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市川泰憲(写真技術研究家、日本カメラ博物館)

  市川 泰憲(いちかわ やすのり)
1947年東京生まれ。中学・高校・大学と写真部に所属。1970年東海大学工学部光学工学科卒業。同年写真工業出版社入社、月刊「写真工業」編集長を経て、2009年より日本カメラ博物館に勤務しながら幅広い写真活動を続ける。日本写真学会会員

■ブログ「写真にこだわる」移りました
https://ilovephoto.hatenablog.com/

第五十四回「復刻版「ズミルックスM35mmF1.4」を使ってみました」

≪写真1≫復刻されたズミルックスM35mmF1.4をライカM11に装着(画像をクリックすると大きくして見られます)

ライカカメラ社は、2022年10月にかつてのフィルムカメラの「ライカM6」とMマウント交換レンズの「ズミルックスM35mmF1.4」を復刻し2022年の11月から発売すると発表しました。M6は1984年から2002年にわたり延べ約17万5,000台が製造されたというフィルムカメラです。一方ズミルックスM35mmF1.4は、1961年に登場した第1世代機と同じものです。ライカカメラ社はすでにMシステムのオールドレンズ復刻版として“クラシックシリーズ”名で「ズマロンM28mmF5.6」、「タンバールM90mmF2.2」、「ノクチルックスM50mmF1.2 ASPH.」を復刻しているので、今回の「ズミルックスM35mmF1.4」を加えると4本目となるのです≪写真1≫。

■レンズとフィルムカメラの復刻は時代の要請か
 昨今、ライカマウントレンズの復刻はちょっとしたブームであって、ご本家ライカカメラ社のみならず、1958年に発売された距離計連動ライカ用の第1世代8枚玉「ズミクロン35mmF2」のクーロンレンズを中国メーカーから「LIGHT LENS LAB V2LC 35mmF2」(俗称、周8枚)として発売され話題を呼びましたが、その後ホロゴン15mmF8の復刻なども伝えられていて話題には事欠きません。
 ところがライカカメラ社は交換レンズだけでなく、レンジファインダー機「ライカM6」を復刻しましたが、これはM6ボディや一部交換レンズの中古相場が値上がりしていることと、一部のユーザーにとっては、まだフィルムライカカメラが根強い人気であることに応えたのではと考えられます。
 さらに追いかけるように日本のリコーイメージングもPENTAX ブランドで、新たにフィルムカメラの開発検討を行う「フィルムカメラプロジェクト」を開始したことを12月20日に発表しました。これは同社が推進する一眼レフでなくコンパクトカメラらしいのですが、こちらも話題性は十分ですが、現実問題としてフィルムを使った撮影は、フィルム種類の減少、価格の異常な高騰、環境問題、さらにアナログプロセスを貫こうとするとシステムそのものが黒白写真システムを除けば分断されていて、デジタルプロセスの介在なくしては難しいなどの問題を抱えています。近年のフィルムカメラ復刻版としては、ニコンが2000年にミレニアム記念モデルとして「ニコンS3(1958年)」を、2005年には「ニコンSP(1957年)」を復刻発売して話題を呼びましたが、その直後にカメラはフィルムからデジタルへと大きな変換を遂げましたので、S3とSPの復刻版も今となってはカメラとしての話題性は希薄となりました。
 さて交換レンズの方はどうでしょう。2022年9月に開かれた銀座松屋の「世界の中古カメラ市」では、ライカのノクチルックスM50mmF1.2が726万円と値が付けられて販売され、先ほどの8枚玉第1世代ズミクロン35mmF2が中古を扱う新宿の大型店で100万円の値がついているというのです。さらに11月26日開催のライカカメラ社のオークションでは「試作のノクチルックス50mmF1.2が20万ユーロ(約2,900万円)スタートで、いくらで落札されるのだろうかとは、一部のライカマニアの間では話題になっていますが、そこまでくると使うためのレンズというよりも、単にコレクション、さらには投機のためにレンズとして存在するということになってきます。


