●距離計連動のライカとミラーレス機の違い
フォクトレンダー・スーパーワイドへリアー15mmF4.5 Aspherical IIIは距離計連動のレンズなのです。ライカMの場合には内蔵のこの光学式距離計でピントを合わせることに加え、ライブビューでピント合わせすることができます。一方、ソニーα7Rでのピント合わせはライブビューだけとなります。ライカの連動距離計でのピント合わせはかなり軽快に素早く行える特徴がありますが、内蔵光学ファインダーで対応するファインダー視野は焦点距離28mm〜135mmの範囲なので、フレーミングは背面液晶ディスプレーか外付けのEVFによって行います。ライブビューでの撮影は、写りこむ画像そのものを見て、しかも10倍とか15倍に拡大して実絞りでピント合わせするので、かなり正確なフレーミングとピント合わせが行えます。
【写真5】ソニーα7シリーズの場合には、EVFが内蔵でアクセサリーシューが別にあるので、外付けの光学ファインダーも取り付けることができます。(画像をクリックすると大きくして見られます)
【写真6】フォクトレンダーVM-Eクローズ・フォーカス・アダプターのヘリコイドを4mm延伸した状態(矢印の部分が4mm延伸)。右の赤いつまみは不用意に延伸しないためのロック。(画像をクリックすると大きくして見られます)
ライカMもソニーα7も、正確なピント合わせということでは、ライブビューでのピント合わせが良いのです。一部、年配のライカ使いの方は、レンズの距離目盛りと被写界深度を利用して目測でピント合わせをする人もいますが、ライカ以外のミラーレス機では機構上のことから十分なピント合わせが行えません。たとえば、目測でピント合わせして撮影した場合と、ライブビューで拡大して合わせて撮影した場合では、撮影後の画像データをモニター上で拡大比較してみると、その違いはおわかりいただけるでしょう。もっとも15mmという焦点距離の深度はかなり広い範囲をカバーするので、目測でもよいかとも思うのですが、デジタルでは必要以上に大きく伸ばすチャンスも多いので、スナップのような撮影を別にすればライブビューでしっかりとピントを合わせたいものです。
それでも、もう少し気楽に撮影できないかとお考えの方は、外付け光学ファインダーの活用もお勧めです。ライカMの場合には、EVFのアクセサリーシューとダブリますので積極的にはお勧めできませんが、ソニーα7シリーズの場合には、EVFが内蔵でアクセサリーシューが別にありますので、【写真5】に示すように、背面液晶・EVF・光学ファインダーと3ウエイのファインダー方式を駆使できます。特に光学ファインダーで覗いたときの視野の明るさは格別です。
もうひとつ、今回ソニーα7Rのマウントアダプターには「フォクトレンダーVM-Eクローズ・フォーカス・アダプター」を使いました。これはスーパーワイドヘリアーレンズの純正だからということだけではなく、このVM-Eクローズ・フォーカス・アダプターにはヘリコイドが組み込まれていて、4mm延伸できるのです【写真6】。この結果、ライカレンズでの接写が可能となるのですが、スーパーワイドヘリアー15mmでは50cmの最短撮影距離が約10cmになるというのです。こう書くと、もっと近づけたらなどと思うかもしれませんが、実際はレンズ最先端より約5cmまでの接写が可能になるので、必要十分なクローズアップ機能です。【作例14】にはVM-Eクローズ・フォーカス・アダプターの延伸0のときと、【作例15】には延伸4mmの場合の写真を示しました。ヘリコイドを4mm伸ばしただけでかなり近づいた撮影ができることをご理解いただけると思います。ライカレンズにマウントアダプターを介して使うミラーレス機ならではの使い方です。
【作例14:最短撮影距離50cmの描写(VM-Eクローズ・フォーカス・アダプターの延伸0)。スーパーワイドへリアー15mmF4.5 Aspherical III+ソニーα7R】 絞り優先AE(F8・1/60秒)、ISO320、AWB。レンズの基本性能が持つ50cmの近接の描写特性を見るのに、背景が幅広く奥まである場所を探すのに苦労しました。画面中心部のハナダイコンの花の繊毛、葉の感じ、葉脈の描写は素晴らしくシャープです。背景アウトフォーカス部のボケ具合もさすが15mm・F8でも背景はしっかりとボケてます。そのぼけボケ具合はクセがなくムラない柔らかさを感じます。三脚使用。(画像をクリックすると画素等倍で見られます)
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【作例15: VM-Eクローズ・フォーカス・アダプターを4mm延伸したときの最短撮影距離50cmの描写。スーパーワイドへリアー15mmF4.5 Aspherical III+ソニーα7R】 絞り優先AE(F8・1/60秒)、ISO800、AWB。これが焦点距離15mm、それも距離計連動ライカ用レンズかと疑うほどアップで撮れています。夕やみ迫るころに撮影したので、少し怪しげな雰囲気が漂っていますが、メシベの描写に見るように大変シャープなので、天候条件を選べば、背景のボケ具合を活かしておもしろい描写が楽しめそうです。三脚使用。(画像をクリックすると画素等倍で見られます)
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●終わりに
スーパーワイドへリアー15mmF4.5 Aspherical IIIの良さをさまざまなシーンで確認しましたが、それではいままでのI型とII型はまったく使えないかというと、そうではないのです。最初に記したように、フィルムカメラの時代にはI型とII型もまったく問題なかったわけですから、フィルムカメラで使う限りは旧タイプでよいわけです。またフルサイズのデジタルカメラではつらくても、APS-C判の機種なら問題なく使えるモデルもありますので、試してみるといいと思うのです。
【写真7】リコーGXR+マウントA12にスーパーワイドへリアー15mmF4.5のI型を取り付けた状態。(画像をクリックすると大きくして見られます)
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【作例16:スーパーワイドへリアー15mmF4.5 Aspherical III+リコーGXR+マウントA12】絞り優先AE(F5.6・1/1230秒)、ISO200、AWB。リコーGXR+マウントA12はAPS-Cの画面サイズなので、15mmのスーパーワイドヘリアーは22.5mm相当の画角となりますが、これでも十分超広角です。画素数は1200万画素なので、発色も気持ちよく、むりない描写が得られています。(画像をクリックすると画素等倍で見られます)
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【写真7】には、ライカM用レンズを付けられる「リコーGXR+マウントA12」の組み合わせにスーパーワイドへリアー15mmF4.5のI型を取り付けて撮影した例を【作例16】に示しました。リコーGXRの小型ボディに、やはり小型のI型はフィットします。APS-Cですから15mmの焦点距離に1.5をかけると22.5mm相当の画角となるのです。この組み合わせはコンパクトでなかなかいけます。ただしこれは、APS-C・1200万画素のリコーGX-Rの場合なわけでして、他の機種とスーパーワイドへリアー15mmF4.5・I型との関係は不明ですので、ご自身でお試しください。
(2015.04)