≪写真1≫ 左から、サムヤンAF35mmF2.8FE、シグマ45mmF2.8DG DN、タムロン17〜28mmF2.8 Di III RXDで
9月6日に発売された「ソニーα7R IV」は、35mm判フルサイズでは最高の6,100万画素です。画素数の増えた4世代目のα7Rボディはどんな写りを示すか、ソニーFEマウント用でAF対応のサードパーティレンズで使って試してみました。カメラの実力が活かされるのか、レンズの実力が発揮されるのか、いつものように使ってみました。
取り上げたレンズは、いずれもミラーレスフルサイズ専用設計で、≪写真1≫で左から、サムヤンAF35mmF2.8FE、シグマ45mmF2.8DG DN、タムロン17〜28mmF2.8 Di III RXDです。このうちサムヤン35mmF2.8は2017年8月の発売と少し時間が経っていますが、シグマの45mmF2.8 は2019年7月の11日に発表されたシグマfpと同時に発表され、まずはソニーマウントで発売というわけです。タムロン17〜28mmF2.8はタムロン最新のモデルで、やはりこの7月発売ですが、予想を大幅に上回る予約で生産が追い付かないとお詫びをだすほどの人気レンズです。すでにどちらも発売されてから時間が経過していますが、改めて6,100万という高画素で使ったレポートです。
とはいっても、ここは「ソニーα7R IV」が発売されたことによるレポートですので、まずはボディそのものから見てみましょう。α7R IVは何が新しいのか、ソニーによれば『ライカ判で初の有効画素数約6,100万画素、最高約10コマ/秒高速連写、高速・高精度AFを小型ボディに凝縮したフルサイズ一眼』ということになり、このためには『新規シャッターユニット、衝撃吸収ダンパーや進化した手ブレ補正など、微細な振動も許されない高解像撮影を支えるために細部にわたって見直しました』というわけです。
高画素だとデータ量が増えるので連写速度は厳しくなるでしょうし、さらにボディ内でシャッター動作により振動があるとカメラブレを起こすことにもなり、いまやあたりまえの考え方ですが、初期の高画素タイプ一眼レフではさらにミラーショックなども加わり、高画質を達成するのに苦労した部分です。また低感度時には約15段のダイナミックレンジが得られるというのは裏面照射タイプCMOSと画像処理エンジンの能力であり、5.5段の補正効果を発揮する光学式5軸ボディ内手ブレ補正機構などと併せて、カメラとしての機能進歩は地味ではありますが、ユーザーとしてはその地味な部分の進化が大いに気になるわけでして、以下それぞれ3社のレンズを使っていくなかでレポートします。
≪写真2≫ 左:α7RIV銘板、右:SDカードスロット
≪写真2:左≫ 基本的にα7シリーズのデザインは正面から見る範囲では大きく異なることはなく、最新のα7RIVであることを明記してあるのはボディ左肩の上の銘板です。表面の加工はざらっとした感じで、ホールディング性も良く、グリップするとわずかにボディが厚くなったのがわかります。
≪写真2:右≫ SDカードスロットは2カ所。上がスロット1で、下がスロット2です。ここでの注目点は、ストラップの文字が刺繍になったことです。従来ソニーのカメラストラップはプリント文字しかなかったのですが、刺繍を採用することになったのは大きな違いです。
さっそく使ってみると、まず気づいたのが、ボディにレンズを脱着するのがかなり固いのです。実は前から思っていたのですが、α7Rから、α7R II、α7R III、α7R IVと進化するごとに徐々に固くなっているのです。この間にα9も使いましたが、α7R IIIとα7R IVの中間ぐらいの感じでした。しかし、今回使用したレンズをα7R IVに付けるといずれもかなり固く、両手でボディとレンズをしっかり握っても取り外すには僕自身の握力が弱くなっていることもありますが、かなりの力を要します。これはボディの剛性を増すことと同時に公差を狭めているかもしれませんが、α7R IVのレンズ着脱の固さは半端じゃありません。もちろん交換レンズメーカーによっても若干その強弱は異なり、サムヤン→ タムロン→ シグマの順で固くなります。ここにたまたま手元にあるソニー純正(CZ16-35mmF4ZA)を入れると、ソニーがトップに柔らかいのですが、これは私の手元にあるレンズだけのことではないと思うのです。いずれにしてもα7R IVでのレンズ交換には力がいります。
≪写真3≫ 左:タムロンをボディに装着、中:マウント基部。右:専用の花形フード
●タムロン17〜28mmF2.8 Di III RXDで使う
タムロンのソニーFEマウント用レンズとして、2018年5月に発売された「28〜75mmF2.8 Di III RXD」に引き続くシリーズレンズともいえるもので、従来このクラス前後のズームレンジを持つソニー・ツァイスのバリオテッサーFE16〜35mmF4ZAから比較すると、ワイド・望遠端とも少し抑え気味ですが、ズーム全域でF2.8と大口径でコンパクト、しかも軽量なことには驚きます。
