■超広角を感じさせない超広角レンズ
dp0クアトロのレポートがやっと終わりました。いつもよりたくさんの場所に持参した結果、作例が16点と1機種に対しては過去最高のものになりました。これは、前に報告したレンズが手こずったためと、dp0では必要以上に21mm超広角という画角を意識したために、まだまだ答えがでないと持ち歩いた結果なのです。しかし多数撮影してみてわかったことは、dp0クアトロにおける21mm相当画角とは、むしろ超広角であるという意識を捨てて、単に近距離で幅広く写るレンズと考えた方がよかったようです。
どうしてそのような結果になったかというと、写った結果はディストーションがなくパースペクティブがどうとかいうのではなく、あくまでも見た目がきわめて自然なためなのです。換言すると、従来の超広角レンズの写り方を変えたカメラ(レンズ)だということです。またディストーションがまったくないという印象を持った過去のレンズとしてはライカ用の「スーパーアンギュロン21mmF4」があります。こちらは35mmのフルサイズなのですが、さらに中心から周辺への光量低下がなだらかで気持ちがいいというものでした【作例17】。シグマのdp0クアトロの自然な描出は、単にディストーションだけからでてくるのか、14mmという焦点距離も関係するのか、他の21mm画角のレンズと比較考察してみるのもおもしろいと思うのです。
【作例17、Maui Suger Factory】スーパーアンギュロン21mmF4、ライカM6TTL、RDP III。フィルムからデジタルデータ化するときに周辺光量がオリジナルより誇張されて低下しています。(画像をクリックすると大きく見られます)
【写真7】札幌IMAI Collectionに展示されているシグマdpクアトロシリーズとアクセサリーのラインナップ。(画像をクリックすると大きく見られます)
dpクアトロシリーズ全体を概観して感じたことは、フォビオンならではの垂直記録のすごさを再認識したことです。そして使用にあたってこのカメラでは“dpクアトロを使うぞ!”という意識をもって撮影に臨まなくてはならないということでした。それは、最初にdpクアトロをレポートした時にも書きましたが、機種的には単焦点のコンパクトデジタルカメラに分類されていても、大きさはフィルムカメラの中判なみ、画質はそれ以上というわけです。それに、途中から追加発売されたシステムアクセサリーの「LCDビューファインダー」を取り付けると、さらに大きくなります【写真3】。この状態で、dp0〜dp3+90mmテレコンバーターの全システムを加えると、ちょっとした容積・重量で、持ち歩きにはキャスター付きの小型旅行カバンぐらいのものが必要となるのです。それだけに自分好みの焦点距離(画角)はどれかとか、その日の被写体は何なのかなど、事前に決めて、持ち歩く(購入する)機種を選択することも大切な要素(決断)です。
それと性能面で特筆されるのは、以前の機種であるdpメリルシリーズでは電池の消耗早く、簡単な撮影でも、1日のうちに予備を含めて少なくとも2本を必要としたのですが、今回のdpクアトロシリーズでは、電池容量が半分ぐらいに減ってからでも、かなり頑張るのです。結果として、2日ぐらいの撮影でも交換なしでいけたことが何回かありました。これは素晴らしい進歩だと思います。そしてさらなる進歩は、かつてのカメラがそうであったように、レンズ交換式となるのか、それともズームレンズ組み込みとなるのか、などと考えるのも楽しいことです。
最後に、僕が関係する札幌の"IMAI Collection"には、dp0、dp1、dp2、dp3、90mmテレコンバーター、光学ファインダー、LCDビューファインダー、専用ストロボ、専用ケーブルレリーズ、専用光学フィルターなどの全システムが収蔵れています【写真7】。これは高画質ならではが、オーナー今井貞男さんのおメガネにかない全システムの収集となった理由なのです。
(2015.8)