【作例11:ズノー50mmF1.8】絞り開放F1.8・1/6秒、ISO200、AWB(画像をクリックすると画素等倍にして見ることができます)
【作例12:ズノー50mmF1.8】絞りF5.6・1/500秒、−0.7EV補正、ISO200、AWB(画像をクリックすると画素等倍にして見ることができます)
【作例13:ズノー50mmF1.8】絞りF5.6・1/500秒、ISO200、AWB(画像をクリックすると画素等倍にして見ることができます)
【作例14:ズノー50mmF1.8】絞りF5.6・1/500秒、−1EV補正、ISO200、AWB(画像をクリックすると画素等倍にして見ることができます)
【作例15:ズノー50mmF1.8】絞りF5.6・1/90秒、−1EV補正、ISO200、AWB(画像をクリックすると画素等倍にして見ることができます)
【作例16:ズノー50mmF1.8】これがズノー50mmF1.8の味?。絞り開放F1.8・1/2000秒、ISO200、AWB(画像をクリックすると画素等倍にして見ることができます)
【作例11:ズノー50mmF1.8】絞り開放F1.8・1/6秒、ISO200、AWB。横浜港大桟橋からモデルさんと背景にみなとみらい地区の夜景を望みました。このボケ具合はかなり派手ですが、これは開放絞り値と背景の絵柄とピントを合わせたモデルさんとの距離から生じたものであり、ごく素直な描写です。周辺に行くにしたがってアウトフォーカスした点像の丸が徐々に楕円形になっていきますが、これはレンズそのものが球面で構成されていることから口径食によるものであり、このように作画に積極的に活かすのも面白いです。ちなみにこの時の場面は、モデルさんの顔がどうにか認識できる程度の明るさであって、シャッター速度は遅くなり、どうにかブレてなく鑑賞できるカットをピックアップしました。
【作例12:ズノー50mmF1.8】絞りF5.6・1/500秒、−0.7EV補正、ISO200、AWB。東村山・北山公園菖蒲園。ライカMの画素数は2400万です。この解像度に対し、ズノー50mmF1.8の解像度はどのように作用するのでしょうか。例えば、同じライカマウントレンズをアダプターを介して使える3600万高画素を誇るフルサイズのソニーα7Rを使えばどうなのでしょうか。解像度は、写真というプリントで考えるなら最も解像度の低い部分に足並みがそろいます。当然のこととして、プリントの拡大率にも依存するわけですから、それらが絡み合ってプリント(写真)の画質(解像度)が決まるのです。そして、ズノー50mmF1.8が登場した時代は、主流は黒白写真でした。またプリントも、作品として仕上げるには6切(8×10インチ)か4切ぐらいだったのです。昨今のデジタル高画素時代には、家庭でも半切相当のA3ノビサイズが手軽にプリントできますし、畳1枚近くに伸ばして差が出るようなこともあるわけです。いずれにしてもズノー50mmF1.8が登場した時代には想定外の拡大率だったと考えるわけで、その時代のレンズとしては必要十分な解像度を持っていたのです。
【作例13:ズノー50mmF1.8】絞りF5.6・1/500秒、ISO200、AWB。JR篠ノ井線姥捨駅のスイッチバックで退避している各駅停車の脇を通り抜ける特急を撮影しました。置きピンでしたが、特急最前部の描写も光沢感が出てなかなかです。画面左上の空をご覧いただければおわかりのように、周辺光量の低下は感じさせない立派な描写です。
【作例14:ズノー50mmF1.8】絞りF5.6・1/500秒、−1EV補正、ISO200、AWB。群馬県安中市の碓氷峠にある、わが国最大の煉瓦づくりのめがね橋です。ピントは脚部の煉瓦に合わせてありますが、2400万画素等倍で見ると、シャープさは、いま1つです。すでにほかのシーンでも明らかなようにずば抜けた解像感はありませんが、画面全体の画質の均質性は高く、周辺部を拡大してみても色収差の発生などは感じさせません。
【作例15:ズノー50mmF1.8】絞りF5.6・1/90秒、−1EV補正、ISO200、AWB。山形県酒田の山居倉庫。明治26年(1893)に建てられた米保管倉庫だそうですが、このポジションから見るのが好きです。時々思い出したように訪れるのですが、新緑、紅葉、落葉のタイミングは訪れたことはありますが、残すは雪の時ぐらいになりました。僕にしては珍しく縦位置で撮影しました。どうしてもモニターで見ることが多いので、自然と横位置になるのですが、ここだけは縦位置を避けられませんでした。右端の倉庫の縦線からは、ごくわずかにタル型の歪曲を感じますが、極めて少ないといえます。
●終わりに
作例をご覧いただいてお気づきのように、かなりあちこちへとレンズが旅していることがお判りいただけたと思うのです。それだけ、場所を変え、被写体を変えてみてもレポートに書けるような顕著な画質傾向は見いだせなかったのです。しいて言うならば、絞り開放時の描写に甘さを感じるわけでして、このあたりの描写特性がズノーの生まれた時代を感じさせるのです。ズノー50mmF1.8の最短撮影距離は約45cmです。最初この距離で、白い菖蒲の花を写してみると画面中心がふわっとして白く抜けてしまったのです【作例16】。ズノーのボディと同じレンズを持つINOさんによると、そこがズノー50mmF1.8の味だそうです。そういえば昔は、このような場面はなるべくF8とかF11に絞り込んで撮影するようにというのが一般的なノウハウでしたが、近接撮影に適したマクロレンズが出てくると、F2.8とかF3.5あたりの絞り開放に設定した撮影テクニックが流行ってきて、さらに背景をぼかして主題を浮き立たせるような描写が好まれるようになってきたのです。デジタルの時代になるとF1.2とかF1.4の大口径レンズを絞り開放で撮影するような見せ方も生まれてきました。レンズも技術的な変化に対応して進歩しているのですが、撮影テクニック、さらには表現される描写特性も少なからずその時代の技術進歩に伴って変化していくのだなと理解したわけです。
そしてズノーは、個体数が少ないためにコレクターズアイテムとして人気なわけですが、その希少価値としての人気と、描写特性は異なるわけです。もちろんコレクターズアイテムとして人気のレンズとしては、すでに第二十二回で取り上げたエルネマン社のエルマノックスに固着されていた「エルノスター10cmF2」があるわけですが、こちらは明るい昼間の遠景撮影での結果はフレア満載で見るに堪えられませんでしたが、室内や近接での撮影になると、開放の解像度も高く素晴らしい描写を示すのです。こちらも数が少ないこともありますが、だからといってエルノスター10cmF2で特殊な表現をするというのも難しいことで、古典レンズ遊びは、写すまでのあれやこれやの過程を楽しむものだと改めて思ったわけです。
(2014.12)