【写真1】サムスンNX1(画像をクリックすると拡大して見ることができます)
■SAMSUNG NX1を使ってみました
韓国サムスンのAPS-C判ミラーレス一眼カメラ「SAMSUNG NX1」【写真1】を使う機会に恵まれましたので、簡単に使用感を報告してみましょう。このカメラが発表されたのは2014年ドイツ・ケルンで開かれた写真映像見本市のフォトキナです。APS-C判、2,820万画素裏面照射タイプのCMOS撮像素子を世界で最初に搭載し、15コマ/秒のAF撮影が可能、WiFiにIIIE802.11ac規格を採用し、4k映像信号をワイヤレスでPC/スマホ/モニターなどに転送でき、バッターが球を打った瞬間、ジャンプして飛び上がったところなどを簡単に撮れるサムスンオートショットと呼ばれるユニークな機能を搭載するなど、技術的にも大変意欲的なカメラでした。そして最も僕が注目したのは日本語文字の採用です。それまでサムスンは世界的に第3位のデジタルカメラメーカーとまでいわれたほどでしたが、それらのカメラは日本では発売されていなく、日本語対応ではなかったのです。それがNX1では、日本語対応になったのですから、いよいよ日本でも発売かとも一時は思われたのです。
ところがNX1は海外では発売されたものの、日本では未発売どころか、2016年にはサムスンはカメラ製造から事実上撤退してしまったのです。これはサムスンのカメラ製造の屋台骨であったコンパクトデジタルカメラが、スマートフォン隆盛の影響をもろに受けたというのが大方の見方ですが、スマートフォン、タブレットでも「Galaxy」という優良ブランドをもつ企業ならではの将来を見据えた判断なのでしょう。2010年に世界初のAPS-C判のレンズ交換式ミラーレス機であるNX10を発売して以来、短期間で数々の新機種を投入してきましたが、結局、レンズ交換式の高級機分野ではシェアを確保できないままに、コンパクト機とともに撤退を余儀なくされたわけです。そういう悲運のカメラですが、どのような実力をもっていたのでしょうか。
【写真2】マウントの電子接点は8カ所(画像をクリックすると拡大して見ることができます)
今回使用したのはボディとレンズの基本構成です。レンズは「プロフェッショナルスタンダードズームレンズ16〜50mmF2-2.8 S ED OIS」【写真2】です。このレンズは、NX1の発表された2014年フォトキナ会場にて配布されたNXレンズカタログでは、掲載されている15本のNX用レンズの内トップを飾っているので、ボディともどもフラッグシップ的な存在なのでしょう。カメラのセットアップは、あたりまえのことですが、いつも使っている各社のカメラと同様であり、操作に戸惑うようなことはありませんでした。唯一、カメラのセットアップ時にAC電源アダプターがないなと思ったのですが、マイクロUSBコネクターのついた電池ケースがついていて、カメラ側にもマイクロUSBコネクターがついているので、スマホや携帯などの電源アダプターとコードを使いなさいということのようですが、従来個別に専用AC充電器を必要としていたことを考えると納得できることです。
【図1】プロフェッショナルスタンダードズームレンズ16〜50mmF2-2.8 S ED OIS(画像をクリックすると拡大して見ることができます)
このカメラに使われている裏面照射型CMOSは23.5x15.7mmで最大出力画像は6480x4320ピクセルなので、画素ピッチは3.6umとなります。プロフェッショナルスタンダードズームレンズ16〜50mmF2-2.8 S ED OISは、【図1】に示すように12群16枚構成で、非球面ガラスを3枚、特殊低分散ガラスを2枚、高屈折率レンズを2枚使用し、手ブレ補正機構を搭載しています。カタログによると35mm判相当で24.6〜77mmとなるようですから、35mm判換算値を約1.54倍と細かく設定しているようです。
【写真3】各操作部は他社と大きく変わることはない(画像をクリックすると拡大して見ることができます)
■使ってみたら
セットアップ終了後さっそく空シャッターを切ってみると、かなりクイックな動作を感じます。これはDSPの能力が高いためだそうで、2,820万画素で毎秒15コマのAF撮影を可能としているのはこのためということです【写真3】。そして3インチの背面モニターの描写はかなり鮮やかできれいです。ここはサムスンの誇るOLED(有機発光ダイオード)が採用されているからです。それでは、いつものようにフィールドへ持ち出した結果を紹介しましょう。
【作例1】いつもの英国大使館正面玄関前(画像をクリックすると画素等倍まで拡大して見ることができます)
