■ZレンズSシリーズの実力
●焦点距離35mmの絞り開放描写
用意したのはニッコールZ35mmF1.8S、Zニッコール24〜70mmF4S、AFニッコール35mmF2DとマウントコンバーターFTZの組み合わせの3本です。この場面を同距離・同アングルで絞り開放で、それぞれ芝生の上に置いた枯葉にピントを合わせて撮影しました。このような場面を撮ることにより、ピントを合わせた所の解像特性、前・後アウトフォーカス部の乱れ、周辺減光の具合、焦点深度、さらにはシャッター速度を読むことにより光学的な透過特性なども知ることができます。(2018.10.10)
≪作例7≫ニッコールZ35mmF1.8S(F1.8・1/1000秒、ISO 100)。
≪作例8≫AFニッコール35mmF2D(F2・1/640秒、ISO 100)。
≪作例9≫Zニッコール24〜70mmF4S(F4・1/200秒、ISO 100)。
≪作例7≫ニッコールZ35mmF1.8S、F1.8・1/1000秒、ISO 100(画像をクリックすると画素等倍でも見られます) |
≪作例8≫AFニッコール35mmF2D、F2・1/640秒、ISO 100(画像をクリックすると画素等倍でも見られます)
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≪作例9≫Zニッコール24〜70mmF4S、焦点距離35mm、F4・1/200秒、ISO 100(画像をクリックすると画素等倍でも見られます) |
いずれも、薄曇り、三脚使用、AWB、露出補正なし、jpegFINEで撮影、後処理はなし。ZSレンズはシングルポイントAFで、AFDレンズはマニュアルで合わせましたが、ニッコールZSレンズの解像度が高いことはこの比較を見れば明らかです。基本的には、将来のフルサイズ100Mピクセル解像時代を視野に入れたレンズのはずで、さらに大きく、高価なわけですから、当然といえば当然ですが、光学技術の進歩を垣間見たような気がします。
ところでマニュアルピント合わせ時の画面の拡大法ですが、特に拡大後シャッターを切る前に全画面を確認してからシャッターを切りたいのですが、全画面表示に戻すにはもと来た手順を逆に戻らなくてはならなく、けっこう手間なのです。そこでワンタッチで全画面に戻すことはできないかと新宿のサービスに出向いて聞くと、あるのですね。最初に尋ねてみると、はい確かここにといい、ヘルプの人を呼びましたが、あれこれ触っているうちに、ご自身で見つけ出し教えてくれました。それによると、Z7の初期設定のままではできなくて、カスタムファンクションのf3に“OKボタンの機能”という項目があり、「静止画モードの撮影時または再生時にOKボタンを押したときの機能を設定できます」と書かれていますが、何がどのように設定できるか書かれていないのです。これだけは取説読んでも、わかりませんし、わずか1cm幅ぐらいの小さな解説なのです。自宅に戻り、設定しようとしたらどこだったかな?としばらく考えてしまいました。カメラ側のカスタムメニューf操作というのがあり、そこのf3が「OKボタンの機能」となっていて、さらに撮影モード(+)、再生モード(+)となっていて、撮影モード(+)を開くと、RESETフォーカスポイント中央リセット、拡大画面との切り替え、設定しない、の3項目があり、低倍率(50%)、等倍(100%)、高倍率(200%)とあり、そのうち任意の設定を行うのです。僕は等倍(100%)に設定しましたが、この設定で撮影時にファインダーをのぞいたままOKボタンを押すと一気に等倍までいき、必要に応じ(+)(−)ボタンで細かく操作できるのです。そして全画面の表示に戻すのには、もう1度OKボタンを押せば戻るというのです。もちろん(−)ボタンを拡大数に応じ押し込むことでも良いのですが、“OKボタンを再度押すと一気に全画面表示に戻る”とは、説明書のどこにも書いてないのです。でも社内教育で教えているなら、取説に書くべきだと思うのです。
■ランダムな実写による結果
基本的にカメラですので、写ってどれだけの世界になるわけです。ここまでは、まったくの基本に関しての描写を紹介しましたが、これから先は僕の写真指向のなかでさまざまな被写体に“Z7”を向けてみます。ということで少し旅にでて、撮影しました。
●Zニッコール24〜70mmF4S
≪作例10≫秩父にて:Z24〜70F4S、焦点距離24弌F4・1/25秒、ISO900、AWB(画像をクリックすると画素等倍でも見られます)
≪作例10≫秩父にて:Z24〜70F4S(焦点距離24弌F4・1/25秒、ISO900、AWB)。神社の社の天井を広角24mmで撮影してみました。全体にマゼンタ味を帯びた描写ですが、露出のバランスはちょうどいいという感じです。(2018.10.10)
≪作例11≫鳥居とクモの糸:Zニッコール24〜70mmF4S、焦点距離45mm、F5・1/100秒、ISO 100(画像をクリックすると画素等倍でも見られます)
