■ランダムに撮影してみると
以上までは、三脚を使って細心の注意を払って撮影した結果ですが、高画素一眼レフは三脚使用でというのは、ニコンD800/D800Eからの考え方でしたが、その後D810に発展してから、かなり安定して手持ち撮影が可能となりました。EOS5Dsも同じようにミラー振動制御システムを採用していますが、上記の作例では最大限高画素の特徴を引き出すべく、超重量級の三脚にケーブルレリーズ、シャッター走行遅延モード、ミラーアップライブユー撮影など、可能な限りのカメラブレ効果を防止する撮影を行いましたが、今回はあまりにも撮影時にブレないようにと気を使ったためにか、ブレによる具体的な画像の劣化は画素等倍の画像でも明確には確認できなく、最も効果的であったのはピクチャースタイルの「ディテール重視」モードでした。つまり画像処理による画像の向上のほうが効果あったのです。とはいっても、これはブレ防止に対する配慮をカメラ製作側とカメラ使用者側が最大限配慮した結果の成果でありまして、実際一眼レフカメラならば手持ち撮影でどれだけ良い結果が得られるかというのが最も知りたい部分だと思うのです。
そこで、実際はどうなのだろうかということで、手持ち撮影の結果をいくつかお見せしましょう。
【作例11:いつものチャート的なマンション】焦点距離:24mm、プログラムAE(F4・1/1000秒)、ISO100、ピクチャースタイル:スタンダード、AWB、手持ち撮影(画像をクリックすると画素等倍で見ることができます)
【作例11:いつものチャート的なマンション】
このところ数回登場している立体的に細かくタイルが貼られているマンションです。ここでもやはり柔らかく描写されていますが、それぞれのタイルはしっかりと見えます。ピクチャースタイルは初期設定の「スタンダード」のままであり、やはり「ディテール重視」にセットしておけば壁面のタイルはもっとシャープになっただろうと考えられます。もうひとつ、実は同じシーンを他のカメラ、レンズで撮影しているのです。それによりますと、茶色いマンションの左隣の白いビルの窓枠には倍率色収差の発生らしきものが認められましたが、このキヤノンの組み合わせではほとんど見えないのです。このあたりはレンズの基本性能による部分であるかもしれませんが、レンズ光学補正機能による周辺光量補正か色収差補正やデジタルオプチマイザー機能の働きも加味されていると思うのです。このような技術は、その動作内容が見えないだけに、サードパーティーのレンズを使ったときにこのカメラではどのように機能するか、など大いに興味がわく部分です。
焦点距離:24mm、プログラムAE(F4・1/1000秒)、ISO100、ピクチャースタイル:スタンダード、AWB、手持ち撮影。
【作例12:ヒガンバナをアップ】焦点距離:70mm、プログラムAE(F10・1/500秒)、ISO1600、ピクチャースタイル:スタンダード、AWB、手持ち撮影(画像をクリックすると画素等倍で見ることができます)
【作例12:ヒガンバナをアップ】
撮影した時期はちょうどヒガンバナの咲く季節でした。どれだけ近寄れるかはレンズのもつ機能によるものですが、撮影レンズの70mm望遠側のマクロ域に入る手前ぐらいのポジションでクローズアップしました。画素等倍までモニター上で拡大して見ますとメシベの先にピントがきていて花粉まで見えますからズームレンズといえども画質的には十分なものを感じます。
焦点距離:70mm、プログラムAE(F10・1/500秒)、ISO1600、ピクチャースタイル:スタンダード、AWB、手持ち撮影。
【作例13:ヒガンバナの群生】焦点距離:24mm、プログラムAE(F11・1/320秒)、ISO1600、ピクチャースタイル:スタンダード、AWB、手持ち撮影(画像をクリックすると画素等倍で見ることができます)
【作例13:ヒガンバナの群生】
公園のわきにヒガンバナの小さな群落を見つけました。広角側の焦点距離24mmで手前の花にピントを合わせ、花と花が重なる部分をわざと作ってシャッターを切りましたが、花の赤い色が飽和して溶け込むようなことはありませんでした。
焦点距離:24mm、プログラムAE(F11・1/320秒)、ISO1600、ピクチャースタイル:スタンダード、AWB、手持ち撮影。
【作例14:白い花の群落】焦点距離:24mm、プログラムAE(F13・1/320秒)、ISO1600、ピクチャースタイル:スタンダード、AWB、手持ち撮影(画像をクリックすると画素等倍で見ることができます)
【作例14:白い花の群落】
白い花が満開のタマスダレの群落をねらってみました。タマスダレの白い花とその葉が1本1本、針のように細いのですが、拡大して見る十分細かく分解され再現しているのがわかります。
焦点距離:24mm、プログラムAE(F13・1/320秒)、ISO1600、ピクチャースタイル:スタンダード、AWB、手持ち撮影。
