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【写真3】Art85mmF1.4DGを装着したクワトロHとAPS-C用のArt18-35mmF1.8DC。どちらも存在感たっぷりの重量級です。

●シグマArt18〜35mmF1.8DC【写真3】
 このレンズをAPS-C判のsdクワトロ用に使用すると、27〜52mm相当画角となるズーム全域開放絞りF1.8のレンズです。このレンズをsdクワトロHで使用すると、自動的にクロップされ、APS-C判での撮影となるのです。つまりsdクワトロで撮影したのと同じになってしまうのです。それでも、sdクワトロHに標準レンズ相当の35mmF1.4だけをもっての撮影では不安でしたので、広さを表現したいときには画角27mm相当のレンズは役に立つだろうと持参したのです。
 広角のフルサイズ用交換レンズをあまり持たなかったのでAPS-C判でいいかなということですが、APS-H判のクワトロH6192×4128ピクセルの画像が、APS-C判だと5424×3616ピクセルの画像として撮影できるので。そこでsdクワトロのデータを200ppi(300ppi)でプリントすると長辺688mm(459mm)、sdクワトロHのデータを200ppi(300ppi)でプリントすると長辺方向で786mm(524mm)となります。これをプリントサイズに当てはめると、どちらもA3ノビは十分にカバーし、見方にもよりますがA2、A1判までカバーする画素数だということになるのです。ただこれは、数値的な解像度の問題だけであって、実際の解像感はフォビオンセンサーならではのものがあり、少なくとも一般センサーの2倍近い解像感ある画像が得られることになりますが、このあたりは言葉で言っても難しいので、実データにあたってください。
 

【作例14・A】茨木県・袋田の滝 <レンズ>シグマDC18〜35mmF1.8Art(焦点距離18mmで撮影、画角:35mm判27mm相当)<撮影データ>プログラムAE_F4・1/125秒、ISO100、AWB、手持ち撮影

〇茨木県・袋田の滝【作例14・A】
 滝の流れを止めようとか、白く糸の流れるようにとスローシャッターで切るなどのテクニックを用いなく、プログラムでそのままシャッターを押しました。決して高速ではありませんが、水しぶきもきれいに止まっていて、十分に大伸ばしに耐えられる画像です。
 <レンズ>シグマDC18〜35mmF1.8Art(焦点距離18mmで撮影、画角:35mm判27mm相当)<撮影データ>プログラムAE_F4・1/125秒、ISO100、AWB、手持ち撮影(撮影:2017/03/06)(画像は作例14・A、14・Bともクリックすれば画素等倍まで拡大できます)
 

【作例14・B】長野県・千曲市ふる里漫画館 <レンズ>シグマDC18〜35mmF1.8Art(焦点距離35mmで撮影、画角:35mm判27mm相当)<撮影データ>プログラムAE_F6.3・1/630秒、−0.3EV露出補正、ISO100、AWB、手持ち撮影

〇長野県・千曲市ふる里漫画館【作例14・B】
 白い壁と黒い屋根のコントさストが、青空の中に生えています。特にご覧いただきたいのが、建物の前に植わった松の葉です。一般的には松葉のように線の細いものはなかなか解像しませんが、ここでは1本1本がきれいに解像しています。カメラもレンズも解像度が高いわけで、屋根瓦の質感もいい感じです。
 <レンズ>シグマDC18〜35mmF1.8Art(焦点距離35mmで撮影、画角:35mm判27mm相当)<撮影データ>プログラムAE_F6.3・1/630秒、−0.3EV露出補正、ISO100、AWB、手持ち撮影(撮影:2017/03/30)
 ところでArt18〜35mmF1.8DCを使っていて面白いことに気づきました。sdクワトロHには、クロップモードというのがあり、APS-HとAPS-Cを切り替えることができるのです。デフォルトは、レンズがDCかDGを検出して自動に切り替えるオート設定なのですが、これをOFF・ONにする手動設定があるのです。そこでOFFモードにすると、18〜35mmが、23.4〜45.5mm相当画角の得られるレンズとして使用できるのです。これを調べてみるとフォビオンセンサーのイメージエリアがsdクワトロH(sdクワトロ)は26.7×17.9(23.4×15.5)mmなのです。その差は、長辺方向で3.3mm、短辺方向で2.4mmなのです。これを、光軸から測ると、長辺方向に1.65mm、短辺方向に1.2mmずつ広がったことになるのです。この寸法差が大きいか小さいかは、使ってみればわかることで、撮影場面によっては大変有効だと思うのです。
 もちろんこのような使い方はシグマが推奨していないわけですから、何か画質的に問題はあると思うのですが、ざっと見た感じではワイド側の周辺に色収差が残っているような感じはありますが、最終画像の拡大率、モノクロで使用する、レタッチソフトで処理するなど、ユーザーの判断によってはかなり有効な画角です。逆に、フルサイズのDGレンズをマニュアルでAPS-Cモードに切り替えれば、35mmが45.5mmレンズ相当画角になるのです。このような使い方は、原理を理解すれば簡単なわけで、高画素・高画質センサーとレンズならではの使い方になるのです。

