【作例6】前田家本邸の階段広間。(写真をクリックすると画素等倍まで拡大して見られます)
■作例6:前田家本邸の階段広間
10mmという超広角で、最も効果的な使い方はこのような建築物の室内を撮影する必要のある、建築やインテリアデザイナー、さらには不動産業の人々にとっては極めて有効なレンズだと思うのです。画面中央のマントルピース、角柱などはイタリア産の大理石が使われています。家具はイギリス製の物が配置されていますが、室内には日本の伝統的な唐草や雛菊をあしらった文様も見られるとされていますが、画素等倍まで拡大すると、それらしきパターンを見ることができます。限られたスペースでの撮影で、これだけ自然に見えるのはディストーションと周辺光量の低下がほとんどないからです。撮影は手持ち限界の1/10秒、本来なら低感度に設定し、三脚を使って撮影すれば、さらに高画質が得られます。
≪撮影データ≫カメラ:絞り優先AE、F5.6・1/10秒、ISO1250、AWB、ソニーα7R
【作例7】前田邸の階段。(写真をクリックすると画素等倍まで拡大して見られます)
■作例7:前田邸の階段
階段広間から2階に上がる階段です。手すりの曲線に対して、窓枠はカメラを斜めにした分だけパースがついていますが、画面下の欄干下部の直線性はみごとなものです。そしてこのように自然に見えるのは、ヘリアーハイパーワイド10mmはディストーションのないレンズだからといえます。
≪撮影データ≫カメラ:絞り優先AE、F5.6・1/5秒、ISO1250、AWB、ソニーα7R
【作例8】前田邸の時計。(写真をクリックすると画素等倍まで拡大して見られます)
【作例8】前田邸の時計
ごく自然に上から下まで写っていますが、実は被写体である時計までは1mもない撮影距離なのです。撮影は絞り開放F5.6で行っていますが、このレンズにとっては絞り開放なのです。とはいっても、時計の文字盤、左右上にある木彫りの彫刻などまったく画像にくずれはありません。
≪撮影データ≫カメラ:絞り優先AE、F5.6・1/6秒、ISO1250、AWB、ソニーα7R
【作例9】前田邸の庭園。(写真をクリックすると画素等倍まで拡大して見られます)
■作例9:前田邸の庭園
建築物の撮影ばかりでは物足りません。何かこの10mmレンズに合う一般的な被写体はと考えて、庭のほうを見ていたら、老夫婦がゆっくりと芝生を横切り散歩している姿が目に入りました。10mm、画角130°という広角では建築物をと決めて駒場公園にきたのですが、できれば違う感じのカットをと考えていたので、これだとばかりにシャッターを切った1枚です。結果としては、画面周辺は4隅に引っ張られたように撮れましたが、逆に写真として中心の老夫婦に視線が行くような流れができたのも超広角ならではの描写です。ある程度大きくプリントしないとその写真の雰囲気と描写の特性はでてこないでしょう。
≪撮影データ≫カメラ:絞り優先AE、F11・1/250秒、ISO1250、AWB、ソニーα7R
【作例10】煉瓦窯。(写真をクリックすると画素等倍まで拡大して見られます)
■作例10:煉瓦窯
栃木県野木町にある旧下野煉化会社の円形連続煉瓦窯です。明治23年から昭和46年まで稼働していたそうで、工場、倉庫、ホテル、橋脚などに使われた赤レンガを多数製造し、日本の産業の近代化にはたした役割は大きく、現在は国指定の重要文化財に指定されています。外形は円形とはいっても正確には16角形で、外周は約100m、高さ43mです。この窯を歪みなく撮るために、正対して撮影しましたが、変なパースもなく青空のなかに撮影できたのはラッキーでした。そしてなによりも、画面周辺の空に目立った濃度低下がないのは素晴らしいことです。
≪撮影データ≫カメラ:絞り優先AE、F11・1/250秒、ISO200、AWB、ソニーα7R
【作例11】草木湖。(写真をクリックすると画素等倍まで拡大して見られます)
■作例11:草木湖
群馬県のみどり市にある利根川水系の草木ダムのダム湖です。総貯水容量が約6千万トンとされていますが、訪れた日は水を満々とたたえていました。右端に見えるダムとその左の浮き桟橋状の部分と先端のブイにつながれた伸びるロープはみごときれいにそろって、まっすぐに直線としてすらっと伸びています。その一番奥に見える「草木ダム」と書かれた文字もしっかりと読めます。もちろんソニーα7Rが3,640万画素という高画素機だから判読できるわけですが、レンズ性能としては解像力が十分にあるということになります。
≪撮影データ≫カメラ:絞り優先AE、F11・1/250秒、ISO200、AWB、ソニーα7R
【作例12】アーティスト、安達ロベルトさん。(写真をクリックすると画素等倍まで拡大して見られます)
■作例12:アーティスト、安達ロベルトさん
音楽家でもあり、写真家でもある安達ロベルトさんの「断片化の前に」というテーマの個展会場での1枚です。実はこのカットも、主要被写体である安達さんとの距離は1m強とわずかでしかありませんが、写った結果はきわめて自然です。絞りF5.6の開放で、感度はISO1600相当にセットしての撮影ですので、さすが画素等倍に拡大して見るとノイズの発生は目につきます。しかしノイズがあるとはいえ、微細な部分まで十分に解像しています。
≪撮影データ≫カメラ:絞り優先AE、F5.6・1/500秒、ISO1600、AWB、ソニーα7R
【作例13】円卓を囲んで。(写真をクリックすると画素等倍まで拡大して見られます)
■作例13:円卓を囲んで
写真業界に顔を出したときからの友人Fさんの快気祝いでの1カット。このような場面の撮影だと、従来はフィッシュアイレンズか、最近ではリコーのシータのような360°パノラマカメラでの撮影がいいのかもしれませんが、とりあえずハイパーワイド10mmレンズを持っていたので撮影してみました。最初は席を立ってのポジションからでしたが、撮影している自分を除いて全員が写りこむようにと、椅子を少し後に引いて、その椅子に立っての撮影です。ひと声かけて、こちらに向いてもらえばベストショットとなったかもしれませんが、主役のFさんのうれしそうな顔が自然で面白い写真となりました。撮影感度は、一連の撮影のなかで最も高いISO2500です。同じαシリーズでも、高感度適性の高いα7RIIを使えばもっと粒状感のないなめらかな描写になったはずです。
≪撮影データ≫カメラ:絞り優先AE、F5.6・1/40秒、ISO2500、AWB、ソニーα7R