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【作例7:北海道旧道庁】絞り優先AE、F5.6・1/250秒、ISO100、AWB、5,424×3,616ピクセル(画像をクリックすると画素等倍まで大きくして見られます)

【作例7:北海道旧道庁】 この場面は、第二十三回目のシリーズに載せた、北海道での「AF-Sニッコール58mmF1.4GとAiノクトニッコール58mmF1.2S」を比較撮影したときの場面ですが、実は同じときに同じ条件で「dp2クアトロ」でも撮影していたのです。この場面からわかることは、旧道庁の左背後のビルを見ると、ビルの壁面の描写がかなり細かく横にスリット状の線が描出されていることです。この差は、なんだろうかということですが、第二十三回目の画像の中でも、よく分解しているのと、ほとんど分解していないのもありました。このときはレンズ間の解像度の違いで表れたわけですが、そのときの画像とdp2クアトロの画像を単純にモニター上で比較すると、dp2クアトロの画像のほうが圧倒的に解像感は高く、これは少なくともニコンDfの1,625万画素センサーとQuattroセンサーとの違いからくるものだと考えられます。もちろんレンズの解像力も大きく左右するわけですが、一眼レフではどのようなレンズを装着するかはユーザーの判断にゆだねられるわけです。
 ちなみにニコンDf ボディでAF-Sニッコール58mmF1.4GとAiノクトニッコール58mmF1.2S、AF-Sニッコール50mmF1.8Gで撮影した画像とdp2クアトロの画像をインクジェットで各A3ノビに引伸ばしたところ、左後部ビルの横に入ったスリット模様の描出はそれぞれでわずかに差を判別できるかどうかのレベルに落ち着きました。実質的なモニター上の解像度と、プリントしたときのプリンター自体の解像度によっても仕上がってくるプリントの画質は大きく変わるわけで、このあたりの関係はなかなか難しいことになります。

【作例8:いつもの英国大使館正面玄関】絞り優先AE、F5.6・1/800秒、ISO100、AWB、5,424×3,616ピクセル(画像をクリックすると画素等倍まで大きくして見られます)

【作例8:いつもの英国大使館正面玄関】 すっかりおなじみとなった英国大使館の正面玄関前です。カメラを三脚に載せて建物に正対させて、中央屋根の下のエンブレムにピントを合わせて、絞りF5.6で撮影します。感度は、そのカメラの基準感度に設定しますので、dp2クアトロの場合はISO100となります。そうして撮影したのが【作例8】ですが、この方法でいままでさまざまな機種を撮影してきました。描写特性は、カメラの画素数、レンズの解像度に依存するわけですが、光線状態により建物の色調も変わりますし、ときには立体感も変わってきます。また天候に大きく左右されるカメラもありましたが、dp2クアトロは天候への依存度は割と少ない感じです。とはいっても晴天での午前中撮影がベストで、実際写った結果からすると、dp2クアトロの画像は過去に例がないほどのきれいさがあります。少なくともデータ上で見ると、DP2メリルよりひと皮むけた感じがする描写です。何か抽象的な表現で申し訳ないですが、この連載シリーズの中には、DP2メリルや同じ高画素機であるニコンD810やソニーα7Rもまったく同じ条件で撮影されたデータがアップされているので、ぜひ比較してご覧いただきたいのです。dp2クアトロの実力のほどがわかります。

【作例9:いつもの東村山・国宝正福寺】絞り優先AE、F5.6・1/125秒、ISO100、AWB、5,424×3,616ピクセル(画像をクリックすると画素等倍まで大きくして見られます)

【作例9:いつもの東村山・正福寺】 こちらの撮影もすっかり恒例化してしまいました。この国宝・正福寺地蔵堂の屋根は、「こけら葺」と呼ばれ、約4.5mm厚のサワラ材が規則正しく並んでいるために、過去の例からするとほとんどのカメラでモアレが発生して見えるという特殊な模様で、各機種のモアレの発生度合をチェックするのには最も適したテストチャートなのです。撮影にあたっては、やはりこちらも他のシーンと同じように絞りF5.6に設定し、三脚でしっかりと固定して、“国宝千体地蔵堂”と文字の書かれている直上の屋根のひさしのヘリに合わせていますが、光学的に同距離にある屋根のこけら葺の地がどれだけ分解して見えるか、またこの部分の細かい木目と干渉しあってモアレが屋根の部分にどのようなパターンでどの部分に発生しているかなどを見るのです。そして今回のdp2クアトロの結果ですが、過去に例のないほど屋根の詳細を解像しています。またモアレの発生も目立つほどではありません。同じシーンの他レンズ、他カメラの比較は“第二十一回「光学ローパスフィルターのありとなし」”をご覧ください。意外と他機種とはまったく違う描写傾向をdp2クアトロが示すのには驚きます。


【写真3】“シグマdp2クアトロ”で撮影したデータから110cm幅にプリント。撮影解像度約1,960万画素、プリント解像度は126dpiですが、それ以上の解像感を感じます。(画像をクリックすると大きく見られます)

■dp2クアトロは中判カメラ!
 ところでこのカメラの大きさですが、このあたりは大きく意見が分かれるところです。もちろん小型・軽量は望むところですが、僕としては、dp2クアトロは高解像感機であり、APS-C判はもともと一眼レフ用のセンサーサイズであったことと、初代DPシリーズからDP2メリルまでのコンパクトなタイプとは別に、dp2クアトロは実質的に中判カメラ的に、しっかりと、ゆっくりと撮影していくのには、存在感ある形としてこれでもいいのではないかとも思うわけです。いずれにしてもデジタルの時代にあって、フィルム時代ように撮像部分の寸法でカメラの大きさが決まっていたのに対し、その逆に高画素という画質から中判的なカメラサイズを決めたのもなるほどと思うわけです。
 また今回は、たまたまですが写真仲間と大型プリント制作の勉強会をクアトロのレポートをまとめている時期に開きました。当日は1枚を約850×1100mmにプリントしたのですが、まさにクアトロの出番なのです。1人当たり2枚のプリントが許されたので、さっそくdp2クアトロと前回機種のニコンD810のファイルのうち、定点撮影の英国大使館での撮影ファイルをもちこみプリントしてもらいました【写真3】。結果としては、D810のフルサイズ3,635万画素に対し、dp2のクアトロセンサーはAPS-C判で、HIGHモード5,424×3,616ピクセル、約1,960万画素の撮影です。さらに上位のSUPER HIGHモードではカラーフィルターアレイセンサーの3,900万画素相当の画質を作り出せるということなのですが、HIGHモードの5,424×3,616ピクセルでも、画素数以上のパワー(解像感)あるプリントが得られたのを実感しました。このあたりは、バイアー方式などのデモザイキング処理された方式とフォビオンならではの特性の相違からくるのか、機会あれば専門家のご意見をうかがいたいものです。
(2014.08)


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