 

【写真4】M42レンズ(カールツァイス・プラナー50mmF1.4ZS)と「M42→シグマSA」マウントアダプター。

【写真5】左から、カールツァイス・プラナー50mmF1.4ZS、スーパータクマー55mmF1.8、タムロン200mmF5.9を装着したsdクワトロH

■指定外のレンズを使ってみたら
 指定外のレンズとは?となりますが、ここでは2種類用意しました。1つは、前記のシグマSAマウントですがAPS-C判のレンズを、もう1つはマウントアダプターを使って他社のレンズを使おうということです。
 まずシグマSA用には44mmというフランジバックの関係からマウントアダプターはM42用があります。かつてはシグマのSAマウントには、外爪と内爪式の2種があり、ニコンFマウント用アダプターがサードパーティーから発売されていたこともありましたが、現在では内爪式だけに統一されています。この「M42→シグマSA」マウントは加工が楽なせいか、中国製だと1,000円前後で購入できるのです。今回は、少し奮発して上位の1,800円(送料込み)というのを購入しました【写真4】。M42レンズは、手元にあるのを調べてみましたら、Granada35mmF2.8、SunTelePhotoZOOM180〜410mmF5.6、Revunon24mmF4、Tamron200mmF5.9、SuperTakumar55mmF1.8、CarlZeiss Jena DDR MC Tessar50mmF2.8、CarlZeiss Planar50mmF1.4ZSなどなど、Tマウント普通絞り、プリセット絞り、完全自動絞りとさまざまあり、手元にあるレンズで高画質を手軽に楽しむという意味ではM42マウントレンズならではの歴史とバリエーションが魅力です。このうち3本を選んでみました【写真5】。


【作例15】タムロン200mmF5.9・ミズバショウ <レンズ>タムロン200mmF5.9(焦点距離35mmで撮影、画角:35mm判260mm相当)<撮影データ>絞り優先AE_F8・1/125秒、ISO100、AWB、三脚使用

●タムロン200mmF5.9・ミズバショウ【作例15】
 僕が、高校生時代の1965年に、35mm一眼レフの交換レンズとして初めて求めた最初の望遠レンズです。マウントはTマウントという独自交換マウント式で、現在でも各社交換マウントとして発売されているので、このように50年以上前のレンズでも条件さえ合えば使うことができるのです。
 <レンズ>タムロン200mmF5.9(画角:35mm判で260mm相当)<撮影データ>絞り優先AE_F8・1/125秒、ISO100、AWB、三脚使用(撮影:2017/04/04、武蔵村山市・野山北公園)
 このレンズは、古いレンズでも楽しく遊べるということで、ここ数年の間にニコンD3やキヤノンEOS1Ds MarkIIなどで問題なく撮影できた実績があるものです。かつて高校生の時代に趣味のサボテンをクローズアップして楽しんでいたのを思い出し、近所の公園でミズバショウの花をアップで撮影してみました。結果はご覧の通り、開放絞りからわずかに1段絞り込んだF8での撮影ですが、ミズバショウの雌しべを画素等倍まで拡大して見ると、十分解像していることがわかります。これは貼合わせの色消しレンズ1枚とUVフィルターを組み合わせた2群3枚構成という大変シンプルな光学系であることから、解像力、色のヌケとも現代に通用したものだと思うのです。また焦点距離が200mmと長いことから、フォビオンクワトロセンサー受光面に対して光束が鉛直に入ってきているようなことが、良い結果をもたらしているだろうと考えます。(画像をクリックすると画素等倍まで拡大できます)


【作例16】カールツァイス・プラナー50mmF1.4ZS・カタクリ <レンズ>カールツァイス50mmF1.4ZS(画角:35mm判65mm相当)<撮影データ>絞り優先AE_F2・1/2000秒、ISO100、AWB、三脚使用

●カールツァイス・プラナー50mmF1.4ZS・カタクリ【作例16】
 先ほどのタムロン200mmが古典派だとすると、こちらはさらにもっと新しいセミクラシック派となります。なぜタムロンとカールツァイスかということになりますが、このプラナーはコシナが製造したのです。現在世界を代表するレンズメーカーの交換レンズを、シグマの最新ミラーレス一眼に装着して撮影してみたいという遊び心の以外の何ものでもないのです。
 <レンズ>カールツァイス50mmF1.4ZS(画角:35mm判65mm相当)<撮影データ>絞り優先AE_F2・1/2000秒、ISO100、AWB、三脚使用(撮影:2017/04/04、武蔵村山市・野山北公園)
 ミズバショウの花と同じ公園内にカタクリの花が咲いているのです。プラナーのほうは50mmという焦点距離とF1.4という大口径を活かして、カタクリの群生へボケ具合を考慮してねらってみました。手前の花1輪にピントを合わせて、F2でシャッターを切ってみましたが、ピントを合わせた花びらはプラナーらしく柔らかな描写で、背景はうまい具合にボケ、玉状のボケが描出されました。プラナーという特性から、もっと絞り込むとよりシャープになるだろうと考えられます。(画像をクリックすると画素等倍まで拡大できます)


