【図1】リアル・レゾリューション・システムの原理。(画像をクリックすると大きくして見られます)
ペンタックスの一眼レフに撮像素子微動方式の手ブレ補正機構SR(シェイクリダクション)が組み込まれたのは、2006年の「K100D」が最初でした。続いて同年にはSR技術を応用してホコリ取りのダストリダクション機能を搭載したK10D、2013年には光学ローパスフィルター効果を強弱2段階とOFFを選択できる「K-3」を発売してきました。いずれもSR機構の応用とされていますが、今回2015年5月に発売の「K-3 II」では、SR技術をさらに進化させて、撮像板を1画素ずつ動かし、4枚の画像を連続で撮影し、2400万画素×RGBの色情報から1枚の超高精細画像を生成するというのです。ペンタックスではこの技術を“リアル・レゾリューション・システム”と、名付けたのです。
その原理を【図1】に示しましたが、フィルターと撮像素子はオンチップなので、1つの座標に対してRGBGの情報を4回露光し、後から本来の番地データごとに色情報を合成します。この結果、撮影後の画像データは解像力と色再現性が向上し、静止物の撮影時に高精細な画像データが得られるのです。さらに理論的にはモアレや偽色も発生しなく、撮影時には電子シャッターを採用してカメラブレを抑えているというのです。
このあたりの動作原理は、何となく概念は理解できても、正確には僕の理解能力を超えてなかなか把握しにくいものがあります。そしてこのペンタックスK-3 II は、1ショットで4枚撮影して超高精細画像を得るということですが、オリンパスが2月下旬に発売した『オリンパスOM-D E-M5 MarkII』は、1ショットでセンサーを微動させながら8回撮影して、1600万画素の撮像素子から4000万画素相当の画像データを得る
「40Mハイレゾショット」と一見するとかなり類似していると思うのです。
この微動といっても、ペンタックスは1画素ピッチで4ショット、オリンパスは1画素のなかで8ショットと異なります。決定的な違いはペンタックスの超高精細画像は処理後の画素数は2400万画素と変わらずそのままであることで、オリンパスは、1600万画素が4000万画素へと増大することが大きな違いです。このあたりは開発思想の違いと考えられます。
●リアル・レゾリューション・システムの効果を見る
【写真1】 今回の使用機材、ペンタックスK-3 IIとHDペンタックスDA35mmF2.8マクロLimited、HDペンタックスDA15mmF4ED AL Limitedレンズ。(画像をクリックすると大きくして見られます)
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【写真2】三脚を使いライブビューモードでリモコン撮影。(画像をクリックすると大きくして見られます)
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撮影にあたっては、HDペンタックスDA35mmF2.8マクロLimited、HDペンタックスDA15mmF4ED AL Limitedの2本のレンズ【写真1】を用意しました。ペンタックスK-3 IIの撮像板はAPS-Cなので、35mmF2.8マクロはフルサイズ換算52.5mm相当の画角に、15mmF4は22.5mm相当の画角になります。この2本をどのように使い分けるか考えましたが、結局チャート的な撮影は35mmF2.8マクロで、ランダムな実写は15mmF4広角でとしました。
今回の「リアル・レゾリューション・システム」での撮影は、三脚使用、リモコン使用が必要条件として示されています【写真2】。もちろんそれに準ずる環境ならいいのでしょうが、いずれにしてもシビアな撮影法が要求されるのです。
まずは、いつものように英国大使館の正面玄関をねらってみました。ピントは、どちらも建物中央上部の紋章に合わせました。
【作例1:通常撮影】HDペンタックスDA 35mmF2.8マクロLimited、絞り優先AE、絞りF5.6・1/500秒、ISO100、AWB、ローパスセレクター:OFF、三脚使用。(画像をクリックすると、画素等倍にして見られます)
【作例2:リアル・レゾリューション撮影】HDペンタックスDA 35mmF2.8マクロLimited、絞り優先AE、絞りF5.6・1/500秒、ISO100、AWB、三脚使用。(画像をクリックすると、画素等倍にして見られます)
【作例1:通常撮影】HDペンタックスDA 35mmF2.8マクロLimited、絞り優先AE、絞りF5.6・1/500秒、ISO100、AWB、ローパスセレクター:OFF、三脚使用。
11コマ撮影したなかの最も良く見える1コマです。実際は各コマともほとんど同じです。2013年にペンタックスK-3を使って同じ場面で、同じ絞り値F5.6で撮影していますが、この時の画像よりよくなっているような気がします。もっともその時と季節が違い、同じ晴天でも晴明感が異なることなどもありますが、画像処理エンジンが進歩したのかも知れません。
【作例2:リアル・レゾリューション撮影】HDペンタックスDA 35mmF2.8マクロLimited、絞り優先AE、絞りF5.6・1/500秒、ISO100、AWB、三脚使用。
19コマ撮影したなかの1枚です。通常撮影では11コマ撮影して、その結果はほとんど同じでしたが、リアル・レゾリューション撮影ではまったく違うのです。いつもフォーカスポイントの紋章の再現性を見て、最良なカットを選んでいるのですが、一部のリアル・レゾリューション撮影では紋章や屋根の傾斜の部分が、モアレのようなジャギーが発生しているのです。どうやら、風や地面の振動などによりわずかでもカメラブレがあるとこのような現象が現れるようです。結局、紋章と屋根の傾斜部分にモアレの発生していないカットを選んだのですが、かなり繊細な撮影条件が要求されることがわかりました。ただし、紋章とその壁面を通常撮影と比較してみると明らかに画質が向上していることがわかります。これがリアル・レゾリューション・システムの成果だと判断できます。
そして画面左中央、避雷針の周辺の樹木を見てください。樹木の葉が網の目のようにモアレ状に見えるのがわかります。やはり、マルチショットであるために、露光中に葉がざわつくとこのような現象が発生するのでしょうが、リアル・レゾリューション・システムは、建築物等不動の被写体には使えますが、草や樹木を写しこむ風景写真には使えないことがわかります。一部にそれも表現としておもしろいという声が聞こえてきそうですが、これはまったく別のことです。