≪写真38≫ライカM11と復刻版とチタンカラーのズミルックス35mmF1.4(画像をクリックすると大きくして見られます)
≪写真39≫復刻版ズミルックス35mmF1.4:絞りF1.4開放・1/4000秒、ISO-Auto64、小判型フード、フィルターなし(画像をクリックすると画素等倍にして見られます)
≪写真40≫復刻版ズミルックス35mmF1.4:絞りF5.6・1/250秒、ISO-Auto64、小判型フード、フィルターなし(画像をクリックすると画素等倍にして見られます)
≪写真41≫チタンカラーズミルックス35mmF1.4:絞りF1.4開放・1/3200秒、ISO-Auto64、丸型フード、フィルターなし(画像をクリックすると画素等倍にして見られます)
≪写真42≫チタンカラーズミルックス35mmF1.4:絞りF5.6・1/250秒、ISO-Auto64、丸型フード、フィルターなし(画像をクリックすると画素等倍にして見られます)
≪写真43≫サクラとスミレの花。チタンカラーズミルックス35mmF1.4:絞りF1.4開放・1/180秒、ISO-Auto320、丸型フード、フィルターなし(画像をクリックすると画素等倍にして見られます)
■またまた第2世代ズミルックス35mmF1.4がやってきた
オリジナル第1世代、第2世代と復刻のズミルックス35mmF1.4を比較してブログにアップしたところ、いつものわがスポンサー氏から連絡があり、何でもズミルックス35mmのチタン仕様があるから使ってみたらというのです。早速受け取ってみると1992年に発売されたライカM6のチタンバージョンとしてセット販売され、私の記憶ではチタンバージョンのM6TTLボディに加えチタンバージョンの50mmF1.4と35mmF1.4のズミルックスがセットになっていたのです。手元にきたチタンバージョンズミルックス35mmF1.4は、レンズ自体は近重さんのより少し新しい第2世代機で、金属部分には真ちゅうで、表面はチタン色に塗装されていたのです。当時はちょっとしたチタンカラーブームで、コンタックスT2などを始めとして、この色を採用したコンパクトカメラもいくつかありました。その色具合の違いをライカM11に付けた状態で復刻版と比較したのでご覧ください≪写真38≫。
せっかくですから屋外で復刻版とチタンカラーの比較をしてみました。比較撮影にあたっては、フードは付けるけど、フィルターは付けないという条件で統一しました。なお、拝借したチタン仕様ズミルックス35mmにはフードはありませんでしたが、たまたま私が持っているズミクロン35mmF2(第2世代、角つき6枚構成)用に求めたものがズミルックス35mmF1.4用の純正品(フィルターはシリーズ擦鯀着可能)でしたのでそれを使用しました。
≪写真39≫は復刻版の絞り開放F1.4、≪写真40≫は絞りF5.6です。さらにチタンカラーバージョンのF1.4を≪写真41≫に、F5.6を≪写真42≫に示しました。いずれも使用ボディはライカM11です。≪写真39~42≫を見てわかることは、大きく他のズミルックスと変わることはないということです。ただ、このチタンバージョンはほとんど未使用だったらしく、きわめて状態が良いことから微細に見ると違いがあるかもしれません。作例はすでにたくさん載せているので千鳥ヶ淵のサクラを1点だけチタンバージョンのレンズで撮影≪写真43≫したのを掲載しました。サクラの古木の脇から出た新芽に咲いた花びらと寄生したように生える紫色のスミレの花びらを見比べると、サクラはほわっとした描写ですが、紫のスミレの花はシャープに写っています。このあたりがズミルックス35mmF1.4の絞り開放時の描写のおもしろいところでしょうか。全体にブルーが強く感じるのは、曇天の夕方日陰であり、さらにライカの色づくりの関係でしょう。
■ひとことに言って周辺光量の低下とは
今回は2022年の12月に撮影を開始し、終えたのが2月下旬ということで、延べ3か月もかけてしまいました。さらにこの時点からチタンバージョンが加わり最終的には4月も終える5か月後にやっとケリがついたということになります。結果として、膨大なサンプリル数となり煩雑で見にくい感じがあったとは思いますが、その点はご容赦ください。