【作例15:池のほとりで】焦点距離:70mm、プログラムAE(F10・1/400秒)、ISO1600、ピクチャースタイル:スタンダード、AWB、手持ち撮影(画像をクリックすると画素等倍で見ることができます)
【作例15:池のほとりで】
いつもの公園の池を何気なく見ると、止まり木にしっかりとカワセミが羽を休めていました。正午近いので、本来は森の中へ行っているはずなのにと思い、カメラを向けましたが、ボディについているレンズの最も長焦点側は70mmなのでまったくむりとは知りつつ、シャッターを切りました。それにしても残念なのは最も望遠側が70mmであることです。しかし、画素等倍まで拡大して見ると、カワセミが止まり木にしっかりいるのがわかります。これぞ高画素タイプならではのなせる業だと思います。
焦点距離:70mm、プログラムAE(F10・1/400秒)、ISO1600、ピクチャースタイル:スタンダード、AWB、手持ち撮影。
【作例16:レストランで写真展】焦点距離:50mm、プログラムAE(絞りF4・1/40秒)、ISO400、ピクチャースタイル:スタンダード、AWB、手持ち撮影(画像をクリックすると画素等倍で見ることができます)
【作例16:レストランで写真展】
知人がレストランで写真展を開きました。せっかくだからと数枚シャッターを切りましたが、その中に1枚おもしろい写真を見つけました。ピントは左から3本目のボトルに合わせましたが、そのキャップの上を画素等倍に拡大してびっくりしました。なんと、撮影距離からは目では確認できない小さなホコリがしっかりと写り込んでいるのです。高画素で高解像ならではの写りだと思います。
焦点距離:50mm、プログラムAE(絞りF4・1/40秒)、ISO400、ピクチャースタイル:スタンダード、AWB、手持ち撮影。
【作例17:窓ガラスの向こうで】焦点距離:70mm、プログラムAE(絞りF4・1/25秒)、ISO3200、ピクチャースタイル:スタンダード、AWB、手持ち撮影(画像をクリックすると画素等倍で見ることができます)
【作例17:窓ガラスの向こうで】
タングステン光の下で、窓ガラスの向こうにいる女性を70mm望遠域でスナップ。こちらも画素等倍まで拡大して見ると、ISO感度3200まで高感度に自動でアップされていても、後ろに束ねた髪の毛がみごとに1本1本がタングステン光の下で輝くように解像しているのがわかります。高感度でも荒れが目立たない高画素・高解像ならではの繊細な描写となりました。
焦点距離:70mm、プログラムAE(絞りF4・1/25秒)、ISO3200、ピクチャースタイル:スタンダード、AWB、手持ち撮影。
【作例18:サルスベリの花】焦点距離:70mm(マクロ域)、MF、絞り優先AE(絞りF4・1/1600秒)、ISO2000、ピクチャースタイル:スタンダード、AWB、三脚使用(画像をクリックすると画素等倍で見ることができます)
【作例18:サルスベリの花】
サルスベリは、漢字で、百日紅か猿滑と書きます。猿滑とはそのものずばりの感じですが、サルが乗って滑ったかどうかはわかりません。その点において“百日紅”と書いてサルスベリと読ませるほうが、サルスベリの花をズバリ連想させるので、こちらの漢字のほうが好きです。でも、こんなこと書いていて山にいつも茂っていたサルスベリの樹は、初夏は緑の葉がきれいでしたが、夏には白い花を咲かせていました。あれもサルスベリと思っていましたが、白い花だと“百日白”とでも書くのでしょうか。それとも別の樹なのかもしれません。少し前置きが長くなりました。今回使ったEF24〜70mmF4L IS USMは、ズームリングをスイッチとともに70mm側で回転させるとマクロモードに入ります。そのマクロモードで撮影を試みました。当初は、絞り込んで撮影と思いましたが、背景のボケを比較すると絞り開放のほうがボケ具合がいい感じでした。絞り開放であるためにシャープさはありませんが、こちらを掲載です。肉眼ではあまり気にならなかったアブラムシも複数写り込んでいます。ピントはAFも可能ですが、三脚にカメラをセットしたので、マニュアルでピント合わせをしました。
焦点距離:70mm(マクロ域)、MF撮影、絞り優先AE(絞りF4・1/1600秒)、ISO2000、ピクチャースタイル:スタンダード、AWB、三脚使用。
【作例19:ウツギの花】焦点距離:70mm、プログラムAE(絞りF7.1・1/200秒)、ISO100、ピクチャースタイル:スタンダード、AWB、手持ち撮影(画像をクリックすると画素等倍で見ることができます)
【作例19:ウツギの花】
