■ライカマウント広角レンズの周辺光量の再現性
レンズ交換式の距離計連動デジタルカメラの初期には、APS-Cの画面サイズであってもライカマウントの広角レンズでは周辺光量がフィルム時代とは異なり、極端に落ちたり、マゼンタの色付きがあったりしてカラーではとても使えませんでした。その後フルサイズになっても大きく変わる部分はありませんでした。さらにフルサイズミラーレス一眼の登場がありましたが、その傾向は変わりありませんでした。しかしミラーレスフルサイズ機でも世代を経ることにより、撮像素子が裏面照射タイプなどの新技術の採用などにより、徐々にそのようなことが解消されてきたのです。そしてニコンZ7の登場です。ここでは過去に私としては問題があって、フルサイズミラーレス機には使えなかったレンズ2本をあえてピックアップし、その効果のほどを見てみました。
なお、この周辺光量低下はあくまでも、ニコンZ7の結果でありまして、画素数が少なくなり画素ピッチが大きくなるZ6が発売されるとさらに別の結果が期待されるのです。
≪写真8≫キヤノン25mmF3.5とスーパーワイドヘリアー15mmF4.5ASPH. (画像をクリックすると大きく見られます)
≪作例20≫キヤノン25mmF3.5:F8・1/320秒、ISO100、AWB(画像をクリックすると画素等倍でも見られます)
●キヤノン25mmF3.5とスーパーワイドヘリアー15mmF4.5を使うと≪写真8≫
≪作例20≫キヤノン25mmF3.5:F8・1/320秒、ISO100、AWB。1956年に発売されたライカスクリューマウントの当時としては広角大口径交換レンズでした。1970年代には多くの写真家がこのレンズを使って作品を残した名玉です。Z7での撮影結果は、周辺光量はフィルムカメラ時代よりも多少落ちますが、初期のフルサイズ機では周辺の色付きなどでモノクロでしか使えなかったのが、カラーでも使えるようになったのです。しかもZ7で撮影すると、このレンズ本来の解像度の高さなどの性質が表れ、かつてのフィルムカメラ時代の描写を超えた高解像のいい感じとなりました。
≪作例21≫スーパーワイドヘリアー15mmF4.5ASPH.:F8・1/320秒、ISO100、AWB(画像をクリックすると画素等倍でも見られます)
≪作例21≫コシナ・フォクトレンダースーパーワイドヘリアー15mmF4.5ASPH.:F8・1/320秒、ISO100、AWB。1999年に発売されたコシナの超広角レンズですが、最新モデルはデジタル時代に合わせて光学系は一新されていますが、ここに用意したのは初代のライカスクリューマウントモデルです。当時は、ホロゴン15mmF8が100万円近くもしていたのに対し、10万円未満で、明るく、周辺光量補正フィルターも不要であることなどから、一大ヒット商品となりました。その初代スーパーワイドヘリアー15mmF4.5ですが、ライカ判フルサイズデジタルのライカM9がでたときには、周辺の光量が落ち、しかもマゼンタ味に色付きするということで、モノクロにしか使えないと判断されたのですが、マウントアダプターを使った最新のニコンZ7はどうでしょう。
撮影してみると、周辺でマゼンタ色の色付きもなく、適度な周辺光量の落ち込みはありますがなかなかいい感じです。ただし “なかなかいい感じ”というのはあくまでも個人的な考えであり、コシナの名誉のためにあえて言うならば、このレンズでフィルムを通した限りではこのような周辺減光はほとんどありませんでした。デジタルで使うとなるとダメという人もいるでしょうが、そこは使う人の感覚でしかないからです。
なお、ライカMマウント交換レンズで私が確認できている範囲では、近年のライカM8(2006年)登場頃に発売開始されたズミクロンM-28mmF2、トリエルマー16-18-21mmF4 ASPH.などでは周辺減光も色付きもなく、普通の描写です。
●夕日が?? ミラーレス一眼のマルチパターン測光とカメラ内の色再現
