■エルノスターで撮影してみる
ということで、まずは室内でぬいぐるみのアクセサリーを使ってテスト撮影してみましたが、かなりシャープなレンズであることがわかりましたので、フィールドへ持ち出して実写してみました。
【作例1】志津川湾の日の出。F2・1/2000秒、−1.7EV、ISO200、AWB(クリックすると画素等倍まで拡大して見ることができます)
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【作例2】フラダンス。F2・1/1000秒、−1.3EV、ISO2500、AWB(クリックすると画素等倍まで拡大して見ることができます)
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【作例1】は宮城県南三陸町の志津川湾の日の出です。太陽で赤く染まった海に、カキやホタテのいかだがシャープに写されています。絞りF2開放で撮影。3.11、あのいまわしい津波が押し寄せたとは考えられないほどのおだやかな海です。(2014.4)
【作例2】絞りF2開放で、フラダンスショーのソロダンサーを狙ってみました。福島県いわき市、スパリゾートハワイアンズにて。(2014.5)
【作例3】千曲川と長野盆地。F5.6・1/60秒、ISO200、AWB(クリックすると画素等倍まで拡大して見ることができます)
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【作例4】休息するカモ。F2・1/4000秒、−0.7EV、ISO200、AWB(クリックすると画素等倍まで拡大して見ることができます)
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【作例3】夕景、室内とうまく撮影できたので、晴天の屋外に持ち出したらご覧のとおり、内面反射、フレア、迷光、ベイリンググレアなどなどのあらゆる言葉が当てはまる写真となりました。撮影は絞りF5.6に設定し、屋根のある日陰から写したので、直接レンズに太陽光が当たるというようなことはなかったのですが、コーティングのない時代のレンズは、やはりこういう場面は不得手なのでしょう。何といってもErmanoxは夜のカメラなわけですから致し方ないですね。長野県姥捨駅から千曲川と長野盆地を望みました。(2014.6)
【作例4】近所の菖蒲園のおだやかな光のさす所で、カモの休息を狙ってみました。撮影は絞りF2開放です。このレンズだけにいえることではありませんが、ノンコーティングのクラシックレンズは撮影してみると、ときどき1枚ベールをかぶったような画像となりますが、レタッチソフトでレベル補正処理【図2】を施せば普通のコントラストの写真にすることができます。これは、フィルムカメラ時代にはできなかったことですが、デジタルならではの処理テクニックといえます。前ボケ、後ボケとも癖はなく、絞りF2開放でありながら、結果としては十分な描写だと思うわけです。(2014.6)
【図2】レベル補正処理を行う前と後のヒストグラム(クリックすると大きく見られます)
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【作例5】アジサイ。F2・1/250秒、−0.7EV、ISO200、AWB(クリックすると画素等倍まで拡大して見ることができます)
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【作例6】ユリの花クローズアップ(最短撮影距離)。F2・1/1500秒、ISO200、AWB(クリックすると画素等倍まで拡大して見ることができます)
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【作例5】日陰に咲くアジサイを狙ってみました。紫色のアジサイの花びらのシャープさは絞り開放のF2ということからかいまひとつですが、全体に柔らかく描写されているともいえます。そして、背景のアウトフォーカスした葉のボケ具合は絶妙で、柔らかくジワーッととろけるような描写は、このエルノスターならではのボケ描写かもしれません。(2014.6)
【作例6】もう1つこのライカMマウント改造のエルノスターレンズはかなり接写が利くのです。ところがオリジナルのエルマノックスに取り付けられた状態では、無限遠から約3フィートまでの撮影範囲なのです。エルマノックスの外観写真を見ていると、ヘリコイドを伸ばした状態で撮影しているのを時々見ますが、実はその位置が無限遠位置なのです。つまりエルマノックスのエルノスターレンズは沈胴レンズなのです。【写真4】は、手元にあるエルノスター10cmF2を最も縮めた状態(沈胴状態)と最も伸ばした状態を比較したものですが、ヘリコイドは何と最大約37mmも伸びるのです。ヘリコイドはInf(∞)から最短撮影距離の3Feetの目盛りを過ぎて約360°回転させたInfの位置(約28mm伸ばした所)で1度クリックがかかり、ここがエルマノックスでの光学的無限遠位置で、さらに回転させると3フィートの目盛りわずか過ぎまで回転できるのです。つまり最短から最長まで、ヘリコイドは540°も回転しているのですが、撮影可能範囲は3フィートから無限遠までだったのです。
【写真4】ヘリコイドをいちばん縮めた状態と伸ばした状態。ダブルヘリコイドの金属部分が美しい(クリックすると大きく見られます)
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【作例7】ユリの花。F2・1/2000秒、ISO200、AWB(クリックすると画素等倍まで拡大して見ることができます)
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ところが今回のライカMマウント改造機では沈胴した状態で無限遠がでるように作ってあるのです。まさにライブビューでのピント合わせが可能だからできるわけですが、最も伸ばした状態では、レンズ面最先端から約38cmまでの接写ができるようになっています。そしてザルモンの傑作は、エルマノックスのピントグラスによるものか、置きピンによるものか、さらには目測によるものかはわかりませんが、ただ単に明るいレンズを使ったということでなく、時代の目撃者、キャンディッドカメラとして、後世に作品を残したところが素晴らしいところです。
【作例6】は、ヘリコイドを最大限540°回転させて、最も近接状態で撮影したものです。絞りF2で撮影してありますが、さすがにゆりの花粉が完全に分離するまでの解像力は持ち合わせていませんが、ボケ味、発色の具合など優雅さを感じさせるものがあります。(2014.7)
【作例7】は、最短撮影距離より少しだけ引き下がって、ユリの花を主体に撮影しました。やはり柔らかさと、ボケ味のつながりのよさが描写の特徴でしょうか。絞りはもちろんF2開放です。(2014.7)