≪写真2≫ライカM11に装着された復刻版ズミルックスM35mmF1.4と2種の専用フード。 左の小判型(12487)は第1世代ズミルックス35mmF1.4のフードに見られるレンズ鏡筒前面溝にくわえ込むタイプです。右は丸形フード(12486)で、ねじ込みタイプです。なぜ2つ付いてきたか不明で、フィルターの装着に関係があるようで、小判型だとフィルターが取り付けられなく、丸型だと取り付くのです。あくまでも推測ですが、第1世代には小判形が、第2世代には丸形が純正フードとして用意されていたことと無関係ではなさそうです(画像をクリックすると大きくして見られます)

■復刻版「ズミルックスM35mmF1.4」が私の手元にやってきた
 ところが、やはり好きな人にとっては、どうしても欲しい場合には少し思い切れば購入できるのが復刻版の良いところです。今回の復刻版「ズミルックスM35mmF1.4」は税込572,000円。高いか安いかはその人の財布にもよるわけですが、早速復刻版を購入した写真仲間のSTさんが、使ってみていくつかの問題を抱えて私の所へやってきました≪写真2≫。
 STさんによると、最新の「ライカM11」で撮影すると画面4隅がけられるというのです。ご本人としては、レンズ前面にライカカメラ社の純正フィルターを付けて、さらに付属してきた専用丸形フードを付けて(小判型は付かない)、画面4隅にケラレがでたというのです。それで、マウントアダプターを介してミラーレス機の「キヤノンEOS R3」に装着して撮影したところやはり同様の結果だったというのです。STさんにしてみれば、安い買い物じゃなかったのに4隅にケラレがでたのは意外だというのです。
 そこで、もしやまさかとも思いフィルムカメラで撮影したらどうだろうかと提案しました。用意したのはM型ライカのフィルムカメラの実質的最終機である「ライカM7」です。この結果はやはりM11と同じだったというのです。実はSTさんは私にレンズを持ち込む以前に、ライカのレンズ持ちさんでオリジナル・ズミルックス35mmF1.4を持っていそうな人に声をかけたそうですが、お目当ての方は手放してしまって今は所有していないというのが実情だったようです。つまり復刻版ですからオリジナルと比較して見るのが一番良いと考えたのでしょう。ところがそれがかなわないから、あれこれ試したようです。STさんのレベルで、オリジナルの第1世代も4隅がけられたらSTさんは納得したのでしょうか。


≪写真3≫ STさんが持ち込んできたケンコー薄型Proフィルター(46mmΦ)とE46ライカ純正フィルター。ライカフィルターのパッケージ、文字下列にはMade in Japanと書かれていますが、今まではそのような記述はありませんでした(画像をクリックすると大きくして見られます)

■復刻版レンズでケラレが発生するのだろうか
 決着がつかないままSTさんが最初に持ち込んできたのは、「ライカM11」と「復刻版ズミルックスM35mmF1.4」と付属してきた2種のフード、さらにライカカメラ社のフィルターとケンコーの薄型Proフィルターです≪写真3≫。これで、_燭眩着しないで撮影、⊂判形フードと丸形フードだけを取り付けて撮影、4欸織奸璽匹乏謄侫ルターを取り付けて撮影、ということを試してみました。そこで、無限遠風景を上記フィルターとフードを種々組み合わせて絞りF1.4開放とF5.6で撮影してみたところ、確かに丸形フィルターとライカフィルターと組み合わせて無限遠を被写体にして撮影するとケラレらしきものが表れるのです。


≪写真4≫第1世代レンズと第2世代レンズ写真に使ったフィルターとフードをフローチャート的に並べてみました(画像をクリックすると大きくして見られます)

