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写真2 
絞り穴。左がF11で、右がF5.6、何もつけないとF2.8となる。type1とtype2の絞り穴は共通して使うことができる。
●MJソフトフォーカスレンズを使ってみる
 それではMJソフトフォーカスレンズを使ってみることにしよう。撮影は比較のために、オリジナルのエルマー90mmF4、MJソフトフォーカスtype1、MJソフトフォーカスtype2の3本を同じ場面で比較撮影してみた。type1はシングルコートのタイプ、type2はマルチコートのタイプだ。それぞれのレンズを、まず絞り開放で、さらに絞り込んでどのような描写を示すかである。この絞込みのために、MJソフトフォーカスにはオプションで、絞りF5.6とF11相当の外付け式ねじ込み絞り【写真2】が用意されている。つまり、絞り開放F2.8(F4)、F5.6、F11の描写をそれぞれ同じ条件で撮影し比較してみたわけだ。なおエルマー90mmF4はスクリューマウントであるから、M9にはそのまま装着することはできないので、Mバヨネットマウントアダプターを介して取り付けている。  以下、それぞれのレンズで絞りを変えた場合の描写を見てみよう。被写体は、昼光で白いテーブルの上に青い折り目の粗いクロスを置き、ライカIIIc、M3、M6を配置した。白いテーブルは一般的にソフトフォーカスレンズではフレアが発生しやすく、折り目の粗いクロスは解像度、深度を見るためで、ライカはシルバークロームボディをあえて用意したのは、光沢部がどのような描写を示すか見たかったからだ。

◇絞り開放
エルマー90mm:F4 1/1500秒、ISO160
〔エルマー90mm:F4〕
 比較のための絞りF4の描写である。撮影距離は約1mで、ピントはM3のファインダー採光窓枠左に合わせている。このエルマーはシリアルナンバーからすると1950年製であるが、写りのほどはその後のライツ90mmレンズと比較するとシャープさはもうひとつという印象をもっている。製造年代からしても単層コートされているが、色づきは浅くおとなしい感じだ。この感じはカラーだからであって、黒白だとY2などの色フィルターを使ってコントラストを高めて使う時代だったはずなので、特に問題はなかったのだろう。

MJ SOFT type1:F2.8 1/1000秒、ISO160
手前のM3と奥のM6についたレンズ銘板の文字に注目。
〔MJ SOFT type1:F2.8〕
 撮影距離、ピント位置はエルマーと同じである(以下すべて同様)。画面左側のテーブルの脇に大きくテーブルのカーブに合った形でフレアが発生している。この感じがソフトフォーカスレンズでは大事で、まずまずというところだろう。このカットを見て、エルマーF4の描写と比較してあれっと思われるかもしれない。焦点距離は同じ90mmで、絞り値はエルマーのF4よりF2.8と明るくても、背後のM6のレンズシリアルナンバーがしっかりと読めるほどの画質なのだ。一般的には、同じ焦点距離なら絞り値が暗いほど被写界深度が深く、絞り値が明るいほど浅くなるというのが通説だが、この場合には当てはまらないところがおもしろい。専門でないのでよくわからないが、色収差や球面収差が補正されていないレンズであるために一見すると深度が深く感じるのではないだろうか。これは前回のヘクトール73mmF1.9にも共通することだが、絞りF1.9と開放、撮影距離1mであれだけの深度を感じさせるのは残存収差であり、それがソフトフォーカス効果を生みだしているのだと思う。ただし、ヘクトールの場合には色収差はかなりとれているが、MJtype1:F2.8では色収差も球面収差も何もかもがすべてハデに発生しているという印象だ。ソフト感がありすぎるのではないだろうかという感じもあるが、鑑賞するプリントの大きさ、鑑賞距離によってもソフト感は異なるので、はっきりとはいいきれない。

