以下、比較作例をいくつか撮影しましたので、ご覧下さい。
【作例1:ズノー50mmF1.8】絞りF4・1/60秒、ISO200、AWB(画像をクリックすると画素等倍にして見ることができます)
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【作例2:ニッコール50mmF1.8】絞りF4・1/60秒、ISO200、AWB(画像をクリックすると画素等倍にして見ることができます)
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【作例1:ズノー50mmF1.8】絞りF4・1/60秒、ISO200、AWB
【作例2:ニッコール50mmF1.8】絞りF4・1/60秒、ISO200、AWB
どちらも同じ場所で、モデルさんのポーズも同じで、素早くレンズを交換して、同じアングルから撮影してみましたが、わずかな時間差とアングルの微妙な変化で光のあたり方が変わってしまったようです。結果、露出が少し異なってしまいました。一見すると、ズノーのほうがマゼンタ味が強いような気もしますが、アンダー気味に露出された結果だろうと思うのです。手持ち撮影なので、わずかにブレを感じさせます。やはり三脚で構えてしっかり撮影することが大切だと思った次第です。
【作例3:ズノー50mmF1.8】絞り開放F1.8・1/45秒、−0.7EV補正、ISO200、AWB(画像をクリックすると画素等倍にして見ることができます)
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【作例4:ニッコール50mmF1.8】絞り開放F1.8・1/60秒、−0.7EV補正、ISO200、AWB(画像をクリックすると画素等倍にして見ることができます)
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【作例3:ズノー50mmF1.8】絞り開放F1.8・1/45秒、−0.7EV補正、ISO200、AWB
【作例4:ニッコール50mmF1.8】絞り開放F1.8・1/60秒、−0.7EV補正、ISO200、AWB
どちらのレンズも最短撮影距離は約45cmなので、三脚を立て、カメラを固定して、絞り開放F1.8で、模造のクリ、カキ、背景にモミジを配して撮影してみました。やはり比較してみて初めていえることなのですが、明らかにニッコールのほうがシャープでその範囲も広いように見えます。この場面どちらも同じ設定で、絞り値をF4にしての比較も行いましたが、深度が深くなりズノーもシャープになるので、ますますその差はわかりにくくなりました。
【作例5:ズノー50mmF1.8】絞り開放F1.8・1/3000秒、−0.3EV補正、ISO200、AWB(画像をクリックすると画素等倍にして見ることができます)
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【作例6:ニッコール50mmF1.8】絞り開放F1.8・1/4000秒、−0.3EV補正、ISO200、AWB(画像をクリックすると画素等倍にして見ることができます)
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【作例5:ズノー50mmF1.8】絞り開放F1.8・1/3000秒、−0.3EV補正、ISO200、AWB
【作例6:ニッコール50mmF1.8】絞り開放F1.8・1/4000秒、−0.3EV補正、ISO200、AWB
これならば差がでるだろうと、銅像を絞り開放F1.8で撮影し、背後には樹木の葉がアウトフォーカスで入るように設定しました。やはりここで見えてきたことは、ズノーの開放絞り描写は甘く、ニッコールはシャープだということです。背景の樹木のボケのくせ具合から、何か違いをと子細に観察しましたが、やはりほとんど同傾向で、ここから描写の癖を読み取るのもむりなことです。
【作例7:ズノー50mmF1.8】絞りF8・1/250秒、−0.3EV補正、ISO200、AWB(画像をクリックすると画素等倍にして見ることができます)
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【作例8:ニッコール50mmF1.8】絞りF8・1/250秒、−0.3EV補正、ISO200、AWB(画像をクリックすると画素等倍にして見ることができます)
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【作例7:ズノー50mmF1.8】絞りF8・1/250秒、−0.3EV補正、ISO200、AWB
【作例8:ニッコール50mmF1.8】絞りF8・1/250秒、−0.3EV補正、ISO200、AWB
思い切ってF8まで絞ってみました。みごとズノーもシャープになり、ニッコールとズノーの描写の差はますますわからなくなりました。画素等倍に拡大して、アウトフォーカス部分のボケを見比べてみると多少の強弱などがありますが、みごと同じなのです。
【作例9:ズノー50mmF1.8】絞り開放F1.8・1/750秒、ISO200、AWB(画像をクリックすると画素等倍にして見ることができます)
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【作例10:ニッコール50mmF1.8】絞り開放F1.8・1/500秒、ISO200、AWB
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【作例9:ズノー50mmF1.8】絞り開放F1.8・1/750秒、ISO200、AWB
【作例10:ニッコール50mmF1.8】絞り開放F1.8・1/500秒、ISO200、AWB
そこでまったく別の状況を作り出して比較したのが作例9と作例10です。フルートを吹くモデルさんの背後に太陽がある状況で、それも絞り開放での撮影となったのです。結果は、どうでしょう。明らかにズノーのほうがフレアが多いのです。これはズノーの登場した1958年ごろと、ニッコールが製造された時代では、約25年近い経時があるのですが、この間レンズ技術で大きな変化がありました。1970年代にほとんどの写真用レンズは各社各様の技術でマルチコーティング化されたのです。当初は、マルチコーティングが施されていることをレンズ名称に組み入れるようなことをした時期もありましたが、1980年代になるとマルチコーティングはあたりまえとなり、ニッコール50mmF1.8にはそのような表記はないのです。だいぶ前置きが長くなりましたが、コーティングの違いがフレアの多少につながったと考えるわけです。また、構造的にはズノーの第1面レンズは鏡胴のかなり奥のほうにあり、ニッコールは薄型指向の設計で第1面はずばり表に出ているのです。つまりズノーのほうは常にフードが被ったような状態で撮影ができるのです。この点からすると、ズノーのほうが有利なのですが、少なくとも逆光の場面では効果がなかったようです。したがってフレア発生の大小は単層とマルチコーティングの差だと判断したわけです。
それだけでは面白くありませんので、何か違いはないだろうかと、画素等倍まで拡大してみたところ、意外なことを見つけることができたのです。まず、逆光に輝くモデルさんの髪の毛、それも合焦したところを見ると、ズノーの描写もかなりシャープなのです。さらによく見るとフルートに刻まれている文字もシャープにしっかりと読めるのです。撮影倍率にもよるのでしょうが、これは意外な結果でした。もちろんニッコールもしっかりと髪の毛とフルートの文字を描写しているのですが、ズノーよりコントラストが高いのです。これも単層コーティングとマルチコーティングの結果からの差だと思うのです。いずれにしても、シャープさがないと思っていたズノーが、意外とシャープな描写を見せたのですから驚きでした。ただ、どちらのレンズもフレアがかった画面の中でも微細な部分がシャープに見えたわけですから、どちらも描写傾向は同じということは、他のシーンと大きな違いはありません。