■ニコンD800E+AF-Sニッコール24〜70mmF2.8G ED
D800と同じ3630万画素と高画素撮像素子の一眼レフカメラです。D800が光学ローパスフィルターを組み込んでいるのに対し、D800E【写真9】では光学ローパスフィルター効果を打ち消すように、物理的に同等な光学フィルターを組み込んで、光学ローパスレス効果を作り出しています。なぜ、単純に光学ローパスフィルターを外さないかということですが、同じ撮影レンズ、同じ撮像素子を使っていても、光学ローパスフィルターが物理的にないと、D800と光学長的に同等とならないので、このような方式をとったとされています。
これはニコンだけがそうだというわけではなく、やはり光学ローパスフィルターありのリコーのペンタックスK-5に対し、なしのK-5IIでは、光学ローパスフィルターと同じ厚さの光学ガラスを入れているのです。もちろんそのフィルターも単なる素通しの光学ガラスではなく、UV/IRカットフィルターの効果を持たせた光学フィルターだというのです。
それでは、【作例6】を見てみましょう。地蔵堂の屋根を見てみますと、D800とモアレの発生は大きな違いは確認できません。むしろ気になるのは、画素等倍で見るとD800のほうがシャープな感じがして、D800Eのほうが何となく画面全体の描写が甘く感じるのです。同じ日に、同じレンズを使い、同じ絞り値で、同じ三脚で、同じポイントにピントを合わせた結果なのです。これに関しては、後日わかったことですが、このカメラは出荷時の初期設定でノイズキャンセルがONになっているそうで、シャープな画像を得ようとするときにはノイズキャンセルモードをOFFにしなくてはならないとのことでした。
写真9 ニコンD800E+AF-Sニッコール24〜70mmF2.8G ED(画像をクリックすると大きく見られます)
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作例6 ニコンD800E+AF-Sニッコール24〜70mmF2.8G ED。焦点距離:35mm、F5.6・1/500秒、ISO200、AWB(画像をクリックすると画素等倍まで大きく見られます)
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■ニコンD800E+AiAFニッコール35mmF2D
最初はD800Eとの組み合わせレンズは、単焦点で小型のAiAFニッコール35mmF2D【写真10】で使おうと考えテスト撮影を開始したのですが、どうも相性が良くないようでAF-S Gタイプレンズの使用を勧められました。その原因は、カプラー方式のAFにあるというのです。そこで、引張りだしたのがナノクリスタルコーティングで、レンズ内超音波モーターのSWM式のAF-Sニッコール24〜70mmF2.8G EDだったのです。以後、D800にはこのレンズを基準とし、今回のモアレチェックには、D70、D700、D800、Dfとすべてニコンボディをこのレンズで通してみました。そしてD800とD800Eに共通したことですが、高画素であるために、その特性を生かすためには、撮影時にシビアな制約がでてきます、まずレンズはAFの精度をだすために前述のようにAF-S Gタイプを使用する、高画質な画像を得るときには、三脚を使用、ミラーアップして、ライブビューでピント合わせる、ノイズキャンセルをOFFにする等などですが、詳しくは、ニコンホームページの「D800/D800Eテクニカルガイド」をご覧ください。さて、【作例7】で撮影結果を見てみましょう。ここではAiAFニッコール35mmF2Dの特性を汲んでマニュアルフォーカスで行いました。フォーカスポイントは、屋根の下部のあたりですが、モアレの発生具合からすると解像度は高いようです。ただし、他の撮影も絞りF5.6とすべて同じなのですが、屋根の上の避雷針近辺のボケ具合は、他のレンズに比べるとかなり大きいのです。これはレンズタイプか像面に依存するのかもしれませんが、その理由は僕には不明です。
写真10 ニコンD800E+AiAFニッコール35mmF2D(画像をクリックすると大きく見られます)
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作例7 ニコンD800E+AiAFニッコール35mmF2D。35mm、F5.6・1/800秒、ISO200、AWB(画像をクリックすると画素等倍まで大きく見られます)
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■シグマDP2メリル