作例18がソフトフォーカス的な描写でしたから、同じレンズでもう少ししっかりと解像した描写を求めてみました。撮影は、プログラムAEのまま手持ちAFで行いましたが、このような微妙な撮影は、最初から感度を上げてAFでなくマニュアルで、しかも手持ちでなく三脚使用がやはり良いですね。ということで風も吹いていましたし、なかなかピントが定まらずに花芯にフォーカスは合っていません。それでも花弁の表面の細かい部分のみずみずしい描写は肉眼では認識できないほど細かく、素晴らしいです。つまり、高画素タイプのカメラであっても、レンズの解像力が不足すればソフトフォーカス的な描写となりますが、レンズの解像力がアップすれば高画素であることと相まって、肉眼でも確認できないような繊細な描写が可能になるというわけです。
焦点距離:70mm、プログラムAE(絞りF7.1・1/200秒)、ISO100、ピクチャースタイル:スタンダード、AWB、手持ち撮影。
■高画素と光学ローパスフィルター
以上がフルサイズで有効画素数5,060万の「キヤノンEOS 5Ds」を使った僕なりのレポートです。最初に悩んだのは、最高画素モデルとして、より鮮鋭度の高い光学ローパスフィルター効果をキャンセルしたEOS 5DsRにするかということでした。結局、少ない経験ではありますが、ここまで高画素になってくると最終画素(画素等倍)での画像(鮮鋭度)を活かすことは、さまざまな場面を想定してもほとんどないだろうということでした。そしてキヤノンのコメントからは、何となく不本意ながらEOS 5DsRを作りましたみたいな感じ(あくまでも僕がそう感じただけですけど)が伝わってきていましたので、EOS 5Dsを選んでみたのです。それまでは、光学ローパスフィルターがないと鮮鋭度の高い画像が得られる、光学ローパスフィルターがあるとモアレの発生が防げる、特に動画撮影ではモアレ防止の効果は大きい、などと考えていましたが、最近写真仲間の好意によって、B0判の特大プリントを頻繁に行うことができるようになり、画素等倍の鮮鋭度を生かすことは最終的な鑑賞形態ではきわめて少ないのではないかと思ったのです。つまり写真プリントとして、商業印刷として、同じ高画素(解像度)なら、トータルで写真を鑑賞(利用)するのに画素等倍レベルで鮮鋭度が高いことがどれだけ効果があるかと、考えたのです。
これには異論がある方もいるだろうと思いますが、そのようなことを思いめぐらしているときに、若手カメラマンのSK君に新宿のカメラ店でばったり会いました。SK君いわく、6月の発売と同時にEOS
5DsRを購入し、仕事に使ってきたけれど、光学ローパスフィルターがないことのメリットが見いだせないというのです。そこで、僕なりの考え方を伝えましたが、同じような考え方に行き着いたようです。とはいっても、カメラにはさまざまなユーザーなりの要求があるわけで、それだけのバリエーションは商品のラインナップとしては必要だったのかもしれません。
(2015.9)
キヤノンEOS 5Ds で「MJビューカメラアダプター」を使ってみました
【写真A】MJビューカメラアダプター69(画像をクリックすると大きくして見られます) | 【写真B】ホースマンVH-RにMJビューカメラアダプター69を介してキヤノンEOS 5Dsを取り付け(画像をクリックすると大きくして見られます) |
【写真C:フォクトレンダーAVOSの雄姿】トプコール150mmF4.5、絞り優先AE(F11・1/25秒)、+1EV補正、ISO 1600、ピクチャースタイル:スタンダード、AWB、三脚使用(画像をクリックすると大きくして見られます) |
キヤノンEOS 5Dsが高画素機であることから、メディアジョイの和田社長さんから「MJビューカメラアダプター69」を使ってみないかと提案をもらいました。ビューカメラアダプター69は、リンホフ、ホースマン、カンボなどの国際規格の69フィルムバックを備えたテクニカルビューカメラに35ミリ一眼レフなどを装着するためのアダプター【写真A】です。各種カメラマウントに対応しており、今回はキヤノンEFマウントで使ってみました。
テクニカルビューカメラとしては6×9cm判のホースマンVH-Rを用意して、MJビューカメラアダプターを介してEOS 5Dsを装着してみました【写真B】。最初は75mmレンズを取り付けましたが、接写でしかピントが合わないので、さらに焦点距離の長い150mmレンズを使って、撮影した結果が【写真C】です。もう少し焦点距離の短い100mmぐらいからのレンズも使用可能だと考えられますが、一眼レフはフランジバックが長いので、それだけ蛇腹の伸ばしが短くなるのです。マウント部に最もフルサイズでフランジバックの短いミラーレス機のソニーα7シリーズ用のFEマウントがあればさらに便利さが広がるかもしれません。
このようなビューカメラアダプターは、原理的にはフィルムカメラの時代から可能でしたが、レンズ交換式のデジタルカメラで、ライブビューで拡大して見ながらピント合わせができるようになった現在のほうが、用途が広がると思うのです。