≪写真4≫ シグマ、α7R IVボディに装着
●シグマ45mmF2.8DG DNで使う
昨今のシグマレンズでは、Artレンズが多く知られ人気ですが、このSIGMA 45mmF2.8DG DNは 、“Contemporary”というグループに属するレンズで、シグマによると『最新のテクノロジーを投入、高い光学性能とコンパクトネスの両立で、幅広い撮影シーンに対応するハイパフォーマンス・ライン』だそうで、Art、Sportsなどのラインに比べると性格が少しわかりにくいですが、コンテンポラリーの意味からすると現代的なとか言うことになるのでしょうか。このレンズは7月11に発表したシグマ初のベイヤー方式フルサイズセンサーを搭載したライカLマウント仕様の「シグマfp」と同時に発表されたもので、ソニーマウント用としてfpボディより先に発売されたのです。
≪写真4≫ α7R IVボディに装着。レンズ先端のローレットはマニュアルフォーカスリングで、その左側にはAポジション付きの絞りリングがあります。絞り値はF2.8〜22までで、1/3刻みでクリックストップが効くのです。フードは約1mm厚のアルミ金属で、外側は平目のローレット加工が施され、内側には反射防止の溝が円周状に刻まれています。装着は位置合わせして45°の回転でクリックストップし、取り外しボタンはなく、単純にその逆回転だけで行え、ひっくり返してそのままレンズ本体にかぶせて収納できるのは楽です。
≪写真5≫シグマ、左:カレンズ左側面のAF/MF切替えのフォーカススイッチが。右:マウント基部
≪写真5≫ 左:カメラを構えてレンズ左側面にはAF/MF切替えのフォーカススイッチがあり、その上にはコンテンポラリーを示すcのマークが銀色に輝いています。右:マウント基部外周のすぐ内側には防塵・防水のためのシール材として黒いゴム製のひだがついています。
ご覧のように、レンズ外観からはオールメタル仕上げでメカそのものの感じで、直線を主体にして仕上げられています。このうちレンズ側のAポジション(AUTO、AE)と1/3段刻みの絞りリングは、ボディ側のモードダイヤルをA(絞り優先AE、マニュアル露出)にセットした時に機能し、プログラムAE、シャッター速度AEに設定の場合には絞りリングはどの位置にあってもボディ側から制御されます。
≪作例13≫ シグマ、焦点距離:45mm、F5.6・1/800秒、ISO100、AWB
■いつもの英国大使館正面玄関
撮影はレンズを手にした日が遅く、タムロンとは別の日に撮影しましたので微妙に異なりますが、天候、時間、絞り値、フォーカスポイントなどすべて同じです。
≪作例13≫ 焦点距離:45mm、F5.6・1/800秒、ISO100、AWB。午前中は曇りの予報でしたがうまく晴れて青空となり、午後から曇りとなりましたが撮影の天候には恵まれました。画素等倍まで拡大した画像は、すでにタムロンの項で述べていますが、焦点距離が異なると撮影倍率が異なるので、焦点距離が長いほうが解像的には有利です。さてこの解像度は、過去同一条件で撮った中ではトップクラスの画像となりました。もちろんα7R IVの6,100万画素と45mmF2.8DG DNレンズのなせる業だと考えますが、過去の例からするとこの条件を超えているのは、シグマのクアトロHと35mmF1.4DG HSM Artであるというのもなんか皮肉なものです。このあたりの評価にはそれぞれ考えがあるでしょうが、「ライカに始まりライカに終わる」の他機バックナンバーを引き出してもらえれば幸いです。
■ランダムな撮影
さてこのレンズはシグマホームページのSEIN・大曽根語るで、描写として『ボケを美しくなだらかにするには球面収差が鍵となる。光学設計者からは、単に球面収差を「補正」するのではなく、球面収差を明確に残しつつしかも高度なコントロールを行い、特にボケが顕著に出やすい中〜近距離では明確に球面収差によるフレアを発生させ像を滲ませる、という手法が提案された』となっていいます。絞り効果を効かせなく絞り開放でフレア成分が多いというと、私が知る限りでは過去に2本のレンズがあります。1本は、ヘクトール73mmF1.9(3群6枚構成、1932年)、もう1本はメディアジョイSOFT type1、90mmF2.8(1群1枚構成、シグマが設計製造したとメディアジョイから聞いています)の2本です。