シグマDP2メリルのフォビオンセンサーはAPS-Cで、従来は1.7倍でしたが、メリル仕様からは1.5倍換算となりました。そこでDP2メリルは30mm F2.8レンズを搭載していますが、35mm判換算45mm相当の画角となります。このほかに、35mm判換算焦点距離28mm相当の画角となるDP2メリルは19mm F2.8を搭載、35mm判換算焦点距離75mm相当の画角となるDP3メリルは50mm F2.8レンズを搭載というわけです。僕的には、35mm判換算35mm相当画角になるのがいいのですが、ここでは最もスタンダードな画角のDP2メリル【写真11】、つまり焦点距離45mm相当を使ってみました。DP2メリルの撮像素子はAPS-Cで、4800×3200ピクセルです。この1画素からR.G.B.3色の信号を色フィルターがなくても取り出せるのがフォビオンの特徴で、実用上は×3の4600万ピクセル相当の高画素センサーとなります。
そこで実写結果【作例8】を見てみましょう。かなり高解像でモアレの発生は感じさせません。そもそも、オンチップのカラーフィルターを搭載していないため光学ローパスフィルターを不要とするので、シャープな画像を取り出せるといいだしたのは、このフォビオンセンサーあたりからだと記憶していますが、その通りの結果が出たわけです。このような画像が撮影できるのは、さまざまな要因があるようで、フォビオンセンサーだから、高解像な撮影レンズだから、レンズシャッター機であるからなどが、考えられていますが、これ以上に詳しいことを知りたい方は、僕の関連ブログのこちら(
http://d.hatena.ne.jp/ilovephoto/20121210/1355147552)をご覧ください。
写真11 シグマDP2メリル(画像をクリックすると大きく見られます)
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作例8 シグマDP2メリル。30mm(35mm判45mm相当)、F5.6・1/400秒、ISO200、AWB(画像をクリックすると画素等倍まで大きく見られます)
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■ソニーサイバーショットRX1
サイバーショットRX1【写真12】の発売は2012年11月で、35mm判フルサイズでレンズ固着の高級コンパクトカメラであり、約25万円近いという価格設定を含めて話題を呼びました。基本性能としては、約2430万画素のフルサイズ撮像素子に、カール・ツァイス ゾナーT*35mmF2レンズを非交換式で装着しているのが最大の特徴です。ソニーによると、レンズとイメージセンサーを1対1で厳密に1台ずつ位置・角度を調整する一体型だからこそ、その利点を生かし最高画質を実現したというのです。実際、使ってみると画面隅まで大変シャープに結像するので、その感触は十分に実感できます。発売のタイミングからすると、RX1がレンズ交換式だったら買うのにというような声を一部に聞きましたが、それではそもそもサイバーショットRX1でなくなってしまうわけで、ソニーのレンズ交換式のフルサイズ機はα7/α7Rの発売を待たねばならなかったわけです。
サイバーショットRX1の特徴を読んでみると、『放送用ハイエンド業務用カメラなどにも搭載されている、多点分離技術を応用した光学ローパスフィルターを採用。高い解像感を保ちながら、モアレや偽色を低減します。』と書かれています。その効果のほどはどんなものでしょうか、実写の【作例9】を見ると、他機種に比べると、意外とモアレの発生量が多いのです。不思議な現象です。
その後ソニーは2013年7月に、光学ローパスフィルターレスのサイバーショットRX1Rを発売しました。その広告によると「レンズ一体型ならではの解像感に加え、多点分離光学ローパスフィルターを取り除くことにより、圧倒的な解像感を実現します。」と書かれていますが、どのような描写を示すのか、興味はすごくありますが、未だ試してはいません。ただ一度、ソニーの技術の責任者の方とお話する機会があったので、『RX1は僕の印象では、他機種に比べるとモアレ発生の頻度が高いのですが、それだけ撮影レンズが高解像力だということなのでしょうか?』と聞きましたら、一瞬間をおいて“そういうことですね”と答えていただきました。現状の技術では、高解像レンズの搭載とモアレ発生の防止は、両立しないものかも知れません。いずれにしても、フルサイズ2430万画素、画素ピッチ5.96μmという関係においての話であり、高画素3640万相当になると、また話は変わってくると思うのです。
写真12 ソニーサイバーショットRX1(画像をクリックすると大きく見られます)
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作例9 ソニーサイバーショットRX1。35mm、F5.6・1/500秒、ISO100、AWB(画像をクリックすると画素等倍まで大きく見られます)
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■ライカM(Typ240)