≪写真3≫ 左:ボディに装着、中:マウント基部を見ると、外周のすぐ内側に防塵・防水のためでしょうか黒いゴム製のひだがついています。右:専用の花形フードを付けてみました。フルサイズ用とはいえ、小型であるためにか撮影時は苦になりませんでした。
≪作例1≫ タムロン、焦点距離:28mm、F5.6・1/640秒、ISO100、AWB
■いつもの英国大使館正面玄関
この場所の撮影は定点観測的に行っていて、春夏秋冬を通して青空の日、朝10時から10時半ぐらいの間に、英国大使館の正面玄関屋根中央直下のエンブレムにピントを合わせ、絞りF5.6に設定して撮影しています。撮影にあたっては、従来は三脚を立てていましたが、昨今のカメラではこのような状況下では手ブレすることもなく、手ブレ補正機能を含めたカメラの性能を知るということから、最近はすべて手持ちで撮影することにしています。
≪作例1≫ 焦点距離:28mm、F5.6・1/640秒、ISO100、AWB。前日は雨、午後から曇りの合間の晴れ間ですが、天候には恵まれました。まずは、17〜28mmの最望遠側焦点距離28mm時を乗せました。直線性も良く、この画面からはディストーションなどまったく感じさせませんし、周辺の光量が低下するというのもありません。画面の各部を見てみてもこれといった難点はありません。左側の黄色いポールの発色が幾分濃く感じますが、これはソニーの一貫した色づくりによるものです。
上の写真を画素等倍まで拡大すると、広角だとこれから紹介するシグマとサムヤンは撮影倍率が高くなりますので、より解像感が高く感じるかもしれませんが、撮影距離が同じなので、そのようなことになります。この等倍画面からわかることは、6,100万画素にもしっかりレンズ性能がついていってることで、エンブレム周辺壁石の調子も飛んでなくきれいに描出されているのは、ダイナミックレンジが15段と広いといっているα7R IVならではの性能が多分に影響しているようです。
≪作例2≫ タムロン、焦点距離:17mm、F5.6・1/640秒、ISO100、AWB
≪作例2≫ 焦点距離:17mm、F5.6・1/640秒、ISO100、AWB。レンズに目盛られている、広角側17mm、20mm、24mmも撮影しましたが、ここでは28mmに加え17mmときを紹介します。露出は同じ場面ですので変わりません。画素等倍まで拡大すると、エンブレムの大きさから撮影倍率の違いが分かります。
≪作例3≫ タムロン、ホテル、焦点距離:17mm、F6.3・1/160秒、ISO 100、AWB
●ランダムな被写体で
≪作例3≫ ホテル、焦点距離:17mm、F6.3・1/160秒、ISO 100、AWB。 最広角端の17mmでの撮影ですが、青空の部分も光量落ちはないし、ほぼ逆光で、露出の設定の仕方にもよりますが、右側ビル壁面のハイライト部分は飛んではいますが、補正なしの状態でも玄関ロビーから出てきた人もつぶれなく描出され、ビル壁面左側もきれいに描出されています。左壁面の奥の方を画素等倍まで拡大するとわずかに色収差の影響がでていますが、アウトフォーカス部分でもあり、実用的にはまったく無視できるレベルです。
≪作例4≫ タムロン、半蔵門の御屋敷、焦点距離:28mm、F7.1・1/200秒、ISO 100、AWB
≪作例4≫ 半蔵門の御屋敷、焦点距離:28mm、F7.1・1/200秒、ISO 100、AWB。中央の樹木にピントを合わせていますが、拡大すると1枚1枚の葉が必要十分に分離して見えます。
≪作例5≫ タムロン、ノウゼンカズラ、焦点距離:28mm、F4.5・1/80秒、ISO100、AWB
≪作例5≫ ノウゼンカズラ、焦点距離:28mm、F4.5・1/80秒、ISO100、AWB。 ビルの飲食店の店先に咲くノウゼンカズラの花です。このレンズは、ワイド側で19cm 、テレ側で 26cmの近接撮影ができるというもので、かなりマクロ的な撮影もできます。このノウゼンカズラの場合には、28mmで撮影ですが、最も近接できるところまで近づいてこの範囲が写りますから、マクロレンズ的な使い方も十分できました。雌しべを画素等倍に拡大すると、花粉粒がきれいに分解して見えるほど解像力は高いです。
≪作例6≫ タムロン、クヌギのどんぐり、焦点距離28mm:F8・1/320秒、ISO100、AWB
≪作例6≫ クヌギのどんぐり、焦点距離28mm:F8・1/320秒、ISO100、AWB。逆光状態で木のテーブルの上に並べた中央のどんぐりにピントを合わせてみました。フルピクセルで画素等倍までに拡大すると左背後の葉の葉脈まで描出される解像度をもっていることがわかり、背後の草のボケ味もクセがなく、テーブルのエッジの直線性もまずまずで好感持てる描写です。ボディの側から見ると、シャドー部も拡大するとわかりますが、つぶれていなく低感度時は約15段のダイナミックレンジが得られるというのは、このあたりをいうのでしょう。
