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■いざ比較撮影へ

【写真2】札幌・旧道庁前広場にて。右から、今井貞男さん、田中長徳さん、そして僕。三脚はリンホフ、雲台はクイックセット(画像をクリックすると大きく見られます)

 翌日、午前中に機材の準備も完了し、時計台近くのIMAIコレクションから旧道庁までゆっくり歩いて10分という距離ですから全員徒歩で現場に向かいました。撮影に当たっては、旧道庁にニコンDfを正対させて建物がシンメトリーに見える位置に三脚を固定し撮影準備完了です。大人4人がそれぞれ作業を分担して通路の真ん中で行いましたが、観光客の皆さん不思議とよけて歩いてくれるのです。長徳さんは、何となくわれわれがプロのように見えるのでしょうね、というのです【写真2】。その観光客も海外からの方が多く、かなり割合で中国からの人だと感じました。その中で、中国人らしい親子連れの若い女性が、われわれの撮影作業をじっと見ていて、10分ぐらいの撮影が終えると、コンパクトカメラを持って近づいてきて、旧道庁を背景に記念写真を撮影してほしいというのです。そこは、長徳さんにお願いしたのですが、何やらにこやかに話しながら、皆さんを並べてシャッターを切っていました。長徳さんは、中国語も話すのですか?と伺ったところ、いえ英語で話しましたということで、われわれの撮影を含め短時間のうちにすべて完了となりました。
 撮影手順は、三脚に取り付けたニコンDfにまずAF-Sニッコール50mmF1.8Gでアングルを決めて、同じポジションでAF-Sニッコール58mmF1.4G、Aiノクトニッコール58mmF1.2Sの順でシャッターを切りました。フォーカスポイントは、建物中央銅板屋根の下部としました。2本のAF-SレンズはAFで、ノクトニッコールはMFレンズですのでライブビューで最大限拡大して背面液晶でピント合わせしました。三脚は軽量なアルミU字型ポールのリンホフ、雲台はハスキーのクイックセットです。いずれも大判カメラ用ですが、持ち運びに便利なようにとリンホフ三脚を選んだのです。それでは撮影結果を報告しましょう。旧道庁の撮影は、いずれも絞りF5.6としました。F5.6という絞り値は、ほとんどの単焦点レンズなら良像が得られるポイントですが、今回に限らず僕のこのようなシーン(英国大使館正面玄関)の撮影では、いつも絞りはF5.6で撮影しています。

【作例1:AF-Sニッコール50mmF1.8G】AF、絞りF5.6・1/200秒、ISO100、AWB(画像をクリックすると画素等倍まで大きく見られます)

【作例2:AF-Sニッコール58mmF1.4G】AF、絞りF5.6・1/200秒、ISO100、AWB(画像をクリックすると画素等倍まで大きく見られます)


【作例1】AF-Sニッコール50mmF1.8Gの描写です。フォーカス部分のレンガの描写を見るとなかなかです。さらに左背面のビルの横縞を見ると、かすかに解像しています。ただしこれは、画素等倍に拡大した時のモニター上での描写特性であり、現実的なプリントとしてA3ノビにプリントしたときは、左背面のビルの横縞は目を凝らして見るか、ルーペで覗いてみるとわずかに分離しているのがわかりますが、明視(約25cm)の距離では個人差もあるでしょうが、どうにか判別できる解像です。
【作例2】AF-Sニッコール58mmF1.4Gの描写ですが、フォーカス部分のレンガの描写を見るとなかなかです。さらに左背面のビルの横縞を見ると、ほとんど解像していません。もちろん複数枚撮影したなかの最も良好なものを選択してあるのはいうまでもありません。撮影に問題があるとは思えません。もちろんこれは、画素等倍に拡大した時のモニター上での描写特性であり、現実的なプリントとしてA3ノビにプリントしたときには、左背面のビルの横縞は目を凝らして見ても分離していないのがわかりますが、明視の距離でも同様です。もちろん、A3ノビの作品を見るためには、明視の距離から見ることは非現実的で、もう少し下がってみるのが通常です。