【写真6】GRANADA35mmF2.8を装着してsdクワトロHでの撮影風景

【作例17・A】GRANADA35mmF2.8・北山公園のサクラ <レンズ>GRANADA35mmF2.8(画角:35mm判45mm相当)<撮影データ>絞り優先AE_F5.6・1/640秒、ISO100、AWB、三脚使用(画像をクリックすると画素等倍まで拡大できます)

【作例17・B】Art35mmF1.4DG・北山公園のサクラ <レンズ>Art35mmF1.4DG(画角:35mm判45mm相当)<撮影データ>絞り優先AE_F5.6・1/640秒、ISO100、AWB、三脚使用(画像をクリックすると画素等倍まで拡大できます)

●GRANADA35mmF2.8【写真6】
 1960年代に製造されたと考えられる輸出用M42の普通絞りレンズです。1970年代の初頭に日本橋室町のカメラ屋さんの店頭に1個500円で山積みになっていたのを購入したものです。特に使うあてもなく長年のわたり持っていましたが、2010年に発売されたSD10にマウントアダプターを使ったときには、まったく問題なく使えたのです。そこでsdクワトロHではどうだろうかと、屋外での撮影に使ってみました。
【作例17・A】 <レンズ>GRANADA35mmF2.8(画角:35mm判45mm相当)<撮影データ>絞り優先AE_F5.6・1/640秒、ISO100、AWB、三脚使用(撮影:2017/04/16)
【作例17・B】 <レンズ>Art35mmF1.4DG(画角:35mm判45mm相当)<撮影データ>絞り優先AE_F5.6・1/640秒、ISO100、AWB、三脚使用
 当初は、GRANADAレンズ単独でレポートしようと思いましたが、画面左下の色かぶりなどにびっくりして、純正のシグマArt35mmF1.4DGと比較することにしました。2010年にSD10で使った時には違和感なく使えましたが、焦点距離は同じでも、レンズタイプ、コーティングなども当然違うのですが、たぶんイメージサイズがSD10(APS-C、×1.6)とsdクワトロH(APS-H、×1.3)では大きく違うこと、フォビオンクワトロセンサーが従来のフォビオンセンサーより高画素でシビアになったことなどが考えられます。撮影結果を見るとわかることですが、同じ焦点距離表示でも画角が違うことなどは無視し、さらに発色、周辺での色付きなどなどを除外しても、画面内の掲示板の文字、芽を吹いたばかりの木々の先を見ると、明らかにシグマArt35mmF1.4DGの方が高解像力であることがよくわかります。
 結局、このように周辺にダメージのあるレンズでは、モノクロで使用したり、クロップモードでAPS-Cにして使うのも実用的には有効な方法です。そこでAPS-C 判のsdクワトロでは、ボディだけですと現在実勢価格8万円以下で求められるので、マウントアダプターとM42レンズを組み合わせれば、安価で高画質な画像が手軽に得られるカメラシステムなのです。

■終わりに
 sdクワトロHのレポートは、その使用は過去に例がないほどの長期にわたりました。交換レンズも、やはり過去に例がないほどシグマ製で4本も使いました。そして今回はミラーレス機だからということで「M42→シグマSAマウントのアダプター」を使い、他社レンズでの撮影も試みましたが、難ありだったのはGRANADA35mmF2.8だけでしたが、このほかの他社レンズはほとんど問題なく使えたのです。結局、最新のフォビオンセンサーを使うカメラは、高画質と引き換えにかなりシビアなレンズ性能が要求されるのです。
 最近シグマのArtラインなど交換レンズが高い評価がなされていますが、少なくともsdクワトロ、sdクワトロHカメラを満足させるためには、それなりの高い画質をもった交換レンズが必要とされるわけで、このフォビオンクワトロセンサーを満足させる交換レンズ作りが、結果として高画質を生み出すのではないだろうかと考えました。
 そしてさらにいうならば、フォビオンクワトロセンサーのフルサイズ判を待つユーザーも一部に多いようですが、この先APS-Hからフルサイズへのステップアップは、フォビオンセンサーを満足させるフルサイズの交換レンズも同時に必要なわけで、この部分をクリアーできるレンズの登場が待たれるわけです。しかし、デジタルとフォビオンセンサーという特性を生かすと、現状でも必要十分に高画質なのです。
(2017/06/30)


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