ライカMは、ライカカメラとしてはデジタルで2機種目のフルサイズレンジファインダー機です。最初のフルサイズモデルであるライカM9は2009年の発売で1800万画素のCCDでしたが、ライカMでは2400万画素のCMOSになったことが大きな変更点です。これは、単に1800万から2400万画素に画素が増加したということだけではなく、CCDからCMOSになったことにより、ライブビュー撮影が可能になったこと、動画撮影が可能になったことなどが大きな違いです。特に、ライブビュー撮影が可能になったことにより、ボディのフランジバックが短いという特徴を生かして、マウントアダプターを介して一眼レフの交換レンズを含めた過去・現在のさまざまなレンズを取り付けて、距離計を介さなくてもピント合わせができることになりました。これにより、レンジファインダーライカでは不可能であった、マクロレンズや距離計の連動範囲を超える焦点距離135mm以上の望遠レンズも使用可能となったわけです。換言すると、ライカ初のミラーレス機の登場で、業界初のフルサイズミラーレス機の登場であったわけです。他社のフルサイズミラーレス機の登場は、2013年11月のソニーα7/α7Rの発売を待たなければならなかったわけです。そこで、ここでは純正のズマリットM35mmF2.5と距離計非連動のドイツ・シュタインハイル社のカサリット45mmF2.8を使ってみることにしました。
◎ライカM+ズマリットM35mmF2.5【写真13】
ズマリットM35mmF2.5に関しては、ライカM9の項に詳しく述べていますので、そちらのほうを参照してください。実はライカマウントの35mmレンズとしては、他にズミクロン35mmF2とフォクトレンダー・ウルトロン35mmF1.7の2本もありますが、ここでは純正で新しいほうがいいだろうということで、ズマリットM35mmF2.5を使いました。撮影結果を【作例10】に示しましたが、モアレの発生具合は、同じフルサイズで2400万画素のソニーサイバーショットRX1は光学ローパスフィルターを内蔵していますが、ライカMには光学ローパスフィルターは内蔵されてなく、これと比較するとわずかに多いようには感じますが、大きくは変わらない感じです。
写真13 ライカM+ズマリットM35mmF2.5(画像をクリックすると大きく見られます)
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作例10 ライカM+ズマリットM35mmF2.5。焦点距離:35mm、F5.6・1/250秒、ISO200、AWB(画像をクリックすると画素等倍まで大きく見られます)
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◎ライカM+シュタインハイル・カサリット40mmF2.8【写真14】
シュタインハイル・カサリットは、ライカスクリューマウントと同じM39のネジ規格をもつドイツ・ブラウン社の『パクセッテ II M』カメラ(1950年代)用の交換レンズですが、元のパクセッテカメラのデザイン、シュタインハイルという響きがいいために、以前から何とかして使いたいと思っていたのです。ところが、このレンズのマウントネジ径はライカスクリューと同じであっても、フランジバックが異なるためライカには下駄(マウントアダプター)をはかせなくては使えないのです。そこで、厚み15.5mmの専用のマウントアダプターを製作してやっと使えたというわけです。もっともこのレンズ、名称の響きのよさを別にすると、最前部の玉が妙に丸く出っ張っているのです。トリプレットかテッサータイプかとも思うのですが、文献をあさってレンズ構成調べるより、現物で実写したほうが楽しいのです。ただこのシュタインハイルレンズ、以前ノンライツRF友の会の大澤弘代表に響きがいいから好きだと伝えたら、写りは普通で面白くないですよと言われました。そこでそのカサリット45mmF2.8をライカMにつけてみたらどうなのだろうということになりました。実際さまざまな撮影してみると、メリハリに乏しくいまひとつパットしない。つまり解像力が低いのです。そのカサリットでモアレチャートを撮影した結果が【作例11】です。これを見ると、明かにモアレの発生が少ないのです。つまり、カメラの解像度の方が勝っているようです。これは、ニコンD800とD800Eが解像度的に勝っているために、AF-Sニッコール24〜70mmF2.8G EDがどちらのボディでも似たような結果になったのと同じような現象だと思うわけです。
写真14 ライカM+シュタインハイル・カサリット40mmF2.8(画像をクリックすると大きく見られます)
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作例11 ライカM+シュタインハイル・カサリット40mmF2.8。焦点距離:45mm、F5.6・1/360秒、ISO200、AWB(画像をクリックすると画素等倍まで大きく見られます)
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