【作例3:Aiノクトニッコール58mmF1.2S】MF、絞りF5.6・1/200秒、ISO100、AWB(画像をクリックすると画素等倍まで大きく見られます)

【作例4:AF-Sニッコール58mmF1.4G】AF、絞りF1.4・1/4000秒、ISO100、AWB(画像をクリックすると画素等倍まで大きく見られます)


【作例3】Aiノクトニッコール58mmF1.2Sの描写です。フォーカス部分のレンガの描写を見るとまずまずです。ところが左背面のビルの横縞を見ると、3本のレンズの中では最も解像しています。ただしこれは、画素等倍に拡大した時のモニター上での描写特性であり、現実的なプリントとしてA3ノビにプリントしたときは、目を凝らして見るか、ルーペで覗いてみるとやはり十分に分離しているのがわかりますが、明視の距離では個人差もあるでしょうが、どうにか判別できる解像です。ノクトニッコール58mmF1.2の登場した時期のニコンの技術資料によると、画質的には絞り開放F1.2が最もよく、絞り込むと球面レンズのほうがよくなるという記述もあるのです。今回はF5.6に絞っての撮影ですので、ノクトニッコールとしてはベストの力ではないわけです。

【作例5:AF-Sニッコール58mmF1.4G】AF、絞りF1.4・1/2000秒、ISO100、AWB(画像をクリックすると画素等倍まで大きく見られます)

【作例6:AF-Sニッコール58mmF1.4G】AF、絞りF1.4・1/1000秒、ISO100、AWB(画像をクリックすると画素等倍まで大きく見られます)

【作例4】AF-Sニッコール58mmF1.4Gを、絞りF1.4開放で、AF手持ち撮影してみました。ピントは手前の花に合わせました。背後左端に口径食の影響によりわずかな方向性を感じさせるボケが見えますが、レンズが球面である以上は避けがたい問題で、ニュースレリーズに記述された「ピント面から遠ざかるにつれてなだらかに変化する美しいボケ味により、画面に自然な奥行き感をもたせることで被写体を印象的に撮影できます」というのも納得できる解説です。
【作例5】AF-Sニッコール58mmF1.4Gを、絞りF1.4開放で、縦位置でAF手持ち撮影です。ピントを合わせた場所は、画面中央の木ですが、この距離だと、意外に58mmF1.4絞り開放F1.4の深度は幅があるなということを実感しました。前ボケ、後ボケとも特段クセがなく柔らかく描写されていることがよくわかります。
 ところで、あるところで気になった記述を見かけたので、ひとこと。それは、AF-Sニッコール58mmF1.4Gはノクトニッコールの58mmF1.2より開放F値をF1.4と暗くすることにより、絞り開放での画質の向上を図っているとかいうのをどこかで見ましたが、実はニコンFマウントは1988年のAF化にともないCPU方式の電気信号ピンをレンズ側マウント内側に植設したときから、F1.2という大口径レンズはあきらめたのです。もちろんAF信号ピンのないAiノクトニッコール58mmF1.2Sはマニュアルで使うわけですから最新ボディにも当然のこととして取りつくのですが、AFレンズになってニコンFマウントにF1.2という大口径レンズは存在しないのです。もちろんデジタルという高感度の時代にあって、低輝度下で撮影するときに最大口径F1.2とF1.4の間にどれだけ差があるのかは、いわずもがなであるわけです。
【作例6】AF-Sニッコール58mmF1.4Gを、絞りF1.4開放で、最近接に近い距離で、AF手持ちで今井さんの横顔をアップで撮影してみました。近接しているので、深度は浅くなっていますが、アウトフォーカスした部分の髪の毛の柔らかな描出、背景のボケなど、好感もてる描写です。







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