MJ SOFT type2:F2.8 1/2000秒、ISO160
〔MJ SOFT type2:F2.8〕 type1と同じ焦点距離、F値のはずだが、なぜかソフト度がさらに大きく、性格のまったく異なることがよくわかる。ただ、収差補正していないから見かけ上の深度が深くなるとtype1で書いたが、このtype2ではあてはまらない。背後M6についた文字は読みとれない。いずれにしても写った結果から、レンズの物理的評価をすることは難しい。同じカメラを三脚で固定しての撮影だから、変わるはずがないと思うが、type1のほうがわずかながら画角は狭く、焦点距離がわずかに長いようだ。

◇絞りF5.6
エルマー90mm:F5.6  1/750秒、ISO160
〔エルマー90mm:F5.6〕 1段絞ったF5.6だが、深度も深くなり、シャープさも格段と増し、発色もクリアになった印象がある。絞り込みにより収差が減少した結果だろう。やっぱりエルマーだという感じだ。








MJ SOFT type1:F5.6 1/500秒、ISO160
手前のM3と奥のM6についたレンズ銘板の文字に注目。
〔MJ SOFT type1:F5.6〕 F5.6に絞った結果だが、テーブル周辺のフレアはかなり小さくなっている。このカットで目につくのは、相変わらず深度が深いことは変わらないが、手前M3の軍艦部手前のエッジが赤色をおび、奥M6の軍艦部手前のエッジが青緑色をおびていることだ。このあたりは、レンズ側から純粋に考えると色収差の影響だということになるが、高輝度部のエッジであることから、光学ローパスフィルターを使わずに解像度を高めたライカM9のCCD撮像素子の特性で偽色が発生したのか、それともブルーミング現象か、パープルフリンジであるかもしれない。いずれにしても色消しされた球面収差発生型のソフトフォーカスレンズにはあまり見られない現象だ。このあたりが色収差の発生を利用したソフトフォーカスレンズはカラーには向かないといわれている理由だろう。

MJ SOFT type2:F5.6 1/750秒、ISO160
〔MJ SOFT type2:F5.6〕 同じF5.6の絞りを用いた撮影だが、明らかにtype2のレンズは深度が浅い。テーブルの周りのフレアによる輪どりも小さくはなっているが、ちょうどいいぐあいに発生している。後ろに配置したM6の文字が読めないのは、エルマーF5.6でも読めないのだから当然だが、やはりボケ方が大きいのだ。さらにM3、M6の軍艦部エッジを見てみるとtype1のような色づきは全体的に青みがかった感じで明らかにtype1との違いを感じさせる。



◇絞りF11
エルマー90mm:F11 1/180秒、ISO160
〔エルマー90mm:F11〕 ここまで絞るとシャープネス、深度とも増して画面全体に安定した画像となる。ただし、ここまで絞っても背景に配置されたM6に装着された沈胴ズミクロン50mmF2のシリアルナンバー、名称などは読みとれるまではいかない。M3とIIIcの間にしかれたクロスの織り目を見るとよくわかるが、エルマーが最も解像度が高く、続いてtype1、type2となるが、type1とtype2では圧倒的にtype1のほうが解像度は高い。



MJ SOFT type1:F11 1/180秒、ISO160
手前のM3と奥のM6についたレンズ銘板の文字に注目。
〔MJ SOFT type1:F11〕 本来ソフトフォーカスレンズであるはずだが、F11まで絞り込むと拡大率にもよるが、エルマーと変わらないシャープな描写になってしまう。ただし、軍艦部を含めた各部のエッジには絞りF5.6と同じように手前が赤く、奥には青色の輪郭の発色が見られる。そして前後のレンズのシリアルナンバーなどの文字はさらにしっかりと読みとれるようになる。






MJ SOFT type2:F11 1/180秒、ISO160
〔MJ SOFT type2:F11〕 type1と同様に、絞り込みによる画質の向上は素晴らしく、カメラ軍艦部ほか、エッジの立った部分のハイライトの色づきは、手前が赤く、後ろが青味を帯びている傾向はあるが、その発生の仕方はtype1に比べるとかなり少ないといえるだろう。その部分を除けばエルマーと変わらない描写であるといっても問題ないぐらいの画質であることはtype1と同じ傾向だ。背後のM6に装着された沈胴ズミクロン50mmF2のシリアルナンバーは、フレアの発生はあるものの、拡大率をあげることによりどうにか読み取りは可能だ。


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