■復刻版と第1世代機のフィルターあるなしを実写比較
 少し時間をおいてSTさんは友人に第1世代機を所有している人を見つけて持ち込んできたのです。しかもオリジナルフードとフィルター付きだというのです。STさんの根性というか執念なのでしょう。せっかく進めてきた私の実写テストもすべてやり直したほうが良いと考え、改めてテストしました。以下にはその組み合わせ写真をフローチャート的に並べてみました≪写真4≫。大まかに分けると、左は「復刻版ズミルックス」と使用したフィルターとフード。右は「第1世代ズミルックス」と使用したフィルターとフードです。
 復刻版ズミルックス:突起部分を除いたレンズ円周(47.4mmΦ)とマウント基準面から先端までの寸法(26mm)を示しました。ライカ純正フィルターとケンコー46mmΦフィルター。フードは小判形の実写はフィルターが付かないので省略。それぞれを外した状態、フィルターを付加、さらにフードを付加した状態で、それぞれを絞りF1.4とF5.6で実写。フードの赤い線は最大径を表し、H16mmとはねじ込んだ後にでた部分の高さ。同様にライカ(5mm)とケンコーフィルター(4.6mm)のねじ込んだ後に飛び出た高さは写した結果がすべてなので、写真には書き込みませんでした。
 第1世代ズミルックス:第1世代ズミルックスに付いていたのは、39mm→41mmΦのステップアップリングを介して、41mmΦのマルミ製フィルターでした。そこで私の所有する、時代的には少しさかのぼる1950年代のズマリット50mmF1.5に付けていたフィルターが41mmΦでしたので、そちらを直接付けて同様に試してみることにしました。この41mmΦのフィルターは、1971年にライカM3を中古で買ったときに付いていたズマリット50mmF1.5用ですが、当時もすでに41mmΦは市中にはなくケンコーに特注して購入したもので、ブランド名や寸法は枠に記されていません。
 第1世代ズミルックスを所有している友人のPさんはなぜステップアップリングを使っていたのかと考えましたがわかりません。そこでSTさんに聞いてもらうと、使用ボディはライカM8だというのです。M8は撮像板がCCDでAPS-H(×1.33)判なのでズミルックスの焦点距離35mmは焦点距離46mm相当の画角となるのです。このような使い方なら周辺減光の影響はまったく気にならないでしょう。では、直接付く41mmΦのフィルターになぜ39→41mmΦのステップアップリングを使ったのでしょうか。聞いてもらうと、なんとフィルターは純正以外を使うとレンズ面に傷がつくというようなことをどこかの本で読んだことがあるので、外れやすくてもステップアップリングを付けて下駄をはかせたというのです。やはり大切なレンズを守る気持ちは大切ですね。


≪写真4≫第1世代レンズと第2世代レンズ写真に使ったフィルターとフードをフローチャート的に並べてみました(画像をクリックすると大きくして見られます)

 ≪写真4≫を見てお分かりになるように、撮影に用いた各フードは最大直径に加えて、レンズ鏡胴部先端からフード最先端部までの寸法が丸形では16mm、小判形では22.2mmあるのです。つまり単純にはフードの口径が大きいからとか小さいからとは言えないのです。もちろんレンズ設計時にはそれらを含めて光線追跡するのでしょうが、ユーザーレベルでは単純に実写比較してみるしかないのです。
それでは、以下に各フィルターとフードの組み合わせの撮影結果を示します。

≪写真5≫復刻版:絞りF1.4、ライカフィルター、フードナシ(画像をクリックすると画素等倍にして見られます)

■復刻版ズミルックス
●フィルターを付けて、フードなし
≪写真5≫復刻版:絞りF1.4、ライカフィルター、フードナシ。ここでは周辺4隅の減光具合を見るためですが、開放絞りの独特なふわっとした感じは良くでています。絞り開放、ほぼ無限遠撮影で周辺光量は低下しています。


≪写真6≫復刻版:絞りF5.6、ライカフィルター、フードナシ(画像をクリックすると画素等倍にして見られます)

≪写真6≫復刻版:絞りF5.6、ライカフィルター、フードナシ。こちらは絞りF5.6、周辺光量はわずかに減光していますが、被写体と光線の状態にもよるでしょうが、ケラレがあるとは感じません。


≪写真7≫復刻版:絞りF1.4、ケンコーProフィルター、フードなし(画像をクリックすると画素等倍にして見られます)

≪写真7≫復刻版:絞りF1.4、ケンコーProフィルター、フードなし。こちらはフードなしの状態ですが、フィルターを付けていない状態と大きく変わりはありません。


≪写真8≫復刻版:絞りF5.6、ケンコーProフィルター、フードなし(画像をクリックすると画素等倍にして見られます)

