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作例6
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【作例6】コーティングズマール。M9、F4.5・1/2000秒、ISO160。さすがこのような無限遠を絞り開放のF2で撮ることはない。少し絞った状態で撮影した。この時代ライツの絞りはF2-2.2-3.2-4.5-6.3-9-12.5と大陸絞り系列だ。このような青空のある風景を撮影したら、何となくコーティングズマールのほうが空の色が彩度が低く濁ったような感じがした。このレンズにはオーナーの意向により第1面ガラスが傷つきやすいのでUVフィルターを付けているが、そのためか、それともコーティングの影響かも知れない。(静岡・藤枝にて)
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作例7
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【作例7】オリジナルズマール。M9、F4.5・1/1000秒、ISO160。画面全体がフレアっぽく感じるのはレストアされていないためだろう。青空の描写はコーティング品と比較するとノンコーティングレンズのほうが清涼感がある。これは過去にも試したことがあるが、現代の同じレンズでコーティングなしとありでは空を含めて全体に清涼感がでるということは知られている。また、画面全体にピンク色がかかっているのは紫外線が影響しているのではないかと思う。(静岡・藤枝にて)
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作例8
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【作例8】オリジナルズマール。M9、F4.5・1/1000秒、ISO160。池に散ったサクラの花びらと睡蓮の葉とツツジの花1輪といったところだろうか。わずかに絞り込んだ結果であるが、画面中央上部の桜の花びらを拡大して見ていただければ、意外とシャープな感じがでていることは納得いただけるだろう。(静岡・藤枝にて)
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作例9
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【作例9】コーティングズマール。M9、F4.5・1/1500秒、ISO160。決してかりかりと固い感じはないが、必要十分な解像感を持った描写だと思う。絞り開放で撮っていたときにはかなり暴れるレンズだという印象を持っていたが、少し絞ると現代にも通じる手堅い描写の標準レンズとなる。(静岡・相良にて)
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作例10
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【作例10】コーティングズマール。M9、F6.3・1/1000秒、ISO160。少し絞って、無限遠の描写である。シャドーの描出も良く解像度も十分にある。国道を走っていて、陽が落ち、富士が焼けるのではないかと狙っていたときであるが、赤くは焼けなかったが納得いく描写となった。(静岡・富士山麓にて)
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作例11
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【作例11】オリジナルズマール。M9、F2・1/1000秒、ISO160。信じられないような鮮やかな発色の描写である。太陽光があたり、赤く紅葉したモミジの葉陰に入り最短撮影距離で撮影している。ちょうどステンドグラスを光を通して撮影するときれいに写るのと同じような現象だろうか。背後の緑の葉は暗く落ち込んでいるが、かえって幸いしているのかも知れない。最短撮影距離で、絞り開放だからピントは浅いが、とにかくきれいだ。(東京・府中にて)
■基本的な収差の発生具合はどちらも同じ
2本のズマール5cmF2レンズは、1936・1937年製というわけで、十分に古典レンズに分類できる。それだけに、絞り開放の描写は個性的である。しかし少し絞り込むことにより、きわめて通常の描写をするのも事実である。この個性的な部分を好むか、没個性の普通描写を使うかは、撮影者の好みによるところでもある。現代のレンズなら絞り開放から無難な描写を示してくれるだろうが、こういう時代だからこそ、少し外れた個性的な描写をあえて使ってみるのもおもしろい。ところでレンズの“ヤケ”は、コーティングそのものの元とになったということを思い出した。コーティングは現代のレンズにとっては不可欠な加工技術だが、コーティングが施されていなくても作例11のように色鮮やかに撮影できることもあるからおもしろい。一連の作例からすると嘘ではないかと思うほどの描写だ。そんな山があったり、谷があったりする描写をするのも古典レンズの楽しみでもある。発色がよければ、写真も良く見える。