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【作例7】ズマリットM90mmF2.5、 絞り優先AE(F2.5開放・1/60秒)、 ISO500、AWB、ライカM9 (神奈川・鶴見にて) |
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【作例8】ズマリットM90mmF2.5、 絞り優先AE(F2.5開放・1/4000秒)、 ISO160、AWB、ライカM9 (神奈川・鶴見にて) |
●Summarit-M 90mmF2.5
ライカM交換レンズのなかには、焦点距離90mmとしては、アポ・ズミクロン90mmF2
ASPH.とマクロ・エルマーM90mmF4があるが、最短撮影距離はズマリットが1m、ズミクロンが1m、マクロ・エルマーがマクロアダプターを付けないで0.77mまでというから、ズマリットのスペックは必要十分なものを感じさせる。90mmという焦点距離は、ライカの交換レンズのなかでもバリエーションの多いレンズで、エルマー90mmF4、エルマリート90mmF2.8、テレ・エルマリート90mmF2.8、ズミクロン90mmF2などとさまざまだ。僕自身は、先程のM3+ズマリット50mmF1.5の後にライカ純正の交換レンズとして求めたのがズミクロン90mmF2で、ライカ用の90mmには深い思いがあった。というのも当時、この90mmF2は大きく重く、三脚座まで付いたヘビーなもので、何よりもズマリット50mmF1.5とはカラーの発色特性がまったく違うのには閉口した。そんなわけで、その後テレ・エルマリート90mmF2.8も購入したが、ズミクロンが太く重いのに対し、テレ・エルマリートは細くコンパクトで重宝して使えた。そんなわけで、ズマリットM90mmF2.5は、太さ重さとも、口径に順ずるわけだろうか、太さ重さともズミクロンとテレ・エルマリートの中間に位置する感じだ。
【作例7】夜間の照明のなかF2.5の絞り開放で激しく動き回る御陣乗太鼓の演舞を撮影した。90mmという焦点距離はファインダーを覗いても仔細がわかるわけではないが、中央の太鼓と演者にスポット的にライティングされているためにうまい具合に絞り優先AEで撮影できている。デジタルならではの高感度撮影の成果であると思う。
【作例8】絞りF2.5開放の状態での中距離の描写だ。空の部分の端を見るとわずかに周辺光量が低下しているような感じを見受けるが、その影響はわずかであってほとんど無視できる状態にあると思う。また、同様に背後のアウトフォーカス部分は特にくせがあるわけではなく、均質性のあるきれいなボケ具合を示している。木々の葉の間から覗ける空の部分を画素等倍近くに拡大したときに倍率の色収差の発生をわずかに感じるが、被写体状況にもよるし、ボディ側の絵処理によっても異なる部分であるためにレンズの性質だと言い切るには難しい。
●焦点距離の違いによる画角変化
ズマリットM4本の焦点距離と画角の変化を書き出してみると、35mm(63°)-50mm(47°)-75mm(32°)-90mm(27°)となる。この関係は数値としてはわかりやすいが、実際の写真ではどうなるのだろうかということでほぼ無限遠ので風景を撮影したのが【作例9】【作例10】【作例11】【作例12】である。三脚に固定してではなく、被写体の砂州と小島が中央にくるように手持ちで撮影。露出は各レンズとも補正なしで撮影したが、夕方5時半頃の斜光線であることから、発色も力強く、立体感ある描写が得られている。撮影条件によってはこのようにダイナミックな描写ができるわけで、ここが写真の難しいというか、楽しいところであり、カメラやレンズ、さらには露出だけでは語れない部分だ。
この写真からおわかりいただけるように、視覚的には広角・標準の35mmと50mm、準望遠の75mmと90mmというように大きく2分することができる。もしこの4本の中から好きなのを選ぶとしたら、35mmと50mmの中から1本、75mmと90mmの中から1本というような選び方が賢明だと思う。一眼レフならズームレンズわずか1本の範囲だが、レンジファインダーならではの悩みどころだ。ついでに申し添えるなら、最初のレンズの外観写真をもう一度見て欲しい。35mmと50mm、75mmと90mmというように鏡胴は部品として共通化されているのだ、この結果それぞれのレンズフードも共通化されていて、もし4本まとめて購入しても、フードは2つでいいことになる。
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【作例9】ズマリットM35mmF2.5、 絞り優先AE(F5.6・1/176秒)、 ISO160、AWB、ライカM9 (香川・小豆島にて) |
【作例10】ズマリットM50mmF2.5、 絞り優先AE(F5.6・1/250秒)、 ISO160、AWB、ライカM9 (香川・小豆島にて) |
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【作例11】ズマリットM75mmF2.5、 絞り優先AE(F5.6・1/125秒)、 ISO160、AWB、ライカM9 (香川・小豆島にて) |
【作例12】ズマリットM90mmF2.5、 絞り優先AE(F5.6・1/125秒)、 ISO160、AWB、ライカM9 (香川・小豆島にて) |
●新ズマリットMの描写の感じ
ズマリットMレンズ4本の描写特性は以上のようになるが、最初に紹介したように、このレンズはすべて球面のレンズで構成されているということだが、描写は必要以上にかりかりとした感じはなく、シャープさのなかに柔らかさのある感じである。昨今の非球面を採用したライカMレンズとは、ひと味違う描写特性をもつ印象だ。その描写の感じは、少ない作例でもおわかりいただけたと思うが、さまざまな撮影条件によっても大きく変わるものであって、絶対的な評価にはならないことを、最後にお断りしておく。