≪作例7≫ タムロン、ほっこり広場にて、焦点距離24mm:F6.3・1/160秒、ISO100、AWB
≪作例7≫ ほっこり広場にて、焦点距離24mm:F6.3・1/160秒、ISO100、AWB。夏草の生い茂る中のベンチとテーブル。人はいませんが、人の温もり感じさせる場所です。画像を拡大して見ると、周囲の草1本1本が解像している均質のシャープさには驚きます。
≪作例8≫ タムロン、八国山のきのこ、焦点距離28mm:F2.8・1/120秒、ISO50、AWB
≪作例8≫ 八国山のきのこ、焦点距離28mm:F2.8・1/120秒、ISO50、AWB。 山の麓を歩いていたら、切り株にきのこが自生していたのでクローズアップ撮影。何も考えずにフレーミングとピントだけを確認しましたが、ISO50なのにブレずに高解像に撮影できました。まさにカメラとレンズの合体で撮影できたというわけです。
≪作例9≫ タムロン、国宝正福寺、焦点距離:28mm、F8・1/80秒、ISO 100、AWB
≪作例9≫ 国宝正福寺、焦点距離:28mm、F8・1/80秒、ISO 100、AWB。かつて画素数が少なかった頃には屋根に吹かれた杉板の重なった目にモアレが必ず発生した時期もありましたが、今回のα7RIVとの組み合わせでは、タムロン、シグマ、サムヤンのいずれも目立ったモアレの発生はありませんでした。このクラスの画素ピッチになると光学ローパスフィルターは不使用でよくレンズ性能そのものを引き出すことになります。
≪作例10≫ タムロン、わが町の富士山頂上のケヤキ、焦点距離26mm:F6.3・1/160秒、ISO50、AWB
≪作例10≫ わが町の富士山頂上のケヤキ、焦点距離26mm:F6.3・1/160秒、ISO50、AWB。同じ場面をかつて、CZ16〜35mmF4で撮影したことがありますが、中央ケヤキ大木の右下枯れ木の枝が色収差の影響か赤くなりました。カメラはα7RIIでしたが、α7RIVとタムロン17〜28mmF2.8 Di III RXDの組み合わせではそのようなことはありません。拡大して見ると木々の葉はきれいに分離して見えることは当然のことでした。
≪作例11≫ タムロン、ご自身の作品「Player and Alter」の前に立つアーティスト小野サボコさん、焦点距離17mm:F2.8・1/30秒、+0.7EV補正、ISO500、AWB
≪作例11≫ ご自身の作品「Player and Alter」の前に立つアーティスト小野サボコさん、焦点距離17mm:F2.8・1/30秒、+0.7EV補正、ISO500、AWB。 表面を細かく凹凸に加工されたアルミ箔の前に立っているので、明らかにアンダーになるだろうと+0.7の補正を加えてみましたが、露出補正なしでも拡散光状態なので反射が多いためでしょうか顔はつぶれることなく、まずまずの結果が得られました。(Roonee 247 fine artsにて)
≪作例12≫ タムロン、夜の新宿ゴジラ通り、焦点距離:28mm、F2.8・1/15秒、ISO 50、AWB(都合により下1/4はトリミングしています)
≪作例12≫ 夜の新宿ゴジラ通り、焦点距離:28mm、F2.8・1/15秒、ISO 50、AWB。カメラ操作に慣れてないので、いつの間にかISOオートにしていたはずが、ISO50にマニュアルセットされていました。気づいた時には一瞬すべて撮影し直しかと思いましたが、ところがみごとにブレないでピントが合っているのです。ということでゴジラにピントを合わせてありますが、画素等倍にしてみるとびっくりするほどにシャープなのです。手ブレ補正機構の働いたカメラもすごいし、レンズもすごいといったところです。左の中央には海の家(かつてはマリンの家)と書かれた看板が見え、当時のマスターKさんの写真もあります。縁があって何度か通いましたが歌舞伎町にも40年も変わらない店があるのには驚きました。
ここにはタムロン17〜28mmF2.8 Di III RXDで撮影の代表的な作例だけ掲載しましたが、使っていてズーム全域でF2.8という性能をもち、小型・軽量で描写特性も良いなど、素晴らしく好感を持てるレンズです。今回このレンズをα7RIVで使うと公言しましたら、2人のプロカメラマンから声かけられました。1人はすでに所有されていて、明るくても小型で、描写も良く安いからいいレンズだというのです。もう1人は女性でAPS-Cのボディで使いたいというのです。APS-Cで使うと25.5〜42mmレンズ相当の画角となるわけですから、それはそれで使いやすいわけで、小型ズームレンズならではの発想でしょう。とはいっても、すべてがベストかというとそうではなく、ズームレンズとして広角・望遠端の歪曲はわずかながらあるのも事実です。ただこのような場面に遭遇するのはきわめて少なく、日常の撮影では気にならない範囲です。いずれにしても、この時期注文待ちという現実を垣間見た気がします。