≪作例11≫鳥居とクモの糸:Zニッコール24〜70mmF4S(焦点距離45mm、F5・1/100秒、ISO 100)。うっそうとした神社の鳥居にクモの糸が1枚の葉をぶら下げていたので枯葉にピントを合わせ、シャッターを切りました。わずかにアングルを変え2枚シャッターを切ると枯葉は、はらはらと舞いながら落ちていきました。手持ち撮影でしたが、画素等倍に拡大にして見ると、葉脈までどうにか解像しています。(2018.10.10)
≪作例12≫ツタの絡まる石碑:Zニッコール24〜70mmF4S、焦点距離70mm、F4・1/160秒、ISO 100(画像をクリックすると画素等倍でも見られます)
≪作例12≫ツタの絡まる石碑:Zニッコール24〜70mmF4S(焦点距離70mm、F4・1/160秒、ISO 100)。少し明るいところでツタの絡まる石碑を撮影。石肌がきれいに緻密に描写されているのが確認できます。(2018.10.10)
≪作例13≫落ち葉、石山寺にて:Zニッコール24〜70mmF4S、焦点距離70mm、F4・1/200秒、ISO 100(画像をクリックすると画素等倍でも見られます)
≪作例13≫落ち葉、石山寺にて:Zニッコール24〜70mmF4S(焦点距離70mm、F4・1/200秒、ISO 100)。解像度が高いレンズだけにこういう被写体が向いています。(2018.10.17)
≪作例14≫石山寺山門:Zニッコール24〜70mmF4S、焦点距離70mm、F4.5・1/320秒、ISO 100(画像をクリックすると画素等倍でも見られます)
≪作例14≫石山寺山門:Zニッコール24〜70mmF4S(焦点距離70mm、F4.5・1/320秒、ISO 100)。紅葉には早かったですが、逆光の感じがいいです。(2018.10.17)
≪作例15≫かわごえ祭・1:Zニッコール24〜70mmF4S、焦点距離24mm、F7.1・1/200秒、ISO 100(画像をクリックすると画素等倍でも見られます)
≪作例15≫かわごえ祭・1:Zニッコール24〜70mmF4S(焦点距離24mm、F7.1・1/200秒、ISO 100)。屋台と屋台がぶつかり、お互いにエールの交換です。最広角の24mmならではの撮影です。
(2018.10.21)
≪作例16≫夜の新宿裏通り・1:Zニッコール35mmF1.8S、F1.8・1/40秒、ISO 160(画像をクリックすると画素等倍でも見られます)
●Zニッコール35mmF1.8S
≪作例16≫夜の新宿裏通り・1:Zニッコール35mmF1.8S(F1.8・1/40秒、ISO 160)。左上のドクロのお面にピントを合わせましたが、全体的に柔らかな描写となりました。(2018.10.18)
≪作例17≫夜の新宿裏通り・2:Zニッコール35mmF1.8S:F1.8・1/40秒、ISO 250(画像をクリックすると画素等倍でも見られます)
≪作例17≫夜の新宿裏通り・2:Zニッコール35mmF1.8S(F1.8・1/40秒、ISO 250)。ガラス越しの店内もかなりシャープに写すことができました。(2018.10.18)
≪作例18≫集合写真:Z35F1.8S、絞りF11・1/40秒、ISO1100、サイレントモードで撮影(画像をクリックすると画素等倍でも見られます)
≪作例18≫集合写真:Z35F1.8S、絞りF11・1/40秒、ISO1100、サイレントモードで撮影。この日は、カメラ好きが集まる「写真懇話会」の日。最大限集まった時に記念写真を撮るのが習わしで、そこに35F1.8付のZ7を持ち込んだところまでは良かったのですが、あらかじめお決まりの集合写真をセルフタイマー撮影しようと設定をシミュレーションしたはずが、いざ撮影となると最終的なセットができないのです。時間がないので1人抜けてシャッターを押しましたが、お恥ずかしい限りでした。サイレントモードで撮影しましたので、皆さんシャッターが切れていないよと指摘されました。こういう撮影にはサイレントモード撮影は向きませんね。(2018.10.20)
■マニュアルフォーカスレンズでの手ブレ補正セット
≪作例19≫かわごえ祭・2:ヘクトール135mmF4.5(3群4枚構成、1955年製)、SHOTENライカM⇒ニコンZマウントアダプター使用、MF、絞りF5.6・1/400秒、ISO100、AWB(画像をクリックすると画素等倍でも見られます)
かわごえ祭にライカMマウントのヘクトール135F4.5とともにSHOTENマウントアダプターを持ち込みましたが、撮影の途中で妙なことに気づきました。ヘクトール135mmを付けてファインダーで正確なピント合わせをしようと、撮影部分を拡大したのですが、ブルブルと画面が震えてなかなかピントが定まらないのです。