●作例1:いつもの英国大使館正面玄関前
いつもの場所での撮影です。この日は、まだ梅雨明け宣言はされていませんが、前日までの雨も上がり、久しぶりに青空が広がって撮影条件としては好天でした。レンズは16〜50mmのズームですが、この場での撮影は基本的には35mm判で焦点距離35mmとしていますので、焦点距離で24mm指標にセットして撮影。絞りはこれまたいつものようにF5.6にセットして、絞り優先AEで撮影しました。その結果ですが、視覚的にかなり良好な画像で、フォーカスターゲットである屋根の頂点に近いところに位置するエンブレムに合わせましたが、十分に解像しています。門柱の文字もよく読めます。さらに画面左右の植栽、避雷針などを画素等倍で見ても、色収差の影響はあまりないようです。あえて難点をいうならば、きわめて主観的ですが、画素ピッチが小さいためでしょうか、壁面、窓枠などを見るとわずかに立体感に乏しいような感じがあります。これは1画素のサイズが小さくなることでダイナミックレンジが狭くなることに起因することだろうと考えられますが、本機だからということではなく、各社高画素タイプに共通したことでもあります。ピント合わせは背面液晶のタッチAFを使用しました。
≪撮影データ≫焦点距離24mm(36mm)、絞り優先AE、F5.6・1/500秒、ISO・AUTO 100、AWB。( )内は35mm判換算焦点距離。
【作例2】高層マンション(画像をクリックすると画素等倍まで拡大して見ることができます)
●作例2:高層マンション
こちらもすっかり恒例化した場面ですが、定点観測的に撮影することにより、シャープさ、質感、立体感、色収差の発生具合など、それぞれの機種間の相違点を見ることができるのです。そこで写った結果はということになりますが、左右背景にあるビルがわずかながらアウトフォーカスしているのですが、左側のビルの壁面はその質感がきれいに描写されています。ここで感じたことは、ISO感度オートセット、プログラムAEモードでもあまり絞り込まないプログラムが組まれていることです。
≪撮影データ≫焦点距離16mm(24mm)、プログラムAE、F5・1/500秒、ISO・AUTO 100、AWB。
【作例3】花ショウブ(1)(画像をクリックすると画素等倍まで拡大して見ることができます)
●作例3:花ショウブ(1)
近所の公園で菖蒲の花がきれいに咲きだしましたので早朝から撮影に行ってきました。アイレベルファインダーで、画面中心に花がくるようにしてシャッターを切りました。手持ち撮影で、三脚の使用は特に意識はしていませんが、手ブレ補正効果も手伝っているのでしょうか、花びらの質感はズームレンズらしく固すぎずに描写され、大変すばらしいです。朝6時半ごろ太陽光線は斜めで、ボケ具合も口径食はなく丸く描写され自然で、背景の水面が輝くように写り込んでいるのがいい感じです。
≪撮影データ≫焦点距離50mm(77mm)、絞り優先AE、F2.8・1/400秒、ISO・AUTO 100、+0.3EV、AWB。
【作例4】花ショウブ(2)(画像をクリックすると画素等倍まで拡大して見ることができます)
●作例4:花ショウブ(2)
作例3と同じ条件でしたが、腰を落として撮影するのはつらいので、背面液晶を起こしてウエストレベルファインダーのように上からのぞいて、ピントを合わせたい左のショウブの花びらの部分に指でタッチする“タッチAF”を使いました。ちょうど写真教室の先生と生徒さんがきていましたが、先生は木道の上でクジラのように這いつくばって撮るように指導していましたが、高齢の女性はいやだと頑張ってました。機材の進歩と選択、撮影法指導の難しさを感じた場面でもあります。背景のボケ具合では、ショウブの葉が重なり合ったところでは、わずかに2線ボケのような傾向もありますが、花のアウトフォーカスした部分は良好で、きれいな円形ボケを示しています。
≪撮影データ≫焦点距離45mm(69mm)、絞り優先AE、F2.8・1/640秒、ISO・AUTO 100、+0.3EV、AWB。
【作例5】アジサイの花(画像をクリックすると画素等倍まで拡大して見ることができます)
●作例5:アジサイの花
花ショウブと同様ですが、もっと近接したらどのような描写を示すのだろうと、望遠側50mmにズームしてアジサイのガクに近づいた撮影です。画素等倍まで拡大して見るとわかりますが、硬すぎずに解像感のある描写です。
≪撮影データ≫焦点距離50mm(77mm)、プログラムAE、F2.8・1/200秒、ISO・AUTO 100、+0.3EV、AWB。