歪みはCMOSシャッターのローリングシャッター現象というわけですが、そのような現象の発生する場面を探すのは簡単なことです【作例8】。このような現象は、撮像素子にCMOSを採用したからですが、フィルムカメラ時代のフォーカルプレンシャッターの時にも似たような現象が発生していたわけでして、実際アンリ・ラルティーグのような写真家が存在したのです。
■5軸の手ブレ補正機構
α7R Mark IIでのもうひとつの新しい部分は、5軸の手ブレ補正機構が搭載されたことです。ただしこの5軸の手ブレ補正機構は、本機が最初ではなくすでに先行したα7IIに搭載されていました。この5軸手ブレ補正機構を使ってのスローシャッターで撮影した例として【作例9】を紹介します。レンズはVario-Tessar T*FE16-35mm F4の焦点距離16mmポジションであり、F5.6・1/5秒、ISO6400でした。最高4.5段分の補正効果を実現ということですが、この作例の場合はシャッター速度が1/5秒なので、少な目にみて4段分効果があったとすると、実用上はシャッター速度1/80秒で切ったのと同じ効果かとも考えたのですが、掲載にあたっては複数枚切った中で最も良いのを選びましたが、ノイズと一緒に見ることになり、ブレていないのか、それともブレているのか、そのあたりを判断するのは難しいのでした。ここでは作例写真には示しませんでしたが、複数回シャッター切った中に、画面の一部がある方向に流れたようなカットがいくつかあったのです。もちろん画面中の人物はブレている人もいますが、こちらはシャッター速度が遅いことによる被写体ブレなのです。
このほか、AF精度の高いコントラスト検出方式と、AF速度に優れた位相差検出方式のメリットを兼ね備えた「ファストハイブリッドAF」を搭載などの特徴がありますが、ここでは省略させていただきます。