≪作例19≫かわごえ祭・2、ヘクトール135mmF4.5(3群4枚構成、1955年製)、SHOTENライカM⇒ニコンZマウントアダプター使用、MF、絞りF5.6・1/400秒、ISO100、AWB≫ 色が青っぽく見えるのは背景が日陰であるために全体のカラーバランスが崩れたためで、順光の場合の発色は問題ありませんでした。(2018.10.21)
とりあえずその場の撮影は済ませましたが、自宅に帰ってマウントアダプターと複数のレンズを用意して試してみました。その結果わかったことは、純正のマウントアダプターであろうとサードパーティ製であっても、レンズ側に電気信号ピンがないと“ボディ内の手ブレ補正機構”が働かないのです。純正の“マウントコンバーターFTZ”に“AFニッコール80〜300F4-5.6D”を付けると手ブレ補正が働くのですが、非AFのニッコール135mmF3.5を装着するとライツ・ヘクトール135F4.5と同じように手ブレ補正が働かないのです。ボディ側の手ブレ補正の設定の項を見ると、OFF・Nomal・SPとあるのですが、AF対応でないレンズを付けると、純正のニッコールレンズでも手ブレ補正は働かなくなるのです。少し前に使った広角のズミクロン35F2では気づかなかったのですが、ヘクトールの135个箸い焦点距離の長いときには拡大率を上げてファインダーを見るとブルブルと手ブレしているのがもろにわかるのです。
このヘクトール135mmはNZ用マウントアダプターを付けてレンズ先端からZマウント基準面まで約140mm、ニッコール135mmは約105mmです。使ってみるとレンズが長いほうが手ブレは大きく感じるのです。もし可能ならばAFレンズでなくても、手ブレ補正が効くようになっていればいいのにと思い、いろいろ調べていきましたら、工具マークの「レンズ情報手動設定」の焦点距離とF値を設定すれば手ブレ補正機構が働くことがわかりました。ここには20種類のレンズを設定できますが、今回は汎用性があるようにと50F2に仮設定しましたが、これでまずはAFレンズ以外でも手ブレ補正はOKとなりました。
■マウントアダプターを使った時の広角レンズのメカニカルバック
≪写真6≫左から、ズミクロン35mmF2、キヤノン25mmF3.5、沈胴式ズミクロン50mmF2、スーパーアンギュロン21mmF4(画像をクリックすると大きく見られます)
≪写真7≫左:沈胴式ズミクロン50mmF2、右:スーパーアンギュロン21mmF4(画像をクリックすると大きく見られます)
フルサイズミラーレス一眼の楽しみは、マウントアダプター遊びであるというのが私の常日頃からの持論です。そこで、フランジバック16mmというニコンZ7で、マウント基準面からどれだけ出ていても物理的に問題ないのはどんなレンズか調べてみました。まず≪写真6≫を見てください。すべて距離計連動のライカ用交換レンズの後部の写真ですが、スクリューにはMマウントアダプターを付けて、それぞれフィルターを付けて統一してあります。
≪写真6≫は、左からズミクロン35mmF2(〇)、キヤノン25mmF3.5(〇)、沈胴式ズミクロン50mmF2(〇)、スーパーアンギュロン21mmF4(×)。この4本の交換レンズのうち、Mバヨネットの内爪より尻がでていないのはズミクロン35mmF2だけで、残り3本はいずれも尻がでているのです。このうちズミクロン50mmF2は沈胴式ですが、カメラに物理的なダメージを与えないのを確認するという意味であえて沈胴状態にしてあります。これにライカM→NZマウントアダプターを付けて、Z7で撮影可能となりますが、その状態で物理的な損傷を与えないのはどのレンズかということです。その結果は()内に〇×で示しました。
≪写真7≫は、ライカM→NZマウントアダプターを付けた状態でレンズの尻を見てみました。左は、沈胴式ズミクロン50mmF2ですが十分セーフ。右は、スーパーアンギュロン21mmF4ですが、危険でやめた方がいいとなります。この判断基準は、NZマウント爪より出ているか、それ以内に収まっているか、としました。スーパーアンギュロン21mmF4のはみだし部分は約5mmですが、フランジバックは残り10mmぐらいあるから良いのではと考えるのはまったく危険です。このZ7の場合、撮像素子の前にはレンズを外した状態では見えませんが、機械的なシャッターが隠れていて、さらに撮像面の上にはIR/UVカットフィルターなどがあるはずで、それを加えた厚みというか距離があるので、シャッター幕面より前なら物理的にOKとなるのですが、その数値が不明なためZマウント内爪背後よりでていないあたりが安全圏となると判断しました。もしどうしてもというのなら、サイレントシャッターモードにすれば少し出ていてもシャッター幕が隠れていてセーフかもしれないですが、まったく保証の限りではありません。知人のHさんは、ソニーα7R2で見た目はOKと思い、あるレンズを付けてシャッターを切ったら、ガリッと音がしてシャッター羽根とレンズ後部が接触し、購入したばかりのボディで有料シャッター交換となったのです。勇気があるとかないでなく、危ないことは避けるべきです。