●写してみたら
ということで、ライカM9で写してみた結果を紹介しよう。撮影は、日常私が標準被写体として使っているシーンで、我が家の庭から隣の家の庭を狙っての撮影で、写真的にはおもしろくないが、天候、光線状態、季節に関係なくレンズ性能を見れるので重宝して使っている場面だ。今回は28mmという焦点距離なので、遠景にヘリコイドを機械的に付き当てた位置で無限遠を狙ってみた。
結果は、ご覧のとおりである。拡大率にもよるが、少なくともM9ボディ背面の液晶ディスプレーで全画面を見る限りは、周辺光量の低下すなわちビグネッティングの違いしかないように思える。単純にヘクトールが一番顕著で、ズマロンがそれに続き、ズミクロンではほとんど気にならない。ヘクトールとズマロン登場の時代は黒白全盛の時代であったから覆い焼きである程度カバーできたであろうし、引伸ばし時にはある程度周辺部がカットされるから問題なかったであろうが、デジタルでは、1画素たりともトリミングされないでプリントできるわけだし、何でもありのデジタル時代にあっても、フルサイズでの作品づくりとなるとヘクトールとズマロンではかなり辛いものがある。安全を見込んでヘクトールとズマロンを使いたいなら、M8ボディでということになるだろう。もちろん、周辺減光が好みの方はヘクトールやズマロンを選べばいい。いずれにしても表現の問題だ。
それぞれの撮影データ、さらには描写特性を細かく見てみよう。
|
【作例写真】
<ヘクトール28mmF6.3> 絞りF9・AE(1/353.6秒)、ISO AUTO(ISO160)、AWB。
[画像をクリックすると大きくして見られます] |
<ヘクトール28mmF6.3>絞りF9・AE(1/353.6秒)、ISO AUTO(ISO160)、AWB。[描写特性]コントラストは最も高いが、全体に青味がかった発色をしている。周辺部の減光部分は赤味を帯びた発色を示し、画素等倍近くに拡大して見ると画像そのものが崩れて結像していないのがわかる。画面中央部の解像度は、ズミクロンより高く、ズマロンより低い。画面中央部のTVアンテナに色収差の発生が認められる。画面左右の樹木を画素等倍まで拡大して見ると倍率の色収差が発生していることがわかる。
|
【作例写真】
<ズマロン28mmF5.6>
絞りF8・AE(1/500秒)、ISO AUTO(ISO160)、AWB。
[画像をクリックすると大きくして見られます] |
<ズマロン28mmF5.6>絞りF8・AE(1/500秒)、ISO AUTO(ISO160)、AWB。[描写特性]全体に色かぶりして、ねむい感じの発色をしている。周辺部の減光部分は画素等倍近くに拡大して見ると画像そのものが崩れて結像していないのがわかる。この崩れ具合はズマロンのほうがヘクトールより大きい。画面中央部の解像度は、ズマロンが最も高い。画面周辺部の崩れ、中心部の解像度が高いことは、レンズタイプが対称形になっていることに関係するようだ。画面中央部のTVアンテナにはヘクトール同様に色収差の発生が認められる。画面左右の樹木を画素等倍まで拡大して見ると倍率の色収差が発生しているのはヘクトールと同じだ。
|
【作例写真】
<ズミクロンM 28mmF2 ASPH.>
絞りF8・AE(1/353.6秒)、ISO AUTO(ISO160)、AWB。
[画像をクリックすると大きくして見られます] |
<ズミクロンM 28mmF2 ASPH.>絞りF8・AE(1/353.6秒)、ISO AUTO(ISO160)、AWB。[描写特性]全体に色がかりのないクリアな発色をしている。周辺部の減光はほとんど認知できなく、画素等倍近くに拡大して見ても周辺まできれいに結像して画像全体の均質性は最も高い。しかし画面中央部の解像度は、ズミクロンが最も低いが、これはレトロフォーカスタイプの特性だろう。画面中央部のTVアンテナにはヘクトールやズマロンに見られるような色収差の発生はない。画面左右の樹木を画素等倍まで拡大して見ると倍率の色収差が発生しているのは他のレンズと同様だ。