ニコンの一眼レフで一番いいのは、マルチパターン測光だと昔から思っていました。撮影画面を5分割して測光するマルチパターン測光を最初に搭載したのは1983年発売のニコンFAだったのです。この測光方式の出現により、ラチチュードの狭いカラーリバーサルフィルムでも、細かい露出補正があまり必要なく、雪が白く写るなど、当時は感激ものだったのです。その後各社とも多分割測光を採用しましたが、ニコンだけは一味違う測光を行うと思っていました。そして時代はデジタルに変わりましたが、一眼レフのD850までフィルムカメラ時代と大きな違和感なく使ってこれました。今回、Z7を使っていて、少し今までと違うなと思ったのは測光結果です。 特にEVFと背面モニターで見ると逆光の補正がつらい感じがしたのです。そこで、さまざまな場面を撮影しているうちに、夕日を撮ろうとしたのですが、撮影直後のEVFと背面モニターを見ると、全体にシャドー重視で白っぽく見えるのです。夕日が写らない、これは大変だと、マイナスの露出補正をかけてみましたが、−1.3EVかけても従来機の結果とは異なる感じがしたのです。これは、一眼レフの場合にはペンタプリズム脇の受光素子で測るのに対し、ミラーレス一眼では撮像面で測るために、同じマルチパターン測光でも撮影シーンによっては違うのだなと考え、夕日を撮影するのはあきらめたのです。
そして、自宅のパソコンに撮影データをコピーし、わが家のモニターで再現すると確かに今までのマルチパターン測光よりシャドー描写重視的に白く写る感じがしますが、夕日に赤く染まった空はどうにか見えるのです。ところがEVFと背面モニターで見るとどちらも夕日に赤く染まった部分が薄く白っぽく見えるのです。これは液晶が今までと違うのかと考えましたが、EVFはOLED、背面液晶はTFTであり、そこに起因することではなさそうで、むしろ基本的なディスプレー画像出力の色傾向のようです。結局、露出レベルはこのような夕日の時には、今までのマルチパターン測光よりオーバーに記録されますが、それ以上にカメラ側の表示傾向によりシャドー重視で白っぽく見えるのです。このあたりはかなり微妙ですが、実際に撮影していて今までのニコンとは異なりすごく違和感をもったところです。それぞれの結果をお見せします。またかなり乱暴ですが、わが家のモニターとカメラ背面モニターの見え方の差を示しました。
≪写真9≫左:モニターでの再現、右:Z7背面液晶の再現(画像をクリックすると大きく見られます)
≪写真9≫左)モニターでの再現、右)Z7背面液晶の再現。厳密にいえばかなり無茶かもしれないですが、これくらいの差があるのは事実です。
≪作例22≫琵琶湖の夕日・1、Zニッコール24〜70mmF4S:焦点距離70mm、F6.3・1/640秒、ISO 100、AWB、マルチパターン測光(画像をクリックすると画素等倍でも見られます)
≪作例22≫琵琶湖の夕日・1、Zニッコール24〜70mmF4S(焦点距離70mm、F6.3・1/640秒、ISO 100、AWB、マルチパターン測光)。カメラ側のEVFと背面モニターで見るとこのデータで黄金色の発色が消えているのです。(2018.10.17)
≪作例23≫琵琶湖の夕日・2、Zニッコール24〜70mmF4S:焦点距離70mm、F7.1・1/800秒、−1.3EV露出補正、ISO 100、AWB、マルチパターン測光(画像をクリックすると画素等倍でも見られます)
≪作例23≫琵琶湖の夕日・2、Zニッコール24〜70mmF4S(焦点距離70mm、F7.1・1/800秒、−1.3EV露出補正、ISO 100、AWB、マルチパターン測光)。自分でイメージする夕焼けにするためにマイナス露出補正をかけましたが、あまり効果がないことを背面LCDで確認できたので−1.3EV補正で撮影をあきらめたのです。ただ、これはカメラのEVFと背面液晶で見た範囲のことでして、自宅のモニターで見ると、まずまずの結果になっていたのですが、一眼レフマルチパターン測光での夕日撮影には露出補正は不要でした。(2018.10.17)
≪作例24≫サイレントモードでの動体撮影(画像をクリックすると大きく見られます)
●ミラーレス一眼のサイレントシャッター
≪作例24≫サイレントモードでの動体撮影:Z35F1.8S、絞りF13・1/1000秒、ISO3200。サイレントモードで撮影すると、電子シャッターを使用して、シャッター動作音と振動のない撮影ができるのですが、動体では歪みがあるように撮影されることもあります。したがって、大きな動きのある被写体には向きませんが、音楽会や踊りなどで大きく動かない決めポーズなどでは、静かなので大変有効です。この歪み具合は、撮像素子の特性、被写体の走行方向、走行速度、撮影距離など相対的な部分で決まることが多いのです。なお他社ではどうかというと、α7RIIと同程度という印象です。このようなことをローリングシャッター現象とも呼びますが、ミラーレス機全般の今後の課題といえます。
■ミラーレス一眼は本当に小型なの?