≪写真8≫復刻版:絞りF5.6、ケンコーProフィルター、フードなし。ケンコーProフィルターがついた、絞りF5.6の無限遠撮影ですが周辺光量はたしかに減光していますが、フィルターなしと同様にケラレがあるとは感じられません。


≪写真9≫復刻版:絞りF1.4、丸型フード、ライカフィルター(画像をクリックすると画素等倍にして見られます)

●フードとフィルターを付けてみる
≪写真9≫復刻版:絞りF1.4、丸型フード、ライカフィルター。こちらはフードとライカフィルターを付けての状態ですが、四隅の減光はフィルターを付けていない状態よりわずかに多いように見えますが大きく変わりはありません。


≪写真10≫復刻版:絞りF5.6、丸型フード、ライカフィルター(画像をクリックすると画素等倍にして見られます)

≪写真10≫復刻版:絞りF5.6、丸型フード、ライカフィルター。丸形フードとライカフィルターを付けた状態です。周辺光量はたしかにこの組み合わせの方が、わずかに大きく減光してますが、フードなしと同様に物理的なケラレがあるとはいいきれません。


≪写真11≫復刻版:絞りF5.6、丸型フード、ライカフィルター(画像をクリックすると画素等倍にして見られます)

≪写真11≫復刻版:絞りF1.4、丸形フード、ケンコーProフィルター。ケンコーProフィルターに丸形フードを付けたことにより絞り開放でも周辺減光が目につきますが、フィルターの差により減光が変化したとは判断できないほどの違いです。


≪写真12≫復刻版:絞りF5.6、小判型フード、ケンコーProフィルター(画像をクリックすると画素等倍にして見られます)

≪写真12≫復刻版:絞りF5.6、小判型フード、ケンコーProフィルター。ケンコーProフィルターに丸形フィルターに付けると、フードを付けていまが、絞りF5.6では周辺減光がわずかに残りますが、やはり物理的なケラレとは認められません。


≪写真13≫第1世代:絞りF1.4、フード、フィルターなし(画像をクリックすると画素等倍にして見られます)

■第1世代ズミルックス
●何もなし
結局、第1世代ズミルックスがどのような描写特性を持っていたかが大切なので、ここではあえてフィルターもフードもつけない状態もテストしてみました。
≪写真13≫第1世代:絞りF1.4、フード、フィルターなし。 念のためにとフードもフィルターもない状態ですが、絞り開放ということで周辺減光は致し方ないことです。


≪写真14≫第1世代:絞りF1.4、フード、フィルターなし(画像をクリックすると画素等倍にして見られます)

≪写真14≫第1世代:絞りF5.6、フード、フィルターなし。F5.6に絞るとみごと周辺まで空の濃度は均等です。


≪写真15≫第1世代:絞りF1.4、フード、フィルターなし(画像をクリックすると画素等倍にして見られます)

●フィルターを付加
≪写真15≫第1世代:絞りF1.4、特注41mmΦフィルターのみ。当然のこととして4隅の光量落ちは増大していますが、画像シミの像が結像していますのでケラレとは特定できないです。


≪写真16≫ 第1世代:絞りF5.6、特注41Φフィルターのみ(画像をクリックすると画素等倍にして見られます)

≪写真16≫第1世代:絞りF5.6、特注41Φフィルターのみ。減光はF5.6に絞り込むとみごとに解消です。


≪写真17≫ 第1世代:絞りF5.6、特注41Φフィルターのみ(画像をクリックすると画素等倍にして見られます)

●フード、フィルターを付加
≪写真17≫第1世代:絞りF1.4、小判形フード、特注41Φフィルター。絞り開放だとやはり周辺の落ち込みが気になります。


≪写真18≫ 第1世代:絞りF5.6、小判形フード、特注41Φフィルター(画像をクリックすると画素等倍にして見られます)