しかし今回の復刻版レンズの登場は、復刻版とは何かということを考えるのには、たいへん良い勉強となりました。そこから学んだことを箇条書にすると、
.吋薀譴砲亙理的なケラレと光学的なケラレがある。(物理的なケラレは、フードの装着、フィルター、さらにはレンズ鏡胴内の機械的なものもある)
光学的な周辺減光は(ビネッティングやビグネッティングと呼ばれる)レンズ設計のタイプによっても変わる。
I刻版レンズは距離計連動式ライカM3やM2の時代に作られたレンズの復刻であり、現在の最新光学系によるものと比較することは難しい。
ぅ侫ルムカメラの時代にはほどよい周辺光量の低下があって、ポートレイトや風景でも主題を表現として引き立たせたりすることもあり、周辺減光はむしろ好ましいこととしてとらえている人もいる。
イつて営業写真館ではビネッティングというノコギリ刃状の小道具を使って周辺光量落ちをあえて作り出していた。
β臠愁メラでは、絞り込みによってイメージサークルが広がるのがあり、そのことを知って写真師は絞りをコントロールしていた。
Д侫ルムの時代とデジタルの時代では、周辺光量の落ち込みは異なり、デジタルでは撮像素子の進歩により大きく周辺光量の低下は変わるし、機種によっては電気的に画像処理でビネッティングを補正するのがある。復刻版には6bitコードがあり、そのあたりまで補正しているか、です。
┘侫ルム時代では若干の周辺光量の低下は、機種にもよるが引伸機の光学系の周辺光量の低下などもあり、プリント時にはフィルムの濃度と差し引き補正されることもあった。
フィルムは、プリント時にネガキャリアによっては周辺がカットされることもあるし、さらにリバーサルフィルムでは、マウント枠によってけられることもあったのです。
そもそも1961年、ざっと60年以上前のフィルムカメラの時代のレンズ設計技術を復活させたわけですから、デジタル時代のカメラと整合を図ろうとするとどこかにむりがでてきてもおかしくないわけです。
今回の試用で思ったことはたくさんありました。周辺光量の低下とは別に、最初に思ったことは、60年前の写真に要求されるレンズ解像度は最新のデジタル時代のものとは、まったく異なるということです。たとえばフィルム時代、それも60年前といえば大きく伸ばしての画質評価はせいぜい4切ぐらい。デジタル時代は高画素機に加え、一般家庭でもA3ノビからA2ぐらいまでを簡単に伸ばせる範囲であり、まったく物差しが違うのです。これは、35mmライカ判という範囲での話ですが、フィルム時代にはもっと大面積で低感度のフィルムを使い、超微粒子現像を行えばそれなりのものを得られますが、小面積で薄暗くても手持ちで撮影できるのはデジタルならではのものです。
復刻版所有者であるSTさんに伝えたのは『ライカのレンズには愛情をもって接して欲しい』ということでした。それでなければ、いまどき高価なレンジファインダー機を使うことを含めて、60年以上前の復刻版レンズを買った意味はないわけで、長所と短所(特徴)をいかに上手く使い分けるかは撮影者の技量であるわけです。特に絞り開放で無限遠近いところでのふわっとしたボケの描写は、正にライカカメラ社のいう「True King of Bokeh(ボケの王様)」を感じさせるものであり、光学的な数値の高さを示すものが必ずしも写真的に良い描写を示すとはいえないわけで、最近の若い人たちが描写特性としてクラシックレンズを使うのを好むというのも、ある面納得いくことです。
このようなことを書き連ねていたら、ミラーレスで同じLマウントグループのシグマがfpを発売した時の「シグマDG DN 45mmF2.8」は、絞り開放で最短の撮影距離近くでは柔らかく、70~90cmを超えたあたりからシャープになるというコンセプトだったことを思い出しました。ズミルックス35mmF1.4は、無限遠が絞り開放で独特のほわっとした描写を持つのに対し、シグマはその逆なわけで、どちらも少し絞り込めばシャープな描写になるということでは同じ思想を持っていると考えられます(昔のレンズは皆そうだといわれると困りますが)。古典レンズの描写が、現代の最新レンズにも通じるというのはおもしろいことです。 (^_-)-☆