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【写真4】縦位置グリップを取り付けると堂々とフラッグシップ機らしくなります(画像をクリックすると拡大して見ることができます)


【写真5】作例には示しませんでしたが、バッターが球をバットにあてた瞬間、ジャンプして飛び上がったところなどを簡単に撮れるサムスンオートショットのメニュー画面。日本語のフォントもきれいです(画像をクリックすると拡大して見ることができます)

■大きな時代の流れのなかで
 しかしなぜサムスンのカメラをこの時期使ってみたのかと思われるでしょうが、NX1はカメラ製造から撤退した、サムスンのフラッグシップ機【写真4】であったからです。しかも発表時はAPS-C判の裏面照射タイプCMOSとして初のものでした。この裏面照射タイプの撮像素子を最初に搭載したのは2009年発売の「ソニーサイバーショットDSC-WX1」で、2.4型1,020万画素、従来の表面照射タイプの約2倍の感度が得られるというものでした。裏面照射タイプはもともと小型の撮像素子に向く技術とされていましたが、ソニーでは2013年6月に大型化した裏面照射タイプCMOSの1型2,020万画素を「サイバーショットDSC-RX100 II」に採用しています。そして2014年11月にAPS-C判で2,820万画素裏面照射タイプCMOSを搭載した「サムスンNX1」が発表されたのです。ところが2015年8月にはソニーがフルサイズで4,240万画素裏面照射タイプCMOS撮像素子搭載の「α7R Mark II」を発売したのです。サムスンの裏面照射タイプの大型CMOSセンサー搭載は、日本国内で発売されなかったことも手伝って話題には上りませんでした。サムスンNX1の最高感度はISO 51200(画素ピッチ3.6μm)でしたが、ソニーα7RIIの最高感度はISO 25600(増感で102400、画素ピッチ4.5μm)ということでしたので、裏面照射タイプは高感度に強いと一気に人気が高まったのです。ところが2016年4月に発売されたペンタックスK-1ではフルサイズ3,640万画素(画素ピッチ4.87μm)で、裏面照射タイプでなくても最高感度ISO 204800相当を達成しているのです。これは、やはり同じ時期に発売されたフルサイズで2,082万画素(画素ピッチ6.4μm)と低画素タイプのニコンD5がISO 328万相当を達成していますので、各社の技術開発競争が日進月歩であることを示す何物でもないと思うわけです。
 ちなみにソニーα7RIIの裏面照射タイプCMOSの特徴として、マウントアダプターを使用してライカレンズの広角で周辺光量の低下、色付きなどが大幅に改善される特徴がありましたが、NX1(フランジバック25.5mm)はフルサイズより小さいAPS-C判ですし、マウントアダプターがなかったので、この辺りは確認できませんでした。
 サムソンがカメラ分野に参入したのはフィルムカメラの時代で1990年ごろです。最盛期にはドイツのローライ、日本のユニオン光学を傘下にして、日本市場でカメラを販売した時期もありましたが、ほどなく撤退していました。その後デジタルカメラの時代になると、コンパクトカメラの分野で生産規模は世界第3位とまでいわれるほどになりましたが、結局、コンパクトデジタルカメラの衰退に伴って、最終的にはカメラ事業そのものから撤退ということになりました。
 このことは、何を意味するのでしょうか。過不足ない最新技術を搭載したカメラであっても、レンズ交換式の高級カメラ分野においてはビジネスとして成立しなかったのです。またデジタルカメラは撮像素子を手がけていることが企業の生き残りの条件とまで一時期はいわれましたが、他社の例を見るまでもなく、やはりそうでもないようですし、成熟したカメラ産業において高級機はブランド力も大事なことを再認識したわけです。そしてサムスンという企業総体の中にあっては、カメラのもつポジションは微々たるものでしかなかったのではないでしょうか。しかし、ここまで高めてきたカメラ技術を撤退によって失うことを何よりも残念に思うのはサムスンのエンジニアたちではないかと思うのです。日本のカメラ製造を手本にして、追いつき、追い越せとばかりにやってきたのでしょうが、カメラという産業構造そのものが、大きな時代の流れの中で変化してきたことによるひとつの結果であると思うのです。
(2016.07)


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