≪写真18≫第1世代:絞りF5.6、小判形フード、特注41Φフィルター。 絞りF5.6に絞ると、おみごとと言えるくらい気になりません。これなら文句なしですね。

■ケラレとは何を意味するのだろうか?
 結局これらの撮影からわかることは、最周辺がケラレたように見えるのは、物理的なケラレの要素もありますが、光学系そのものからくる周辺減光(ビネッティング、ビグネッティングともいう)の作用とも考えられます。特に距離計連動時代の対称型近似の光学系では周辺光量が低下することは良く知られたことです。したがって何も付加しないデフォルトの状態でも一眼レフ用のレトロフォーカスタイプと比較するとかなり周辺減光が目につくのもやはりよく知られたことで、これにフィルターを加えるとフィルターそのものの前枠がせり出すようになり周辺の画像はケラレたようになり、さらにフードを装着すると、場合によっては周辺減光がさらに増大するというわけです。見方を変えると光学系内の絞りを変えるのでなく、フロント部分に絞りを付加したようになり、絞り開放での周辺光量の低下が顕著になり、絞り込むと改善されるのではないかと考えられます。
 ところで1961年に発売された第1世代ズミルックス35mmF1.4のフィルターサイズはE41(41mmΦ)だったのです。改めて復刻版のニュースリリースを見ると『今回登場する「ライカ ズミルックスM f1.4/35mm」は、1961年に登場したオリジナルと同じ光学的な計算と設計に基づきウェッツラーにあるライカの工場で製造されています。また、「スチールリム」の通称で知られるステンレス製のフロントリング、固定できるフォーカスリング、ブラックカラーの着脱式レンズフードも、オリジナルと同じデザインが採用されています。さらに、オリジナルにはないレンズフードを新たにもう1点付属します。このレンズフードはフィルター用のネジを備えており、E46フィルターを取り付けることが可能です。』と書かれています。つまり、1961年のオリジナルと同じ光学設計手法であってもまったく同じではないのです。
 結局、1961年の第1世代ズミルックスはフィルター径が41mmだったのが、復刻版は46mmになったのです。復刻版の直径7mm増はなにが原因だったのでしょうか、機械加工や絞り羽根組み込みの問題か、それとも61年前と現在の使える硝材の違いからくるものなのでしょうか、ライカカメラ社に聞いてみなくてはわかりません。唯一考えられることは、現在ライカの主流フィルターは46mmΦであることでそれに合わせたということも考えられます。さらにいうならば、小判形・丸形フードが最初から用意されていて、小判形にはフィルターを装着できないというのも腑に落ちません。
 以下に一部に関係あると思われる部分をライカカメラ社テクニカルデータシートから部分的に引用紹介します。


≪図1≫左から順に、復刻版ズミルックス35mmF1.4断面図、復刻版レンズ構成図、1961年当時の発表のズミルックス35mmF1.4のレンズ構成図(ライカカメラ社データシート、世界のライカレンズ1より、画像をクリックすると大きくして見られます)

≪図1≫は左から順に、復刻版ズミルックス35mmF1.4断面図、復刻版レンズ構成図、1961年当時の発表のズミルックス35mmF1.4のレンズ構成図(ライカカメラ社データシート、世界のライカレンズ1より)。 2種の構成図からわかることは、復刻版ではG3とG5に段差があるのに、第1世代にはありません。これは現代の製造技術からくるものでしょうが、曲率形状も含め第1世代と復刻版の5群7枚には大きな違いはないと考えられます。


≪図2≫復刻版ズミルックスM35mmF1.4のディストーションとビネッティング、ライカカメラ社データシートより(画像をクリックすると大きくして見られます)

最周辺光量の低下はテクニカルデータシート≪図2≫にあるようにビネッティングの問題も明らかですが、ケラレの発生は光学設計部門と金物設計部門との連携がうまくいかなかったのではないかとも考えられます。特に今回はフィルターを使うとケラレが発生するのは単純にそれぞれの連係がうまくいっていないからではないかと考えるわけです。またねじ込みとはめ込みのフードが2種用意されているのもオリジナルに忠実なためでしょうが、小判形のフードにフィルターが付けばよかっただけなのに、そこがもうひとつすっきりしません。なおその後のオリジナル「ズミルックスM35mmF1.4」第2世代機ではシリーズ札侫ルター(M48×P0.75)を取り付けるように改良されていました。つまり第1世代機ではすでにその辺りが問題になっていて、フィルターをシリーズ擦吠儿垢気擦紳2世代機ができたのでしょう。




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