この2本は、いずれも開放で使うとフレアがバリバリでボケボケの感じなのですが、ところが細部を拡大すると絞り開放でも素晴らしく解像力が高いのです。つまりどちらもソフトフォーカス系、絞り込むことによって、通常のレンズ描写になるというのですが、シグマの45mmF2.8DG DNでは、撮影距離が短いとフレアが発生し、0.7〜1mあたりから解像の高いコントラストある画像が得られるというのです。絞り効果でなく、撮影距離によってフレアが制御される設計だというのが、クラシックレンズでなく、現代のレンズであるというわけです。レンズ設計の細かいことはわかりませんが、像面の湾曲にも関係あるのではということもありそうですが、まさにコンテンポラリーな現代レンズなのでしょう。そのあたりを念頭に置き、さまざまな場面で撮影した写真をお見せしましょう。
≪作例14≫ シグマ、夕暮れの新宿モード学園:焦点距離45mm、F2.8・1/50秒、ISO160、AWB
≪作例14≫ 夕暮れの新宿モード学園:焦点距離45mm、F2.8・1/50秒、ISO160、AWB。絞り開放場ですが、画素等倍に拡大して見ても、モード学園ビルの窓の輪郭もしっかりとして解像しています。とはいっても固い描写というわけではなく、全体的には柔らかな調子再現という感じです。
≪作例15≫ シグマ、西武園大観覧車、焦点距離:45mm、F8・1/400秒、ISO100、AWB
≪作例15≫ 西武園大観覧車、焦点距離:45mm、F8・1/400秒、ISO100、AWB。さすが絞りF8まで絞られるとシャープになります。解像力は絞り開放より数段絞ったF8、F11あたりで最も高くなるといった、昔からの法則通りです。観覧車の1つ1つを画素等倍まで拡大して見ると、中にいる人が識別できるほどの解像力です。6,100万画素とレンズの組み合わせででてくる解像性能です。
≪作例16≫ シグマ、ボケの感じを見る、焦点距離45mm:F3.5・1/80秒、ISO100、AWB
≪作例16≫ ボケの感じを見る、焦点距離45mm:F3.5・1/80秒、ISO100、AWB。背景のボケ味を調べるために右の花のつぼみにピントを合わせ、撮影距離は約30cmだったと思います。確かに、撮影距離が短い部分は描写が柔らかいようです。背後の女性は、柔らかなボケにとけ込んでしまいました。
≪作例17≫ シグマ、サルスベリの花、焦点距離45mm:F6.3・1/250秒、ISO100、AWB
≪作例17≫ サルスベリの花、焦点距離45mm:F6.3・1/250秒、ISO100、AWB。サルスベリの花が草の上に落ちていました。コンパクトやミラーレスのコントラスト検出AF方式のカメラだと、通常このような場面では花にピントがいかずに、背景に合うのですが、花びらが大きかったせいかしっかりとピントを合わせることができました。かなり近接していますが、合焦した部分はシャープです。
≪作例18≫ シグマ、枯れ木にツタ、焦点距離45mm:F5.6・1/200秒、ISO100、AWB
≪作例18≫ 枯れ木にツタ、焦点距離45mm:F5.6・1/200秒、ISO100、AWB。 枯れ木に絡まったツタにピントを合わせ、背景からぐっと浮き上がった感じを狙ってみました。ピントが合った場所のシャープさはなかなかですが、背景の樹木のボケ具合を見てください。特に葉の間から見えるボケは、木漏れ日を背景に絞り開放、近距離でフレアを発生させたポートレイト撮影などに良いかもです。
≪作例19≫ シグマ、クヌギのどんぐり、焦点距離45mm:F7.1・1/320秒、ISO100、AWB
≪作例19≫ クヌギのどんぐり、焦点距離45mm:F7.1・1/320秒、ISO100、AWB。まったくの逆光状態ですが、同じ場面を撮ったタムロンと比較すると鮮鋭度は別にして、発色とコントラストがわずかに違うという感じですが、焦点距離の違いから背景の草のボケ具合が大きく異なります。
≪作例20≫ シグマ、スタジオBT深谷さん、焦点距離45mm:F2.8・1/60秒、ISO100、AWB
≪作例20≫ スタジオBT深谷さん、焦点距離45mm:F2.8・1/60秒、ISO100、AWB。中古カメラ市で、今若い人に人気だというフィルムカメラを持ってもらいました。近距離で球面収差を残した描写とは、こういう場面をいうのでしょうか。このカットだと、絞り開放で、前ボケも、後ボケもわかります。ここまで人物を近接すると、カメラが自動認識して瞳AFとなりました。実際は、向かって左の目を認識し合焦しています。ピントから外れた髪は柔らかな描写をしています。ボケはきれいでも顔は見にくいなんて言わないでくださいね。
≪作例21≫ シグマ、国宝正福寺、焦点距離:45mm、F8・1/80秒、ISO 100、AWB
≪作例21≫ 国宝正福寺、焦点距離:45mm、F8・1/80秒、ISO 100、AWB。かつて画素数が少なかったころには屋根に吹かれた杉板の重なった目にモアレが必ず発生しましたが、今回のα7RIVとの組み合わせでは、タムロン、シグマ、サムヤンのいずれも目立ったモアレの発生はありませんでした。それぞれの画面を拡大すると解像性能が良くわかります。