≪写真10≫ニコンD3sに同等の35mmレンズを付けた状態で外観を比較(画像をクリックすると大きく見られます)
人間の感覚なんて、きわめてあいまいなものです。連日「ニコンZ7」を持って歩いていると大きく重く感じてくるのです。そして頭の中では、レンズが大きくなったからな、などといつも考えるようになってきたのです。マウント口径が広がり光学性能の向上したレンズは、大きくても、確かにその実力を確認できましたが、まだ手にしたこともない超望遠レンズを付けた場合はどうだろうかなどと考え、撮像面からレンズ先端までを測ると一眼レフもミラーレス一眼も同じではないかなどと夢想してしまうのです。いやそんなことはないと、久しぶりに往年のフラッグシップ機ニコンD3sのほこりを払い、同等の35mmレンズを付けた状態で外観を比較撮影してみました≪写真10≫。確かにミラーレス一眼は小さいのです。とてもレンズがでかいなどとは言えないのです。これには深く反省です。
ちなみにそれぞれの重さは写真の状態で、Z7が約1,040g、D3sが約1,610gでした。計量にあたっては、わが家の料理用ハカリは最大1,000gまでなので、どちらの機種もハカリで計量が可能な限りばらして行いました。それでも、D3sはレンズとバッテリーを外しても約1,200gありました。実際使用時は両機種とも、レンズにプロテクトフィルター、レンズフード、ストラップを装着するので、確実に100gぐらいは増えそうです。
結局、カメラスペックとして画素数や細かいことを除き、小さく軽くても、確実に性能アップしているので、やはり「写真」は技術の進歩をもろに受ける表現技法だと思うのです。まぁ、比較の仕方はさまざまですが、往年のフルサイズ一眼レフフラッグシップ機と最新のフルサイズミラーレス一眼フラッグシップ機の比較でした。ミラーレス一眼は本当に小型・軽量であることを実感した次第です。
■これでおしまい
あれこれ書き連ねたらきりがありません。いろいろ使ってわかりましたが、操作系はやはりユーザーが自分からカメラに歩み寄っていかなくてはならないのだと、つくづく感じました。ただいままでなかった機能としては、タッチセンサーに象徴されるように表示パネルが単なる表示でなく、レリーズ機能やセットアップ機能などを持つようになったことです。このあたりは、普及タイプの一眼レフあたりでかなり実績あると思うのですが、単なるグラフィック表示だけでは済まなくなったのも確かなことですので、これからも直感的にわかるようなGUIの設計はますます大切だと思います。
今回の私の使用記でのランダムな作例は、ざっと見ていただいた範囲ですが、ほとんどが風景写真だったり、静物写真の拡大版みたいなもので、動体撮影はしていません。もしスポーツカメラマンが高速連写で使ったらどうなのだろうか、スナップの専門家が使ったらどうなのだろうかと思うわけです。
ただこれだけシャッターを切っても、私にはXQDカードである必要性は感じませんでした。XQD専用だと≪写真2≫に示しましたが、これだけのアクセサリーがないと使えないのです。ちなみにこれだけで安売り店でも約25,000円もするのです。さらに必要に応じ、これだけのアクセサリーをパソコンに加えて、持ち歩かなくてはならないのです。やはりカメラを企画する人は、わずかな数値性能アップ一辺倒でなく、多くの写真を撮る人の実作業がわからなくてはいけないと思うし、そのあたりがカメラの各部機構、操作性、さらには交換レンズなどシステムの構築にも大きく関連してくるのだと思うのです。
ミラーレス一眼が今後の主流になるだろうと思いますが、記録メディアは1スロット対応でも、SDカード仕様かXQDカード仕様かを選択させるような選択肢はなかったのでしょうか。フルサイズミラーレス一眼を、誰に向けて作って、誰に売っていくのかが、いまひとつ見えないというのが正直な印象でした。 (^_-)-☆
(追記) ニコンは去る1月に開かれたアメリカラスベガスで開催されたコンシューマ・エレクトロニクス・ショーにてニコンZ7、Z6をファームウエアアップで「瞳AF」に対応できるようにすると発表しました。