【図1】 リコーGXR+A12Mount。画像をクリックすると拡大して見られます
【図2】 ソニーNEX-5。画像をクリックすると拡大して見られます
【図3】 フジフイルムX-Pro1。画像をクリックすると拡大して見られます
■3機種のダイナミックレンジを見てみる
というわけで、同じズミクロン35mmF2を使った限りでは、リコーGXR+A12Mount、ソニーNEX-7、フジフイルムX-Pro1は、微妙な発色傾向の違いを別にすればA3ノビに拡大プリントしてもその差はほとんどわからないほどであった。事実、3機種のA4プリント、A3ノビプリントを各方面の人に見てもらったが、どれがどれだかわからないといった人がほとんどだった。
こうなると何か違いを見つけださなくてはいけないというので、行ったのが「ダイナミックレンジがわかる撮影」である。これはたまたま手元にあった透過型のステップウエッジ(光楔)を、蛍光灯型のスライドビューアーの上に載せて、ギリギリ近づけるようにライカスクリューマウントの50mmF2.8の引伸ばし用レンズを取り付け、ヘリコイド中間リングでピント合わせを行い、絞りF5.6に設定し撮影を行った。
このステップウエッジは、本来は感光計(センシトメーター)の中にセットしてフィルムの感度と特性を読みとるためのものだが、フィルム時代を終えたいま改めて引っ張り出して活用してみた。当初は、撮影結果をモニター上で拡大して視覚的に何段読めるか確認し、さらに同じデータとして1枚のデータにして組合せた後にプリントして、やはり視覚で何段確認できるかを行って3機種のある程度の傾向を読みとることはできたが、より具体的にビジュアル化できないかと考えて、図表化してみた【図1〜3】。
まず、ステップウエッジは25段あり、それぞれは5mm間隔で、1段が濃度で0.15Dずつ変化している。つまり0.15D×25=3.75Dの濃度幅(階調幅)を持つわけだ。一般的にフィルムも印画紙も、濃度幅3.0Dを超えるものはない。そして、このステップウエッジの撮影結果(濃度)を読みとるのには、Photoshopのヒストグラム情報からRGBを読みとることにした。マウスで撮影されたステップウエッジ部分にポインターを置くと、簡単にRGBのヒストグラム数値を読みとることができる。ステップウエッジには5段ずつに切り込みがあって、ポジションも簡単に特定できる。また、黒く境界が判別の付かないところ、白く判別の付かないところは、ポインターを順次走査していくと、大幅に数値が変化するゾーンでてくるのでわかる。さらにそのときのポインターの位置はXY座標で示されるので、座標数値からも場所を特定することができる。
このヒストグラムの各RGB数値を読み取り、エクセルに入れ込み、折れ線グラフ化してみた。結果として、みごと感光材料の特性曲線のようなグラフを描くことができたが、似て非なるものであって、これは撮像素子の特性曲線と呼べるかはわからない。ただしこれによってそれぞれカメラのダイナミックレンジを読みとることができると考える。この結果からは、リコー>ソニー>フジの順にダイナミックレンジが広いことがわかる。一般的に画素ピッチが大きいほどダイナミックレンジに有利だともいわれているが、画素ピッチは、リコー>フジ>ソニーの順に大きいわけで、画素数にズバリ比例するが、ダイナミックレンジと画素ピッチはこのグラフで見る限りは比例しないことになる。とはいっても、実写結果ではこの違いがどのように効いて来るかは微妙で、少なくとも今回の比較撮影結果からはわからない。
●リコー・ソニー・フジどれを選ぶか
今回の比較からわかったことは、限定された条件の中のことではあるが、少なくとも光学ローパスフィルターのあるなしは撮影後の画像からは比較判別できなかったこと、同様にベイヤーフィルター配列とX-トランスフィルター配列もその差異は認められなかった。これは僕自身の比較方式の甘さかも知れないが、一般的に撮影して大きくプリントするという実写撮影方式であるのでこれに勝るものはないと考えている。ただし、その結果がどれだけカメラの差異を引き出せたかというと疑問だ。
一例として、今回はテストレンズをズミクロン35mmF2としたが、これらのカメラでさまざまなレンズをつけて撮影していたら、NEX-7では35mmより短い焦点距離のライカ用レンズを装着すると画面左右にマゼンタ色の偏色が認められた。このようなことは、ライカM8、M9にても認められていた現象だが、実際は35mmより長焦点距離を使うことが多いようなので、あまり気にしない人が多いようだ。もちろんE18-55mm F3.5-5.6 OSSなどの純正交換レンズを装着した時には焦点距離35mmより短くても、そのような偏色は発生しない。いずれにしてもソニーの技術力をすればやがてはファームウエアアップで解決するのではないかと思うし、ぜひそうして欲しいものだ。また、今回はあまり話題にしなかったが、ライカのレンズという意味では対称光学系のスーパーアンギュロン21mmF4を取り付けることができるのはリコーGXR+A12Mountだけであるとかさまざまだ。
このほか、各システムともさまざまな交換レンズやシステムをもつわけだが、その本来の純正レンズをつけたときの性能、たとえば歪曲や各種収差の発生除去、高感度時のノイズ発生の具合(高感度ではいくつまで実用できるか)、レリーズタイムラグ、オートホワイトバランスの確度などの性能面に加え、大きくはカメラデザインであったり、各メーカーに対するユーザーの自身の好感度や価格なども関係するわけで、一概にどれがいよいとかはいえないのが現実だ。(●^o^●)