■撮影してみたら
まず「dp2クアトロ」の撮影解像度設定は3種類あります。縦横比3:2では、SUPER-HIGHで7,680×5,120ピクセル、HIGHだと5,424×3,616ピクセル、LOWだと2,704×1,808ピクセルとなります。このうちSUPER-HIGHモードはJPEGのみでの撮影が可能で、今回の撮影は、RAWデータも欲しいことと、必要以上に大きなファイルを作ることはないだろうと考え、すべてを中間のHIGHモードのRAW+JPEGで撮影しました。なお、アップされているデータは、撮影時のJPEGのままで、RAWデータは使用していません。
【作例1:ところざわのゆり園】絞り優先AE、F5.6・1/250秒、ISO100、AWB、5,424×3,616ピクセル(画像をクリックすると画素等倍まで大きくして見られます)
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【作例2:ゆいこさん】絞り優先AE、F2.8・1/100秒、ISO100、AWB、5,424×3,616ピクセル(画像をクリックすると画素等倍まで大きくして見られます)
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【作例1:ところざわのゆり園】 まずは近景にユリを配して、アウトフォーカスした背景がどのような感じに写るだろうかと試したカットです。AFのターゲットポイントを左にして、ユリの花に合焦させましたが30mmの焦点距離で、絞りF5.6という条件ですが、背景はズバリボケましたが、元の形態はとどめているのがわかります。このカットから、花びらを見るとかなりシャープな描写を示しており、フォビオンならではの緻密な画作りを感じさせます。
【作例2:ゆいこさん】クアトロの画像は硬いという話を聞きます。撮影した画像をまずモニターで開いてみると、作例1のゆりの花は、かなりシャープで、たしかに硬い印象があります。ところが、こちらは人物の肌なので、実際にプリントしたらどうなのだろうと、フロンティアによる銀塩カラーペーパープリントを4WPと6切、さらにはインクジェットプリンターにより同じ程度のA4の光沢プリントを作ってみましたが、どちらのプリントも髪の毛はほどよくシャープで、柔らかな肌の感じもそのままで描出されました。考えてみれば当たり前のことですが、いまさらながら、写真をモニター画像だけで判断してはだめなのだなあと、感じた次第です。このあたりのシャープなモニターの見え方とプリントしたときの感じの違いは、プリンターにより解像度があるところまで低下させられたのか、それともバイアー方式などのデモザイキング処理された記録方式とフォビオンセンサーの独自垂直記録方式と関係あるのかはわかりませんが、特異な見え方です。
【作例3:田中長徳さん】絞り優先AE、F2.8・1/50秒、ISO400、AWB(画像をクリックすると画素等倍まで大きくして見られます)
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【作例4:若者たち】絞り優先AE、F2.8・1/200秒、+0.3EV、ISO800、AWB、5,424×3,616ピクセル(画像をクリックすると画素等倍まで大きくして見られます)
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【作例3:田中長徳さん】 札幌で長徳さんが喫茶店にいるところをスナップさせていただきました。室内ですから決して明るくはありませんが、感度オートに設定してあり、プログラムAEにしてあったので、自動的に感度アップしてISO400となり、絞り開放F2.8、1/50秒、という露出結果でした。拡大してみると長徳さんの肌も、ひげも描写的には画素等倍にしてみても特に破たんしている感じはありません。過去のフォビオンシリーズよりは高感度特性がよくなったことを実感できます。
【作例4:若者たち】 作例3の高感度適性の良さにつられて、スタジオの写真展と演劇を撮ろうとさらにアップしたISO800にマニュアル設定して、絞り開放F2.8の絞り優先AEで撮影してみました。+1/3EVの露出補正をして、シャッター速度は1/250秒、演劇も実用上動きは止まりますが、動きの速い被写体をコントラスト検出のコンパクトカメラで狙うというのはむりなことでした。やはり、動いている人物を撮影するには位相差検出の一眼レフカメラのほうがいいのだということを改めて知らされました。結局、撮影許可はもらったものの、画角との関係もあり、上演中の撮影は途中で断念し、最後に出演関係者に整列してもらって、記念撮影でその場をつくろいました。
ただ、撮影感度をISO800にしたので、PCモニターで画素等倍にして見たときに、肌に高感度フィルムのような粒々のノイズが浮き出るのです。この粒々は、人によっては黒白フィルムのようで好ましいと考える人もいるかもしれませんが、やはりむりがありますので、dp2クアトロのカラーでの大伸ばしするときの実用的な高感度域はISO400までと考えた方がいいと思う次第です。ただし、この粒々ノイズは、画素等倍にして見たときの話であって、実際A4判にインクジェットでプリントしてみると、ルーペなどで覗かない限り、特に目立つということではありませんでした。知人のTさんは、dp2クアトロを購入直後、デモに参加してISO6400に設定し撮影したところ、横に線が出るノイズが発生したとぼやいていましたが、フォビオンセンサーにそのような高感度を求めるのはむちゃな話です。フィルムの時代から高解像度で高演色性のリバーサルのベルビアやネガのインプレッサは感度が低いところで性能を発揮したのです。その点においては、デジタルもフィルムも同じだということでしょうか。
【作例5:トトロの森】絞り優先AE、F5.6・1/400秒、ISO100、AWB、5,424×3,616ピクセル(画像をクリックすると画素等倍まで大きくして見られます)
【作例6:ラベンダー畑】プログラムAE、F6.3・1/250秒、ISO100、AWB、5,424×3,616ピクセル(画像をクリックすると画素等倍まで大きくして見られます)
【作例5:トトロの森】 フォビオンセンサーのカメラは、高解像感から風景写真に向くのではないかというのが僕の考えです。撮影距離からするとほぼ無限遠に位置しているトトロの森の空に近いところの木の葉にピントを合わせ狙ってみました。ここでのポイントは、それぞれの葉がくっつきあうことなく、いかに分離して見えるかが大切で、そのような点からはある程度性能がでているので、分解能が高いことを実感できます。ところが、これは撮影画像データをモニター上で画素等倍ぐらいまで拡大して初めてわかることであり、実際は最終的にどのような大きさにプリントするか、さらには使用するプリンターの解像度そのものによっても、この分解能力の高さもむだになるわけです。とはいっても、モニター上で葉っぱが分離して見えるかどうかは、やはり気になる部分です。また、このような場面で光線の当たり具合にもよりますが、木々の細かい葉全体にシャープが強くかかっているように感じるのも気になります。
【作例6:ラベンダー畑】 こちらも風景写真であるのですが、ピント位置は画面中央部下部に位置するラベンダーの花にあります。したがって、画素等倍まで拡大して背景の山の木々を見ると、それぞれの葉は分離しては見えませんが、ラベンダー畑から背後の山までの間にいる人物を見ると、かなりリアルな感じで形態、動きを見ることができます。ラベンダーの花を手前から奥まで画素等倍で見ていくと、花にとまっているミツバチの姿をも確認できますので、ここまで見えるのは、高画素機ならではのものだと思う次第です。