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市川泰憲(写真技術研究家、日本カメラ博物館)

  市川 泰憲(いちかわ やすのり)
1947年東京生まれ。中学・高校・大学と写真部に所属。1970年東海大学工学部光学工学科卒業。同年写真工業出版社入社、月刊「写真工業」編集長を経て、2009年より日本カメラ博物館に勤務しながら幅広い写真活動を続ける。日本写真協会会員。

■ブログ「写真にこだわる」開設しました
http://d.hatena.ne.jp/ilovephoto/

第十六回「コピーライカ」

【LEICA COPIES】ISBN1 874485 05 04(画像をクリックすると大きくなります)

【ライカとコピーライカ】上段がライカ IIIa、下段左から、上海58、ニッカ3-F、ゾルキー(画像をクリックすると大きくなります)


【LEICA IIIa】正面と軍艦部(画像をクリックすると大きくなります)


【NICCA 3-F】正面と軍艦部(画像をクリックすると大きくなります)


探し物をして、我が家のカメラ置き場をひっくり返していたら中国製のライカそっくりさん「上海58」がでてきた。大切なカメラも、ちょっとしたことで下のほうに入り込んでしまうと、なかなか表に出る機会はない。せっかくだからと、身近にあるライカのそっくりさんを集合させてみることにした。そこで「上海58」に加え、オリジナルの「ライカIIIa」、日本製の「ニッカ3-F」、「キヤノンP」、ロシア製「ゾルキー」とおまけの「ライカゴールド」を並べて簡単にお見せすることにした。それぞれ僕にとっては思いで深いものがある。
このうち「キヤノンP」を別にして、4台の集合写真をまず最初に見てもらおう。わが家のテーブルトップスタジオのバック紙が狭いので4台しか撮れないのである。それぞれの大きさ比較でもしていただければと思う。まずご覧のようにそっくりさんであることは、一目瞭然だ。上段がライカ IIIa、下段左から、上海58、ニッカ3-F、ゾルキーだ。ところで、この種のカメラをなんと呼ぶのだろうか。イギリスでは“LEICA COPIES”という本(ISBN1 874485 05 04)が発刊されていて、世界8か国で製造されたさまざまな機種が所狭しと掲載されている。したがってここではとりあえずコピーライカと呼ぶことにした。ただしコピー商品というと、なんとなく最近はハンドバックや時計などのように、商品の名称そのものまでコピーされているようだが、今回はおまけの「ライカゴールド」を別にすれば、それとは一線を画するものであることはいうまでもない。
 以下、それぞれの機種について概略を紹介しよう。

■ LEICA IIIa
元祖ライカである。レンズは沈胴式のズマール5cmF2がついていて、ボディは1936年に製造されてたものだ。スクリューマウントのいわゆるバルナック型ライカだから、小型・軽量だが、最近はほとんど出番がなくなった。標準レンズのズマールは、ときどきデジタルのM9で使いボケ具合と残存収差というか、レンズのボケ味の変化を楽しんでいる。このIIIaとズマール5cmの組み合わせとヘクトール2.8cmF6.3は義父の形見だ。シャッターは、T.1〜1/20秒、B.1/30〜1/1000秒。

■ NICCA 3-F
日本のニッカカメラが1957〜1958年に製造。フィルム巻き上げはノブ式からレバー式に改良されている。1954年にライカがM3となってバヨネットマウントになり、巻き上げがレバー式となっているので、ニッカ3-FはライカM3に比べると約3年後の登場だから、巻き上げがレバー式となるのも当然だ。とはいっても、軍艦部のカットはライカIIIaにかなり似たラインをしている。レンズは、固定鏡胴のニッコールS・C 5cmF1.4がついているが、かなりの美品。シャッターは、T.1〜1/25秒、B.1/50〜1/500秒。このカメラは元感材工業会専務理事の栗田泰さんからお預かりしていたもので、養蜂業を営んでいたお父さんが研究記録用にアサヒフレックスとともに使っていたそうで、きれいな革ケース、純正フラッシュガンなどがセットされている。
なおニッカカメラは、1958年にヤシカの完全子会社である大邦光学となり、その後ヤシカ本体に吸収合併された。この間、ほぼ同仕様の“ヤシカYE”というレンジファインダー機を発売している。元ニッカカメラの本社のあった田園調布の沼部には、ヤシカが京セラと合併した後に、一時期光学機器事業本部の事務所があったが、原宿に移転した後、現在は京セラ興産がマンションを建てている。













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