≪作例22≫ シグマ、夜の新宿ゴジラ通り、焦点距離:45mm、F2.8・1/20秒、ISO 50、AWB(都合により下1/4はトリミングしています)
≪作例22≫ 夜の新宿ゴジラ通り、焦点距離:45mm、F2.8・1/20秒、ISO 50、AWB。 やはりゴジラにピントを合わせていますが、ゴジラ部分を画素等倍まで拡大すると、レンズの解像力の実力はわかるところです。 ISO感度設定50は、愛嬌です。(都合により下1/4はトリミングしています)
≪作例24≫ シグマ、口径食を見ました、焦点距離:45mm、F2.8・1/13秒、−1.7EV補正、ISO 50、AWB
≪作例23≫ 口径食を見ました、焦点距離:45mm、F2.8・1/13秒、−1.7EV補正、ISO 50、AWB。レンズの焦点距離を考えると致し方ない口径食でしょうか。こちらもISO感度設定50は、愛嬌というかケガの功名です。
シグマの45mmF2.8DG DNは、使い方は簡単ですが、設計者の意図を汲んでレンズ特性を生かして使いこなすには難しいレンズです。今までレンズは絞り開放でどれだけシャープかなどで評価してきましたが、そうではなく、このレンズは撮影距離によって球面収差が発生しホンワリとした描写がされるというのですが、ピントはあくまでも合わせた所はシャープにというのがコンセプトなのです。
実はそのあたりに関しては、すべて撮影し終えて原稿を起こすときに初めて読んだシグマ商品企画部長の大曽根康弘さんが執筆する、同社Web情報誌SIENの「大曽根、語る」で初めて知ったことなのです。なぜ使い終えてから読んだかというと、特定の商品に先入観を持って使いたくないからで、レンズ評価も自分の撮影結果だけで、他の人のレポートは極力読まないようにしています。改めてここで取扱説明書を読んでみるとそのような光学特性には一切触れられていないのです。これはもったいないです。製品名にそのような機能を示す名称を入れ込むとか、取扱説明書に何らかの解説がないと設計者の真意が伝わらずに混乱します。私の友人のレンズグルメの達の多くは、絞り開放でどのような描写をするかですべてを判断している人が多いので、簡単にダメだしされてしまう恐れがあります。
また、近距離ソフトの描写はどんな被写体を想定したかですが、SIENの「大曽根、語る」にはテーブルの上の花が作例として出ていましたので、このあたりのテーブルフォトを狙ったのだなとわかります。今回、私のランダムに撮影した作例の中から開発意図に見合うものを探し出しましたが、お眼鏡にかなったかな?と思うのです。もともとはシグマfp用のレンズかとも思うのですが、設計時にはソニーのゾナーT*FE 35mm F2.8 ZAをかなり意識したものであったようです。このあたりは、フルサイズミラーレス後発のニコン、キヤノンにはないスペックのレンズなのです。数の上ではソニー用かもしれませんが、ニコン、キヤノン用も待ち望まれているはずですから、一層の奮起をと思うわけです。せっかくだから、ネーミング考えました「シグマ45mmF2.8DG DN nsf」なんてどうですか? 私は何も権利を主張しません、ご自由に。
≪写真6≫ サムヤン、ソニーα7R IVに装着
≪写真7≫ サムヤン、左から専用フード、本体、専用ケース
≪写真8≫ サムヤンのマウント部
●サムヤンAF35mmF2.8FEで使う
ケンコー・トキナーが発売する「SAMYANG 35mmF2.8FE」はシグマ45mmF2.8DG DNがそうであるようにソニーのゾナーT*FE 35mm F2.8 ZAをかなり意識した設計であることは間違いないようです。そのことは同じ焦点距離・開放F値でありながら、さらなる薄型のパンケーキタイプを目指したことや軽量であることなどからわかります。
≪写真6≫ ソニーα7R IVに装着。
≪写真7≫ 左から専用フード、本体、専用ケース。このレンズのおもしろいところは、フィルターがフード(40.5mmΦ)と本体(49丶機砲2カ所に取り付けられることで、堅牢ながら妙に軽量な専用ケース(右端)が付属してくることです。また軽量を目指したことからでしょうが、レンズの鏡筒、フードなどはすべて樹脂製です。レンズ鏡胴のターレットが刻まれた部分がマニュアルのフォーカスリングであり、カメラに装着した状態で外観的に特に違和感あるところはありません。
サムヤンのマウント部≪写真8≫ を見てみると、マウント結合部は梨地にアルマイト加工された金属で、さらに電気接点が他社より2個多い12個となっているのです。考えるところ、たぶん余分の接点2個は独自なものでレンズのファームウェア書き換えなどに使われるものだと考えますが、この2年間でその必要性は感じたことはありません。