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【ヘクトール13.5cm+ライカM9】
ライカM9、絞りF4.5・1/88.4秒、ISOオート、AWB、撮影距離1.5m。フルサイズならこれだけ入る
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◇望遠ヘクトール135mmF4.5
デジタルになってもうひとつおもしろいのが、デジタルに適したクラシックレンズはどれだろうかと探す楽しみだ。当初は、デジタルにはデジタル用のレンズをというのがひとつの考え方として示されたが、逆に古いレンズでもけっこう楽しめるということを示したのは、同じレンジファインダーカメラの「エプソンR-D1」だ。エプソンの発売は2004年、ライカM8の発売は2006年だから、その先駆けとして大きく評価されていい。フィルム時代の楽しみ方をそのままデジタルへ移行できたのも、ライカMマウントというかレンジファインダーライカならではだ。
さて、このエプソンR-D1の撮像板は1.5×のAPS-Cサイズだ、一方ライカM8はAPS-Hで1.33×掛けだ。つまり35mmレンズはエプソンR-D1では51mm相当、ライカM8では46mm相当の画角となる。いずれのボディもせっかくの広角レンズが標準レンズになってしまうことである。それならば、むしろ積極的に望遠系で使えば、それなりの望遠レンズとして使えることになる。例えば、レンジファインダーライカの最望遠レンズは焦点距離135mmだが、これをライカM8に使えば180mm相当、エプソンR-D1では202mm相当となる。
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【ヘクトール13.5cm+ライカM8】
ライカM8、絞りF4.5・1/60秒、ISOオート、AWB、撮影距離1.5m、APS-Hだと切られてしまうが、画質は十分な性能をもっている。焦点距離180mm相当の画角というわけだ
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ここまでの話は、単に計算値としての焦点距離の話だが、実際この条件に合致するレンズとして「ヘクトール135mmF4.5」がある。実はこのヘクトール135mmはすこぶる写りがいい。この写りのよさを見つけたのは、当時エプソンR-D1の開発責任者であった枝常伊佐央さんだ。枝常さんは、R-D1を使いヘクトール135mmで撮ったポートレイト写真でR-D1のカタログを作ってしまったほどなのである。
それを聞いた、僕もライカM8で試してみたところびっくりするほどの高画質なのだ。まずは、フルサイズのM9で撮影した場合と、1.33×掛けのM8で撮影した場合の画角違いを見て、さらに画面をクリックしていただき、拡大されたヘクトール135mmF4.5の画質をご覧いただきたい。シャープさと滑らかさがみごとに両立している。ポートレイトはもちろんのこと万能レンズとして十分に使える。撮影はヘクトール135mmF4.5の三脚座に三脚を取り付け、撮影ごとにボディを交換する手法をとっている。
本当は枝常さんのように若い女性のポートレイトといきたいが、そこはコストというか僕の力のなさで、人形でご勘弁いただきたい。人形の高さはわずかに15.5cm、絞り値はF4.5開放、撮影距離は最短の1.5mである。ヘクトール135mmF4.5の登場は1933年、1960年のヘクトール135mmF4の登場までの27年もの長きにわたって発売されていたという歴史的事実からしても、いかに優秀であったかはおわかりいただけるだろう。
このヘクトール135mmF4.5には、もうひとつおまけがある。実はレンジファインダー機にとって望遠はまったく不人気なのだ。その不人気ゆえの結果、市場価格はかなりこなれている。かなり程度のいいもの(あまり使われていない?)でもわずかな金額で入手できるのも魅力だ。
●つぎはライカM9.2かM10か
こんなことを書き綴ってきたら、やはりあるところへ行き着いてしまった。もしもM型ライカが昨今のコンパクトカメラや一眼レフカメラのように“ライブビュー可能”だったらどうだろうということだ。元祖ライカ判、距離計付き元祖ミラーレス一眼、元祖マウントアダプター対応機なのである。これは考えてみただけでも楽しみである。そんな次世代モデルに淡い期待をもって、ライカM8を使い倒そう。