|
写真1 左からエルマー90mmF4のヘリコイド鏡胴、右へエルマー90mmF4の光学部分、MJ SOFT type1、MJ SOFT type2、それぞれのレンズ部分をエルマー90mmF4のヘリコイド鏡胴部の部分先端にねじ込んで使う。 |
ライカ用のソフトフォーカスレンズとしては、タンバール90mmF2.2があることはよく知られている。ところが希少なため高価で、とても僕には手の届くレンズではない。そこで、第8回では軟調描写を示すとされるもう少し身近な「ヘクトール73mmF1.9」を紹介したが、ヘクトールの軟調描写は僕の知るタンバールを含めたソフトフォーカスの描写特性とは明らかに違うのである。確かにハイライト部と画面全体にフレアが発生して軟調な描写だが、絞りF1.9開放で撮影した
女性のポートレイトをご覧になればおわかりいただけるように、きわめて高解像で、階調性豊かなつながりのある描写を示すのだ。その緻密な描写特性は、いろいろなレンズを使ってきた僕にとっても目からウロコで、ただただ驚きでしかなかった。
そこでもう少し僕のイメージにあった軟調描写を示すレンズはないだろうかと思いだしたのが「メディアジョイ・ソフトフォーカスレンズ」である。
●medeiajoy-softfocus 90mmF2.8
メディアジョイ・ソフトフォーカスは90mmF2.8で、2種類用意されている。その違いは、外観からすると「A031」とシリアルがつけられたほうは白鏡胴を基調としてシングルコートレンズ、「B116」とつけられたほうはII型で黒鏡胴を基調としたマルチコートレンズである。つまりII型のほうが後から作られた新型だ。光学系は微妙には異なり、どちらも平凸の1枚構成であることは変わりないが、レンズポジションが被写体側に数仆个団イ辰討い襪里脳忘爐曲率が違うのだろう。
メディアジョイ・ソフトフォーカスの最大の特徴は、レンズとして発売されているが、ピントを合わせるヘリコイド部分はライカのエルマー90mmF4のヘリコイドを使う。ご存じのようにエルマー90mmF4は、先端のレンズブロック部分が取り外し可能で、ビゾフレックスなどを介すれば接写などに活用できるが、逆に残されたヘリコイド部分にメディアジョイ・ソフトフォーカス90mmF2.8をねじ込んで使うというアイディアものだ。つまり、既存のライカ用エルマー90mmF4のヘリコイドを流用するために、廉価に提供できることになる。価格はどちらも20,790円で、好みで求めることになるのだろうが、外観カラーとコーティングの違いだけの情報でどちらがよいか、選択するのは難しい。【写真1】
ちなみにエルマー90mmF4の市場価格だが、1万円台からあるので、MJソフトフォーカスと両方買いそろえても、距離計連動のソフトフォーカスレンズがその値段で買えるとなれば、かなりのお買い得ということができる。そして何よりもタンバールと焦点距離が90mmと同じなのはうれしい。ただしタンバールとはレンズ構成がまったく異なるので、描写もそれなりのものではないだろうかと推測できるが、価格的にも何十分の一というのが、最も興味をそそる点だ。
さて光学系を少し詳しく見てみよう。
|
図1 |
【図1】がMJソフトフォーカスの光学系だが、平凸レンズ1枚の単純な構成だ。似たようなタイプとしては、ベス単(Vest Pocket Kodak)のレンズがある。どちらも1枚の単玉で被写体側に絞りを設けているので似ているが、
ベス単のレンズは貼り合わせ色消しの単玉で、さらにMJソフトフォーカスが平凸であるのに、ベス単は三日月形のメニスカス凸レンズである。このあたりは実際に写してみなくてはわからないが、一般的にソフトフォーカスレンズは、色収差と球面収差の発生を利用して軟調描写を得るが、色収差はカラーの描写に対して特定の色が誇張されたりして向かないとされており、カラー写真でも使えるソフトフォーカスレンズの場合には球面収差発生タイプが良いとされていて、実際、近年に発売されたソフトフォーカスレンズはほとんどが球面収差発生タイプである。最近、ソフトフォーカス描写のひとつとして戦前に流行ったベス単のフードを外した写真が一部に注目されているが、いずれにしても、ベス単は同じ単玉でも色消しされているので、MJソフトフォーカスとはもうひとつ違った描写特性を示すはずだ。